上を向いて歩こう

千葉県在住の場合、都内に行って帰ってくるだけでもそれが度重なると毎月の交通費もばかにならないわけで、だから、どうしても出かけなければならない用事があるときは、それに便乗して複数の用事を一緒に済ませてしまうようにしている。昨日は、大塚に用事があったので、ならばと、山手線でひとつ手前の巣鴨で2件、ひとつ向こうの池袋で2件、用事を済ませることにした。
大塚での約束の時間より2時間早く、巣鴨に到着。

有名な巣鴨地蔵通りをテクテク歩く。昔、いっぺんだけ来たことがあるが、右を見ても左を見てもババアばっかりで、相変わらず自分にとっては非常に関係性の薄い場所だ。じゃあなんでこんなところを歩いてるかというと、300メートルほど進んだところに古本屋さんがあるからです。

青木書店。なぜか古本屋には多い名前。業界的には堀切菖蒲園の青木書店が有名だと思う。先日行った高円寺にもあるね。ここの青木書店はとくに有名店であるとか、掘り出し物の噂があるとか、そういうことはまったくない普通に枯れた店なんだけど、自分が未踏の古本屋があるなら、一度は覗いてみないと気が済まないのが蒐集原人という奴なのだ。
店内で物色していたら、店の奥にあるテレビから音声だけが聞こえてきて、いきなり「酒井法子容疑者の行方を……」とか言っていてびっくりした。こんな形で知らされるとは!

『彫金入門/菱田安彦』(150円)。
こういう工芸入門系の本は、興味ない分野でも眺めてるだけで楽しいんだよね。あまり買いたいものがない店の場合、とりあえずカラーブックスを買うことが多いおれだ。
地蔵通りをさらに進んで行って、都電の庚申塚駅を過ぎたところにもう一軒、かすみ書店という古本屋さんがあるそうなので、暑い中がんばって歩いたのだが店休日だったようだ。

休みなのは残念だけど、いい佇まい。
そっからまた巣鴨まで引き返し、山手線ひと駅乗って大塚へ。ブックオフなど覗いてから(収穫はナシ)、その近くにあるKKベストセラーズ社へ。以前提供していた資料の受け取りついでに、いろいろとご挨拶など。その後、またひと駅乗って池袋へ。
サンシャインシティ・アルパの3階で古本市が開催されているのだった。

欲しい本はいくつかあったけど、ちょっと最近本を買い過ぎなので、いったんは4〜5冊手に持ったものを元に戻して、これぞ! というのを1冊だけ買うことにする。

『歌江の幸せくるくる心霊喫茶/正司歌江』(210円)。
↑まさに「これぞ!」であろう。
そして最後は新文芸座へ行って、懐かしの無声映画活弁付き上映会。今日はキートンの『セブンチャンス』(弁士:澤登翠)と、第1回アカデミー賞作品の『第七天国』(弁士:斎藤裕子)の2本立て。キートンはもちろんおもしろいけども、それよりなにより『第七天国』が素晴らしかった!

どん底暮らしの二人が出会って、恋に落ちて、やがて戦争によって引き裂かれ……という話。Never look down, Always look up(決して下を見るな、いつも上を向いていよう)というメッセージが、本作のテーマとして度々登場人物の口から発せられる。『上を向いて歩こう永六輔作詞)』の元ネタでもあるそうだが、いまの自分にとって、とくに胸に沁みるセリフ、だなあ。