凶暴女患者の指に長い灰

映画監督には手癖というか、同じモチーフをつい撮ってしまう演出のパターンみたいなものがあって、特定の監督の作品を集中的に観ていると、同じ演出を繰り返し使っているのに気づかされることがある。たとえば有名なところではジョン・ウーの「鳩」とか、シャマランの「ドアノブ」とか、リドスコの「逆光の換気扇」なんかがある。リュック・ベッソンはいつもオープニングをどこかの景色のナメ映像から始めているし、「コーエン兄弟はチビたり形が崩れたりしているものを嬉々として撮っている」と中野貴雄監督がブログで書いてるのを読んだこともある。イーストウッドは自分の出演作でしょっちゅうアイスを食ってるらしい。
というわけで、『エイリアン2』に長い灰のシーンがあったということは、もしかして他のキャメロン映画にも同様の演出があったりするのでは? と考えるのは必然のなりゆきだ。そういえば……『ターミネーター2』でセガレと合流してメキシコへ退避したサラ・コナーが、夕日を見つめながら人類の運命をオモンパカッテいる場面で、たしか長い灰の演出があったかも? いや、あったよな? あったあった、絶対あった!
と確信を抱いてビデオを早送りしながら見直してみたら、不思議なことにそんなシーンはなかったんだなー。とても不思議。キツネにつままれたような気分。自販機でコーヒー買って紙カップの底のトランプマークを確認してからうしろを振り返ったら自分とそっくりのデブが立ってたぐらい不思議。
結局、飛ばし見してもラチがあかないので最初からじっくり見返したところ、問題の場面ではそんな演出はされていなかったけど、そのかわり、精神病院で「これがお前の悪行じゃー、よく見ろー」ってサラが監視ビデオに映ってる自分の暴れっぷりを見せられる場面で、やや短めの長い灰(矛盾)があったのだった。

▲『ターミネータ−2』(00:19:00)