格闘ポエム

詩人や歌人でプロになるというのは、小説のプロになるよりもずっと難しいのではないか、と思う。けれど、たとえば短歌なら5+7+5+7+7=たった31文字のシンプルな表現だから、素人目には小説を書くよりも簡単そうに見えて、それこそ「小説は書けないけれど“短歌ぐらいなら”自分にも書けるだろう」なーんて思ってるひとは多いのではないか。

そのことは、ブックオフの105円コーナーに行ってみればわかる。自費出版の小説は、プロの作品群の中に数冊混じっているだけだが、詩集や歌集は、自費出版物のそれだけでけっこうな量が棚を占拠しているのだ。でも、いつ行ってもそういう棚の前はガラ空きなんだな。まあ、そりゃそうだ。まったく無名の(というか素人の)詩集や歌集なんて、誰が好きこのんで買うものかーー。

もうおわかりでしょうけど、おれが買うわけです。


『歌集 力道山が死んだ/竹村公作』(2003年/砂子屋書房

完全にタイトル買い。力道山をテーマにした短歌だったらそりゃ読んでみたいじゃない。だが、ページをめくってみると、力道山について詠んだ歌なんて四篇しか載ってなくて、しかもそんなにおもしろくはないんだな。詐欺かよ! と、ブックオフ所沢プロペ通り店で暴れそうになったが、他のページをめくってみたらジャイアント馬場を詠んだ歌が11篇載っていたので、これなら許そうと購入を決意したおれなのだった。たかだか105円で大袈裟な。

闘魂を あばらの骨で包み込み リングに立てり ジャイアント馬場

わるくないでしょ?

襲い来る デストロイヤーの胸元に 十六文の 足振り上げる

絵が浮かぶねえ。

ワンテンポ 遅れた怒りを添えて打つ 空手チョップに ココナッツクラッシュ

いいねー。ワンテンポ遅れた怒り(笑)。

脳腫瘍 切り取るときに煩悩も 少し取りたり 馬場正平

こら!

まあ本書のおもしろいのは力道山ジャイアント馬場が出てくるということぐらいで、それ以外の大半は普通の素人短歌が並んでるだけだから、落ち着いてちょうだいね。はてブに「読みてぇぇぇ!」とかコメントつけたりするほどのもんではないからね。でも、105円で見つけたなら、即買い。

五七五七七とかけて力道山と解く。その心は? レスラーには担架が付き物でしょう。って、誰がうまいこと言えと。