テトの花嫁

国際結婚の本に滅法弱いおれが、またこんな本を買った。

アオザイ女房/近藤ナウ』(1978/文化出版局
産経新聞サイゴン特派員だった近藤紘一さんに見初められて結婚し、連れ子のユンさん(当時13歳)共々日本へやってきた奥様のナウさんが書いた手記。これまで紹介してきた極端配偶者シリーズは、ほとんどが「日本人女性が異国へ嫁いでいく」というパターンだったけども、本書はその逆で、ベトナム人女性の目から見た日本の異様な姿が、毅然としていながらも淡々と描かれていて、非常に興味深い。
この本が発行されたのは1978年だから、サイゴン陥落の3年後ってことになる。つまり、ナウさんと娘のユンさんは日本へ移り住んだ途端に祖国を失ってしまっているんだよね。しかも、さっき検索してみたら、夫の近藤紘一さんは45歳の若さで亡くなっているとの情報もあった。帰るべき祖国を失ったうえに、慣れない異国の地で頼りにしていたであろう亭主にまで先立たれた二人を思うと、なんとも言い難いものがある。かろうじて救いがあるとすれば、本書から読み取れるナウさんの人物像がとても強い精神力の持ち主であるので、きっといまも逞しく日本で生きているだろうと思えることだ。