007は小唄のライセンス

ある日のこと。

仕事中、びびびびっ! とコレクターアンテナが何かの予感を受信したので、晩飯がてら外へ出て、仕事場の近くの某古本屋を覗いてみた。すると、いつもは店頭でいやな感じに日焼けしたAKGWJ郎とかNSMRKT郎とかの文庫本が並んでいるだけの100円均一コーナーに、ERBRO……あ、こっちまでイニシャルにしたんじゃ意味わからんか。ハヤカワ文庫のE.R.バロウズが3冊だけ混じっていたのだった。しかも、ほとんど日焼けをしていない。

バロウズは中学時代に大好きで、いっぱい持ってたんだけど、全部売っちゃったんだよねー。いまさら集め直すつもりもないけれど、100円なら買わなきゃ損だ。

さっさっさっと抜き出して、仕事中に感じた「びびび」はこれのことだったのかなあ、とホクホクしながら店内に入ったら、少しだけレコードも置いてあって、まあ、こちらはあまり期待しないながらも、念のためにとチェッックしてみた。

すると、こんなのが出てきたではないか。


『ボンド小唄/ボニー・ジャックス』(1965年/キング)

どのボンド?

これがもしもジェームズ・ボンドについての小唄だったりしたら最高なんだけどねえ、さすがに世の中そうおもしろいようにはできていないんだよねえ……

と思ったら、本当にジェームズ・ボンド小唄だった! 世の中すごい!

2番の歌詞をちょっくら引用。

おらが村さの 若い衆は
ボンドルックに ねついれあげる
007は 殺しの番号
007は 殺しの番号よ
かあちゃんのためなら うで自慢
   (作詞:橋本淳 作曲:すぎやまこういち

これはかなりいい。巨匠お二人のコンビでこんな曲があるなんて、まったく知らなかった。あとでネットで調べてみたら、この詞は橋本淳先生のデビュー作だというではないか。まいった! 処女作にしてこのクオリティか! 天才過ぎる!

そして、こんな素晴らしいレコードが、いったいいくらで売られていたのかと言えば、たったの350円なのである。タダ同然じゃねーか! これはいい買い物をしたわあ。つーか、おれっていつもいい買物してるよね。