辺境へ嫁ぐ日本人はみんな強く逞しい

極端配偶者シリーズはまだまだ続く。今度はパキスタンである。

パキスタンへ嫁に行く/わだあきこ』(1995/三一書房
パキスタンというだけでも遠いのに、その中のさらに辺境であるルンブール谷に住むという、人口わずか二千数百の少数民族、カラーシャ族に嫁入りしてしまった、わだあきこさんの手記である。ハッ!
こちらもまた、なかなかビザが発行されずにやきもきさせられる場面があったりするのだが、しかし、それよりもカラーシャ族の生活描写にたっぷりページが割かれていて、存分に読書の刺激を得ることができる。たとえば女性のための沐浴場を作るくだりはたまらなくおもしろい。
彼の地では、男尊女卑ーーといっても戦前の日本のそれとは意味が違うだろうけれどーーのために、女性は不浄な存在として村内では沐浴できず、寒々しい河原で裸にならなければいけない。そこには何の根拠もない。宗教的な意味さえない。ただ単に、昔からの習慣だから続けられてきただけなのだ。しかし、まったく異なる文化を背景に育ってきているあきこさんには、その無意味さがよく見える。だから、もっと女性が暮らしやすくなるように改善を提案する。野ざらしではなく、壁に囲まれた沐浴場を建てるよう提案したのだ。そのためには自ら設計図を引き、私財まで費やすことをいとわない。とても感動的なエピソードだ。
そして、彼女の行動力に感化されて、怠け者だった男どもが張り切って沐浴場の建設に取り組みはじめるのだが、そこはホレ、パキスタンの男どものやることだから、設計図とは似ても似つかないものが出来てしまう。まったく最高だ。