とにかく、おれはこの水木豪&ウルフというバンドが好きでね。覆面歌手のレコードを集めるようになったキッカケも、このバンドに惚れ込んだからなんだ。あ、ここに載せたジャケ写では小さくて見えないかもしれないね。男5名+女性コーラス2名のバンド編成で、全員がアイマスク状の覆面を装着してるんだよ。
このようにビジュアルはかなり異様だけど、音は案外ちゃんとしていて、いまでもたまに聴いたりする。とはいっても、彼らはとっくに解散しているから、残念ながら新曲を聴くことは出来ない。残した音源はシングル盤2枚とカセットテープ1本だけだ。
その数少ない音源のうち、ソーラスマーキュリーレコードから82年にリリースされたのが、この『モーニングラブ』という曲で、モテない人生を過ごしていた青年が、ある月曜の朝、電車の中で見かけた女の子にひと目惚れして俄然やる気を出し、猛烈にアタックする様子を歌謡ロックのリズムに乗せて……ってな話をはじめると長くなるので、これ以上はしない。
さて、この『モーニングラブ』が当時いったい何枚売れたのかわからないけど、あまりにも好き過ぎるので、見つけるたびに(同じものなのに)買っている。滅多に見かけないけど、それでもすでに4枚ぐらい手元にある。
で、これはたしか2枚目を見つけたときの話。
渋谷のイエローポップでいつものようにエサ箱を漁っていたら、また『モーニングラブ』が出てきて、このときはまだ「何枚でも買うぜー!」という気持ちにはなってなかったから、「ああ、これねえ」ぐらいの感じだったわけ。でも、なんか手に持ったときの感触がちょっとゴワついていた。
なんだろう? と思って中を見てみると、こんな写真が出てきました。
どこのアース・ウインド&ファイヤーだよ!
と、よく見てみれば、男の人はどうやら水木豪さんのようだ。……ということは、これ、ウルフのアーティスト写真? と思ったらそれも違う。だって前列にいるの子供だもんな!
つまり、これはウルフとしての自分に酔いしれる水木さんが、バンド活動だけにとどまらず、奥さんや子供たちさえも巻き込んで撮影した“家族の肖像”なのだ。
ギターを燃やしたり、ユンボでライブハウス破壊したり、オナニーしたり、ウンコしたり、薬物やったり、自殺したり、世の中にはいろいろなミュージシャンがいるけれど、こんなにも自身の活動のカッコよさを信じて疑わないアーティストがいたことを、どうか皆さん覚えておいてください。