世界中のヲタとロリコンを敵に回しても

うれしはずかし「美少女評論家」と呼べる人間は、いまの日本に何人いるだろう。何人いるだろうも何も、高倉文紀氏と北川昌弘氏ぐらいしかいないことはわかりきっている。テレビ論、タレント論、アイドル論では、ほかに優れた書き手はいくらでもいる。だが、美少女に関する仕事しかしない、という気合いの入り方では、やはり高倉&北川のツートップに勝てる物書きはいないのだ(この二人の気合いの入った仕事っぷりは、たとえば高倉氏の名前でamazon検索してみれば一目瞭然)。
さて、そんなところへ果敢にも足を踏み入れようとしているのが、本書の著者、青泉聡春氏である。はじめて聞く名前だ。その理由はあとでわかる。

美少女応援入門

美少女応援入門

本書のタイトルが「評論」でもなく、「研究」でもなく、『美少女“応援”入門』となっているところに注目したい。ずいぶんまた控え目なアプローチの仕方だなあと思われるだろうが、いざ本文を読んでみると、予想外にこの著者、熱いのだ。
青泉氏の主張するところによると、美少女というものは純粋にその美を鑑賞しながら健全な気持ちで応援するべきものであって、アイドルオタクがロリコン趣味的な目で見てはいけないものなのだそうだ。だからキモヲタのペド野郎は氏ね!……とまでは言っていないけど、彼がファンに対して要求するハードルはけっこう高い。さらに、彼の鋭い舌鋒はファンの側だけでなく、アイドルの側にさえ向けられる。

私たちファンが求めるものは彼女たちの絶対的な存在感であり、ロリコンの支持で人気を得ようという程度の実力であるならば、美少女タレントとして応援するに値しません。きちんとふるいにかけられるべきです。(P.69)

すごいでしょう? とにかくロリコンが大っ嫌いなんだね。おれも彼が言ってることにはおおむね同意するけど、しかし、ここまで言い切るアイドル評論なんて見たことないよ。このひとにかかったら、レモンエンジェルなんてファンもタレントもどっちも許せないんだろうなあ。

ちなみに『美少女応援入門』の版元は文芸社。すなわちこれ自費出版なのだ。自費出版というと、ほとんどが作家ワナビーの「小説」か、もしくは引退した中小企業の社長の「自伝」と相場が決まっているのだが、ときどきこういうノンフィクションが出現する。そして自費出版のノンフィクションは、ほぼ間違いなくいい味が出ていてハズレがないのだ。