危険な脳のかたち


脳卒中/やみくまひろし』(1996/中央医学社)

本書は、脳卒中の診断法から治療法などについて、素人にもわかりやすく解説しようと、ものすごく豪快な努力をしている本だ。

どういった努力かというと、ようするに『サルでも描けるまんが教室』でも紹介されていた
どんなに難解なことでも漫画で解説すればわかりやすくなる理論
を実践しているのである。なるほど、よく見れば本書のサブタイトルのところに「漫画でみる神経内科」なんて書いてある。しかし、サルまんを読んだひとなら「漫画で解説さえすりゃあいいってもんじゃない」こともよくご存知だろう。その実例がここにあるわけだ。とにかく見ていただこう。

約200ページにわたって、ひたすらこの調子。とある病院の医局で、神経内科の医師同士が延々と脳卒中の診断法や治療法について会話を繰り返していくだけなのだ。構図とかコマ割りという概念など微塵もない。あとデッサン力も限りなくゼロ。脳波計でいうとまっすぐな横線。

だが、しかし、これをずーっと読んでいくと、この変化に乏しい漫画(というより単なる挿絵)の反復と、素人には意味不明な単語の羅列がなんともいえないグルーヴを生み出し、脳内に麻薬物質が出てきて気持ちよくなってくるのだった。これはなかなかいい本だ。

ところで、途中で唐突に登場する院長先生というのが、こんな頭をしている。

脳卒中よりも、この頭の形のほうがヤバイんじゃないのか。