その後のハイジ(アニメ化希望)

またまたものすごい本を買ってしまった……。
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まあ、タイトルがすべてを表しているわけだが、アルムの山で幼少時を過ごしたハイジやペーター、クララたちのその後を描いた物語である。よく見るとタイトルに「私説」とあるんだけど、私説というか、珍説というか、お前ヨハンナ・シュピリに黙って何書いとんねん! みたいなとんでもない小説なのだ。たった100ページそこそこの薄い本でありながら、読んでいくと仰天の珍展開続出で付箋だらけになってしまった。それらをひとつずつ引用して紹介してるとキリがないので、ダイジェストで一気にいこう。ネタバレ全開でいくからそのつもりで。


 まずは、歩けるようになったクララが久しぶりにアルムの山を再訪するところからはじまる。ハイジもペーターも大歓迎してくれ、三人は牧場を走り回って遊ぶ。あるとき、はしゃぎすぎたクララが崖から転落しそうになる。それを助けたペーターはクララの身代わりとなって30メートル下まで転落したが、幸いなことに足を複雑骨折しただけで(だけで?)済んだ。この話を聞いたゼーゼマンは、またしても自分の娘がアルムの人たちに助けられたことに感謝し、いつか恩返しをしようと決意する。ペーターは山の麓にある病院へ入院し、クララはそんなペーターにつきっきりで看病をした(←伏線)。
 やがて、怪我から復帰したペーターは学校のマラソン大会に出場する。気軽に出場してみたところ、二位の選手を1時間も引き離してぶっちぎりの優勝を果たしてしまった。当たり前である。子供の頃から酸素の薄いアルプスで走り回っていたのだから。学校の先生は、ペーターの驚異的なタイムを見てオリンピックの強化選手に推薦したりする。
 ある夏、アルムの山に一人の若い医師がおんじを訪ねてきた。この青年オットーは、クララの足が治った“奇跡”について、調査しにきたのだった。オットーはなぜかおんじに気に入られ、飲み友達となり、村に下宿することとなった。おんじは、オットーに自分の過去を話し始める。「わしはな、若い頃、傭兵だったのじゃ……」(えー!!)。おんじは、戦場で人間の精神と肉体の関係に気づき、除隊後には東洋の「気学」を学び、それらをクララに応用したことが、足の回復につながったのだと言う。
 強く感動したオットーは、ゼーゼマンらの協力も得て、体の弱い子供たちを救う「クララ基金」という財団を作った。住まいは、リフォームされて立派なお屋敷になっていたハイジの家のひと部屋を借りて同居することになった。オットーは初めてハイジと会ったとき、これまでに見たこともないような彼女の純真な心に驚きを隠せなかった(←これも伏線)。
 ある日、オットーはハイジに連れられて、ペーターのおばあさんのところへいった。目の見えないおばあさんであったが、オットーが診察してみたところ、原因は角膜腫瘍だということがわかった。ということは、角膜を移植すれば見えるようになるのだ。で、手術したらあっさり完治。夢にまで見たハイジの顔を自分の目で見ることができるようになったおばあさんは、長生きしたことを神に感謝するのだった。
 ペーターが19歳になったとき。牧場の裏を散歩していて銅鉱床が露頭しているのを発見した。すぐにその価値を悟ったペーターは、とりあえず泥を塗って隠し、ゼーゼマンに連絡した。ゼーゼマンはすぐにスイスの鉱山局へ登記して、ペーターとともに鉱山の開発に乗り出した。鉱山は、村の人々への職業の供給にもつながった。ゼーゼマンとペーターはフレッチ川にダムを造って()発電し、鉱山経営の合理化も図っていった。やがて25歳になったペーターは、鉱山会社の経営陣に加わった。
 アルムの山を取り巻く環境は、急速に変わり始めた。オットーはハイジに求婚した。ハイジの気持ちは決まっていたが、「クララに相談してから返事をするわ」と答えた。クララは、ハイジの結婚相手は小さい頃からの仲良しだったペーターだろうと思っていたが、内心ではホッとしていた。なぜならクララがペーターを愛し始めていたからだ(どこのメロドラマか!)。結局、ハイジ×オットー、クララ×ペーターという組み合わせで丸く収まる。ハイジの結婚式では、クララがヨーデルを披露した。足が悪くて長いあいだ車椅子の生活だったクララは横隔膜が発達しており、とても奇麗なファルセットが出せたという(あの車椅子にそんな伏線が!!)。
 ペーターは鉱山の仕事で見せた実績と人柄を背景に、アルムの町長に当選する。ペーター町長。不思議な響きだ。一方、夫のオットーとハイジは東洋医学を学ぶために中国へ出かけていく。約一ヶ月の船旅を経て上陸した香港では、生まれて初めてピータンを食べた。四川料理はハイジには辛すぎた。そりゃそうだろう。北京で食べた「長い糸状のものがスープに入った料理」はおいしいと思った(素直にラーメンって書けばいいのに)。中国では、陰陽五行説陽明学仏教医学、足心健康法、太極拳、気学、鍼灸麻酔などを学んだ。一方、その頃、クララは赤ちゃんを産んでいた。
 エミリーと名付けられたその子が1歳になった頃、オットーの東洋に対する興味はさらにヒートアップしており、日本を視察しに行くことを決意する。今度は親友のクララ×ペーター夫妻と1歳になる赤ん坊も交えた5人での旅行だった。飛行機で……(ハイジの時代設定って19世紀末ぐらいじゃなかったっけ?)。
 で、ここから怒濤の急展開を見せる。 日本に行ったハイジたちは、日本の漢方医学界の重鎮である佐藤教授(誰?)に会い、さらに行動心理学の専門家の芳村博士(だから誰!?)を紹介してもらう。芳村博士はハイジたちとの会合をとてもよろこび、その理由を「若い人たちからはプラスの“波動”が出ているからだ」と、トンデモナイことを言い出す。そして今度はその芳村博士が仙台に住む上原さん(だから誰なんだよう!)というひとを紹介する。この上原さんは、末期の直腸がんで人工肛門を取り付けなければ生きられないと宣告されながらも、芳村博士が提唱するイメージトレーニングによって末期がんを克服してしまったひとなのだそうだ。それがハイジとどういう関係があるのかサッパリわかないまま、著者はドサクサまぎれに輸入非加熱製剤の罪とか、日本の厚生行政のゆがみとか、『脳内革命』とか、ビワ温圧療法とか、いろんな話を展開させていって、最後はハイジが肉じゃがの作り方を教わってアルムの山に帰っていくのだった。 完


世の中、いい本はまだまだ眠ってるなあ!