「自分の本棚」〜自分が読みたい本は自分で作ろう

 春のトーク&サイン会ツアー、2日目の4月14日は大阪の西九条へ移動して、ミニコミ、リトルプレス、CD、衣類など、おもにインディーズ出版物や雑貨を扱うセレクトショップ・シカクでトークをするよ。

 こちらは自費出版物を多く扱っているお店ということなので、やはりそれにちなんだ話をしようと思う。ぼくがどうやって出版の世界に入ったのか、ミニコミに参加していた時代のバカエピソード、そして特殊古書店マニタ書房をどうやって作ったのか、そんな話をこの機会に披露してみたい。

 トークのお相手は、ご自身でもドグマ出版というやはりインディーズ活動をしている香山哲さんと、シカクのたけしげみゆきさん。

 ぼくがミニコミを作っていたときに比べたら、いまはパソコンもインターネットもあるので、自分のメディアを持つためのハードルは格段に低くなっている。それでもまだちょっとためらっているという人の背中を、このトークを通じて、後押しすることができたらいいなと思っている。

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 日時、会場、料金など、詳しくはこちらのページ(シカク/シカク出版総合ページ|スケジュール)をご覧いただきたい。このイベントはお昼なのでご注意を! お近くの方、ぜひぜひ、遊びにきてね〜。

五っ葉文庫とマニタ書房の「痕跡本の歩き方」

 さて、来週のトーク&サイン会ツアーの演目を、今日からひとつずつ紹介していこう。まずは一週間後、4月13日に愛知県の犬山にあるキワマリ荘で開催する「痕跡本の歩き方」から。

「痕跡本」というのは、犬山の古書店・五っ葉文庫の店主である古沢和宏さんが発見した概念で、前の持ち主が残した落書きや傷、折れ、染み、破れ、穴あき、シール、まあ何でもいいのだが、ようするに何らかの痕跡がある古本のことだ。

 そうした本のことを痕跡本と呼んでいるわけだが、もっと言えば、なぜそんな痕跡が残されたのか、その理由を勝手に妄想する行為を含めて「痕跡本」と言うのだと思ってもらってもよい。

 古沢さんのそうした発見は『痕跡本のすすめ』や『痕跡本の世界』という本にまとめられている。ぼくもそれを読んでおおいに影響を受け、自分でも痕跡本を集めるようになった。今回のトークイベントでは、ぼくが見つけた痕跡本を持っていって、古沢さんに見てもらいながら、あれこれトークしようかと思う。

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日時、会場、料金など、詳しくはこちらのページ(home | キワマリ荘)をご覧いただきたい。お近くの方、ぜひぜひ、遊びにきてね〜。

フリー禁煙セラピーはじめました

 ぼくは16歳から(フハハ!)ずーっとタバコを吸い続けてきた。

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 40歳のとき、子供ができたのをきっかけにしてタバコをやめようと思ったのだけど、多くの禁煙失敗者の例に漏れず、なかなか禁煙できなかった。固い意思でやめると決意し、タバコの箱を握り潰したのに、しばらくするとタバコを買いに行ってしまう。三日坊主どころか、三時間坊主の有様だ。

 そんなとき、友達から紹介されたのが『禁煙セラピー』という本だった。まだ読む前、その友達の話を聞いている段階で、すでにヤバイ予感がした。ぐんぐんタバコをやめたくなってきた。この本はマジで効くな、と直感した。

 すぐに書店に駆け込んで購入した。そのとき手持ちのタバコが切れていたが、どうせこれから禁煙するんだし、いいタイミングだ。もうタバコを買う必要はないと、そう考えて読み始めたら……、最初の方にこんなことが書いてあった。

「本書を読み終わるまでタバコをやめないでください」

 ハッとした。これはタバコという洗脳から脱するための本だから、自己判断で勝手なやめ方をすると、効くものも効かなくなるだろう。著者の指示には従った方がいい。素直にそう思えたので、もうタバコを吸う気はなくなっていたにもかかわらず、あえてタバコを買いに行った。そして、くわえタバコで読み進めていった。

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 たった200ページ程度の本なので、読み終えるまでにそう時間はかからない。何本タバコを吸っただろうか。読み終えた本を閉じると同時に、最後に吸っていたタバコをもみ消して、それで終わりだった。その瞬間、嘘のようにタバコがやめられた。まるで魔法のようだ。

 本を一冊読むだけで、なんの苦労もなく禁煙に成功してから、すでに16年が経過した。その間、一度もタバコを吸いたいと思ったことがない。

 タバコをやめたいまはとても体調がよく、余計なストレスもない。ただ、ひとつ問題があるとすれば、周囲のタバコの煙を迷惑に感じるようになったことだろう。自分勝手な話だと思われるだろうけど、こればかりは仕方ない。

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 できれば、全人類にタバコをやめてほしい。でも、それを強制するわけにもいかない。元喫煙者として、吸いたい人の自由は守られるべきだとも思う。けれど、やめたいのにやめられないでいる人がいるなら、その手助けくらいはしたい。

 そこでぼくは、『禁煙セラピー』を無料で配布する、というアイデアを思いついた。タバコをやめたい人が自力で『禁煙セラピー』に出会えればいいのだが、そうでないことの方が多いだろう。ならば、出会えるチャンスを少しでも増やそう。手に取るハードルを少しでも下げてやろう。

 というわけで、マニタ書房では今日から店頭で『禁煙セラピー』を無料配布する。いちおう「お一人様、一冊限り」という制限はあるが、タバコをやめたい人なら、とくにマニタ書房で買い物をしなくても、持って行ってくれてかまわない。

 あなたがうまく禁煙に成功したら、この本は好きに処分したらいい。捨ててもいいし、友人にあげてもいい。あるいは、またマニタ書房に持ってきてくれてもいいね。そうすれば、また、その本は次の誰かの禁煙に役立つかもしれない。

ガタガタいってると集めるぞ! 春のトーク&サイン会ツアー

 3月6日に『無限の本棚〈増殖版〉』(ちくま文庫)が発売されました。おかげさまで出足も好調のようです。とてもありがたいことです。

 が、それで安心してはいけない。本というのは、出版したらそれで終わりではなく、ちゃんと売っていかなければいけない。一部の売れっ子作家なら、黙っていても版元さんが大量の広告を打ち、書店に山積みにされ、飛ぶように売れて、あっという間に重版がかかる。けれど、大半の書き手はそんなに調子よくコトは運ばないわけです。

 時代劇研究家の春日太一さんが、先日ツイッターでこんなことをつぶいていました。

 まったくその通りだと思います。春日さんほどの書き手でさえそんなふうに思うのなら、ぼくはそれ以上に売る努力をしていかなければいけない。

 というわけで、『無限の本棚〈増殖版〉』の販売促進のため、4月の中旬に名古屋〜大阪〜神戸〜東京を巡回するトークイベント&サイン会ツアーをやります。

 

4月13日(金)愛知・犬山キワマリ荘

五っ葉文庫とマニタ書房の「痕跡本の歩き方」

「痕跡本」という概念を発見した五っ葉文庫店主の古沢和宏さんと、お互いが集めた痕跡本を持ち寄って、その魅力についてトークします。料金は500円(予定)、19時スタート。飲食の設備はないので、飲み物などご自由にお持ち込みください(ゴミは各自持ち帰ってネ)。

f:id:pontenna:20180323175456j:plain 萬珍軒の玉子とじラーメン、たべたい……。


4月14日(土)大阪・西九条シカク

『自分の本棚』自分が読みたい本は自分で作ろう

『よい子の歌謡曲』に参加したことから出版の世界に足を踏み入れ、以来、35年に渡って雑誌や本を作り続けてきたとみさわが、シカクのたけしげみゆきさんと「自分のメディアの作り方」を語ります。料金は前売1000円、当日1300円。14時半スタート。

f:id:pontenna:20180323175634j:plain 柳橋一八の志の田うどん、たべたい……。


4月14日(土)大阪・難波なんば紅鶴

おおかみ書房vsマニタ書房 東西エロ本大戦争!!

 珍書コレクターでもあるとみさわが、怪しげなエロ古書を持って大阪なんば紅鶴に襲来。迎え撃つは、数多くのエロ劇画や謎漫画を発掘し続ける劇画狼(おおかみ書房)。エロ珍古書とエロ劇画が火花を散らす、「東西エロ本大戦争」がついに勃発!! 料金は1,800円と、1ドリンクのご注文をお願いします。 19時半スタート。

f:id:pontenna:20180323175647j:plain 千とせ本店の肉吸いとうふ入り、たべたい……。


4月15日(日)神戸・東出町自治会館

あれコード、それコード、だれコード

 神戸では「あれコード、それコード、だれコード」と題して、ロック漫筆家の安田謙一さんとお座敷でレコトークをします。ちょっと“あれ”なことが歌われているレコード、ふつう“それ”は買わないよねってレコード、お前はいったい“だれ”なんだレコードなどなど、変なレコードをいっぱいお聴かせしましょう。料金は前売1,500円、当日2,000円。1ドリンクのご注文をお願いします。19時スタート。

f:id:pontenna:20180323175715j:plain 神戸第一旭のラーメン、たべたい……。


4月17日(火)東京Bar Isshee

CRAZY GROOVE DONUTS vol.28 せんべろ古本トリオ SPECIAL

 こちらは、毎月第3火曜にいつもやってるDJイベントの場を借りて、トーク&DJイベントをやります。ゲストはせんべろ古本トリオとしていつも一緒に遊んでいる安田理央さん、柳下毅一郎さんのお二人。チャージ500円と1ドリンクのご注文をお願いします。

f:id:pontenna:20180323180054j:plain 一寸亭のもやしそば、たべたい……。

 

 以上、愛知〜大阪〜神戸〜東京ドサ回りツアーのお知らせでした。別に麺類を食べにいくのが目的じゃないよ。

 それぞれの会場でも『無限の本棚〈増殖版〉』を販売するので、ご希望があればサインします。他店で買った本でも、持ってきていただければサインしますので、お気軽にどうぞ〜。

本日はCRAZY GROOVE DONUTS Vol.27

不況、人手不足、高齢化、賃料の高騰……。いつまでもあると思っていた店が、様々な理由によって、ある日、突然、営業を終了する。

そうした情報がSNSに流れると、多くの人がその店との思い出を語り、なくなる前にもういちど食べておこうと、店に殺到する。

ついぞ見なくなっていた行列がふたたび出来ているのを見て、店主は「ああ、いつもこんなだったら閉店しなくて済んだのに……」と嘆く。

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イベントも同じだ。いつか行こうと思っていたイベントも、永遠にやっているわけではない。期限が決まっていないものだって、集客がわるければ終わってしまうし、誰にも見てもらえなければ、開催する側の意欲も持続することが難しくなる。

ぼくは仕事柄、おもしろそうだ思ったイベントには、できるだけ足を運ぶようにしているし、友人・知人のイベントも可能な限り顔を出すようにしている。時間的にも金銭的にもすべてを網羅することはできないのだけど、余裕があるときはなるべく顔を出すようにしている。

そして、そういう行為は、やがて自分にも返ってくる──。

と、思いたいところだけど〜、なかなかそう簡単にはいかないものなのね〜。何を言いたかというと、千駄木Bar Isshee(バー・イッシー)で毎月第3火曜にやってる「CRAZY GROOVE DONUTS」というDJイベントが、なにしろ毎回集客に苦しんでるわけですよ。とにかくお客さんが少ない。

一人だけ、毎回必ず顔を見せてくれる人がいて(とてもありがたいことだと感謝しています)、彼のおかげで2016年1月のスタート以来、集客ゼロという悲しい事態になったことはないが、とにかく毎回綱渡りなのである。

いまは、あちこちのクラブやバーでDJイベントをやっている。なかにはコンビニやラーメン屋にDJ機材を設置して盛り上がっているイベントもある。その広がり方は素晴らしいことだと思うが、それだけライバルが多いということでもある。みんなDJうまいしねえ、シロウトのぼくがそれに対抗するのは大変ヨ。

で、じゃあ、ぼくのCRAZY GROOVE DONUTSの売りは何なのかと考えたときに、いつも第2部でやっている「とみさわが最近買ったレコードをみんなで聴く会」なのではないか? と思ったのだ。

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そもそも、昔から変なレコードばかり好んで買っていたわけだが、最近はTBSラジオ伊集院光とらじおと』の「アレコード」コーナーのために珍レコ漁りに拍車がかかっていて、毎月毎月けっこうな量のレコードを買っている。

これを、クラブDJのスタイルではなく、買った経緯や制作の背景などをトークしながらターンテーブルに乗せるという、本来の意味でのラジオDJスタイルでかけるのが第2部というわけだ。

さて、どうだろう。いままでCRAZY GROOVE DONUTSに興味がなかった人も、これを読んでちょっとは聴いてみたくなったのではないか。

そして、あら、なんと! 今日はそのCRAZY GROOVE DONUTSがある日なんですねえ。千代田線千駄木駅から徒歩30秒。Bar Issheeにて夜8時から。チャージ500円+1ドリンクのご注文を必須で。おつまみは持ち込み自由。

こういうイベントはお客さんが多いほど楽しくなるし、盛り上がるものだと思うので、一人でも多く来てくださることを願います。

予告の本棚 3/3

『無限の本棚〈増殖版〉』の増殖原稿、最後の紹介は巻末に収録した伊集院光さんとの対談です。TBSラジオ伊集院光とらじおと」には、わたしも水曜日の人気コーナー「アレコード」にたびたび出演させていただいています。

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■増殖の3

ラジオのリスナーならご存知の通り、伊集院さんは変なレコード(アレコード、おバ歌謡)はもちろんのこと、町歩きで見つけたいろんな珍物件を写真に撮ったり、変なカルタを集めたりするなど、実はコレクターとしても非常にユニークな視点を持っている方なんですね。

この機会に、そのへんの話をぜひ聞いてみたいということで、多忙なスケジュールの合間をぬって時間を割いていただきました。いちおう「対談」という形をとってはいますが、出てくるエピソードがいちいちおもしろくて、しかも磨き上げられた話術にぼくなんかが太刀打ちできるはずもなく、実際には伊集院さんへのインタビューみたいなものですね。

コレクションというテーマで芸能人が話すと、どうしても物量やその価値に話が向かってしまいがちですが、伊集院さんの場合はまったく違うベクトルに向かっているのが素晴らしかったです。紙幅の都合で大幅にカットせざるを得ませんでしたが、それでもおもしろさは保証します。

それから、今回は文庫用にあとがきも書き直しました。よく、書籍が文庫化されたときに元本の「あとがき」を再録したあとに「文庫版あとがき」が続くものがあります。あれ、なんかクドい感じがしてぼくはあんまり好きじゃないんですよ。それで、今回は元本のあとがきは掲載せずに、あらためて文庫版のためのあとがきを書き起しました。

伊集院さんとの対談は、あとがきを入稿したあとに行われたので、氏への謝辞をあとがきで延べることができませんでした。この場を借りてお礼申し上げます。ありがとうございました。

というわけで『無限の本棚 〜手放す時代の蒐集論〜〈増殖版〉』は、ちくま文庫に生まれ変わって本日発売です。トークイベント、サイン会、なんでもやりますので、版元(筑摩書房)でもわたしに直接でもかまいませんので、遠慮なく声をかけてやってください。どうぞ、よろしくお願いします。

予告の本棚 2/3

2月28日のツイッターでこんなことをつぶやいた。

この最後のフレーズ「欲しいなあ、無限の印税」というのはダブルミーニングになっていて、前回も書いた通り、元本の『無限の本棚』においては、いまに至るまでまったく報酬をいただけていません。こんどの文庫版が売れることで、初めてぼくはこの本に関する報酬を受け取れるのです。

だから皆さんも、「とみさわの野郎、同じネタで何度も商売しやがって」などとは思わず、どうか文庫版も買っていただきたい。

皆さんにぼくからできることは、新しいネタを提供することだけ。今日も新たな書き下し原稿について紹介します。

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■増殖の2

今回の文庫化にあたって、コレクター3人のインタビューを掲載しています。インタビューをするにあたり、当初は、ぼくがおもしろいと思うコレクションをしている人に話を聞きにいけばいいだろう、くらいに考えていたんですが、途中で考えをあらためました。

ぼくは本文の中でたびたび「自分よりすごいコレクターと出会ったらそのコレクションをやめてしまう」と書いています。だったら、その「ぼくにコレクションをやめさせた人物」に話を聞きにいったほうが断然おもしろいじゃん!

それで、一人目は「ぼくに顔出し看板のコレクションをやめさせた男」である、いぢちひろゆきさん。二人目は「ぼくにドリフグッズのコレクションをやめさせた男」の神戸顕一さん、三人目は「ぼくに野球カードのコレクションをやめさせた男」のしゅりんぷ池田さん(正確には彼のせいで野球カードを集めるのをやめたわけではないのですが)。というお三方に話を聞いてきました。

テーマはなんであれ、やっぱりコレクターに話を聞くのはおもしろいです。集め方、並べ方、新たに集めているもの、ライバルの存在、いま集めているもの……。三者三様におもしろい話が聞けました。お三方のおかげで、今回の文庫版はこれまで以上に読み応えのあるものになったはずです。

またまた明日に続く!