エアコレクターとは?

近年、正確には去年ぐらいから、わたくしが提唱している収集のスタイルをご紹介しよう。それは「エアコレクター」というもので、わかりやすく言うと「何も集めないコレクター」である。ぜんぜんわかりやすくなってないね。

普通のコレクターが、レコードとか本とかカメラとか切手とか茶碗とかマッチ箱とか切った爪とか、ようするに“物質”を集めるのに対して、エアコレクターが集めるのは“概念”や“情報”といった、物質としては存在しないものだ。

按図索駿」を読んでいただいてる方はわかると思うけど、おれが度々採り上げる「アレとコレが似てる!」っていうようなのも、その“似てる”という概念を集めているわけ。まあ、似てるおもしろさをみんなに見せるために、実際にはCDや映画のチラシを集めたりはしてるんだけど、最終的には参照できる画像データさえあれば現物はなくてもいいんだな。

それから「データベース作り」。これに狂うのもエアコレクターの特徴。たとえばおれがいま取り組んでいるのが、1980〜1983年にかけてテレビ神奈川で放映された「ファイティング80's」の、全出演バンド年表を作ることだったりする。ここで集めているのは物でもなんでもなくて、単なる情報だ。

「年表作りというのは調査活動であって、コレクションじゃないでしょ」と思われるかもしれないが、仕事でやってるんじゃないんだよ? あくまでも趣味でやってるわけ。年表の歯抜けになってるところを、足を使って調査して(わざわざ国会図書館まで行って当時の新聞の番組欄を調べたりしてるんだ)、ようやく発見して穴を埋めた瞬間に達成感を得る。これはコレクションを楽しむ気持ちと同じだよ。

というわけで、おれがやってるコレクションというのは、突き詰めていくと全部そのエアコレクターという考え方に集約されていくんだな。レコードも、本も、ビデオも、実は現物を持ってるかどうかをそんなには重要視していない(初回限定盤とかにこだわらないのにはそういう理由もあったりする)。ただ、本は中身に味わいがあるときはやっぱり現物がないと人に紹介できないし、ビデオやレコードも人に見せたり聴かせたりするためには現物が必要。だから仕方なく(笑)買ってるわけだけど、自分自身にとっては、あくまでも「こんなおもしろいものがある!」という情報の部分にだけ意味があるんだ。

そしてトレカでさえも、本質的にはカードそのものってどうでもいいわけ。集めているテーマの中に抜け番があって、それを埋める気持ちよさを味わうのが、トレカ趣味の本質だからね。

子供の頃から様々なものを集めてきて、いまもやっぱりあれこれ集めているおれだけど、最終的には“物”なんか失ってもかまわなくて、本当に必要なのはチェックリストやデータベースを作るために活用しているエクセルだけなんだ。「チェックリストを作らない奴はコレクターじゃない!」が持論です。

……と、このような意見をコレクター仲間に話しては、いつも猛反発を食らっているとみさわであった。