マンガを入れた意味はあるのか?

つい先頃、講談社ブルーバックスの新刊『マンガ 物理に強くなる』を読んだ(これは新刊で買ったよ!)。関口先生の原作がわかりやすいこともあるんだろうけど、それ以上に鈴木みそ先生のマンガによる筋運びが絶妙なので、物理の苦手なおれでもすいすい読めてしまう、実にいい本だった。

マンガ 物理に強くなる―力学は野球よりやさしい (ブルーバックス)

マンガ 物理に強くなる―力学は野球よりやさしい (ブルーバックス)

このように、難しい学問でもマンガを応用すればぐっと理解しやすくなるので、昔から「学習マンガ」というジャンルは需要が多く、けっこうな市場を形成している。……と『サルまん』にも書いてある。
さて、これを見ていただこう。

『マンガ THE びぶん・せきぶん/樋口禎一 他』(森北出版)
タイトルからもわかる通り、ここを境に数学への好きと嫌いが別れる「微分積分」を、マンガで易しく解説した本である。もう一回言おう。マンガで易しく解説した本である……のだが、その肝心のマンガというのが、こんな絵なのだ。

なんだろうこれは。マンガを描くのが大好きだけど、だからといって別に上手いわけでもない中学生女子が描いた絵って、だいたいこんな感じだよね。描いたの誰? と思ってよく見ると、前書きでこっそり著者のひとり(つまり高校の数学の先生)が自分で描いたのだと告白している。これはなかなか勇気のある行動だと言えよう。おれはこういうの大好きだ。
ところで、この絵の女の人は「お母さん」で、本書の前半では彼女が息子たちに数学を教える、という設定になっているようだ。そのため、何かというとお母さんの絵が出てくるのだが、これがいつもおんなじ顔の角度なんだな。だったらコピーして使い回せばいいものを、なぜか毎カットいちいち描いてるんだよ。

同じように見えるけど、よく見ると微妙に違うのだ。なんだろうこの無駄な労力は。これが教育者の誠実さだろうか。これが聖職の碑というものだろうか。
で、ともかく「この絵はいいわあ〜」とウヒウヒ喜びながら読んでいたのだが、後半の第4章になったところで絵が変わった。別の先生が描き始めたのだ。今度はこんな絵。

想像のはるか上をいく絵が出てきて、これを表現する言葉が出てこないよ。とりあえず、鈴木みそ先生は本当に絵が上手いんだなあと思った。これと較べちゃ失礼か。