わがまま姑娘(クーニャン)

異国の嫁をもらったひとの手記シリーズ、今回は中国人のクラブホステスに惚れちゃって結婚したはいいけれど、その常軌を逸したわがまま&強欲ぶりに振り回されているジャーナリスト、山岡俊介さんの本だ。

彼女、紅(ほん)ちゃんと山岡さんの出会いは新宿歌舞伎町の上海クラブだった。客として店を訪れた山岡さんは、ホステスをしていた紅ちゃんと初めて会うなり「あなたハンサムね。独身?」と言われて舞い上がってしまう。どう考えたって客へのリップサービスだと思うんだが、当時まだ遊び慣れしていなかった山岡さんは、このひと言で紅ちゃんにベタ惚れしてしまうのだ。桂銀淑 ベスト10
もちろん惚れた理由はその言葉だけではなくて、紅ちゃんが山岡さん好みのショートカットで、顔立ちも以前から大ファンだった桂銀淑に似ていたからだという。山岡さん趣味が渋いよ。
ひと目惚れしたのは自分の方なのに、「おれはモテるなあ〜」と壮大な勘違いをした山岡さんは、その日から紅ちゃんの元へ通い詰め、とうとう結婚の約束を取り付ける。紅ちゃんにとっては4年間の就学ビザがそろそろ切れそうなので結婚ビザが欲しかったかららしいが、そんなことは些細なことだ。ここはやはり山岡さんが愛の力で紅ちゃんのハートを射止めたのだと思いたい。そして結婚――
――したはいいけれど、紅ちゃんは恐ろしいほど金がかかる女だったんだな。
まず、結婚したにもかかわらず同居は拒否され、別居している彼女のマンションの家賃は山岡さんが負担。小遣いは月々15万円。定期的に帰国するときの旅費と小遣いも負担。大好きなブランド品をねだられることなど日常茶飯事。中国にいる家族のために買ったマンションのローンもなぜか山岡さんの支払い。ジャーナリストとはいえ、一介のサラリーマンにすぎない山岡さんの給料は、羽根が生えたように飛んで消えていく。これはいったいなんなのか。
金だけではない。まず、彼女は料理、掃除、洗濯というものをまったくしないのだ。だから当然それらも山岡さんが自分自身でやらなければならない。なんともハードな結婚生活である。それでも別れることをせず、一緒に暮らし続ける(暮らしてないけど)理由はなんなのか。
それはもう愛しかないと思うのだ。
極端配偶者シリーズの本(そんなシリーズは現実にはもちろんないのだが)を読んでいていつも思うのは、金とか、見栄とか、セックスとか、いろいろと欲望の部分も見え隠れするけれど、いつもその底に大きな愛が――無償の愛、とは言い難いので、無情の愛とでもしておこう――が横たわっているのを感じるのだ。それはいまどきの日本人どうしの結婚では、なかなか見られないものでもある。
山岡さんと紅ちゃんの人生に幸あれ。あと山岡さんの給料はもっと上がれ。