京王百貨店古書市と浅草名画座

松屋は牛丼もうまいけど、デパートもいいよねー。三越とか伊勢丹とかにはない、いかにも“日本の百貨店”という感じが好きなんだよ。
で、昨日は新宿の京王百貨店と、浅草の松屋でそれぞれ古書市があるとのことで、出掛けてきた。まずは新宿京王だ。松屋が好きなのに、なぜ新宿京王を先に選んだかというと、それにはわけがある。
新宿京王百貨店古書市は、おそらく都内のデパートで開催される古書市としては最大規模のもので、数多くの古書マニアが集まるために、初日の開店ダッシュが物凄いらしい。その様子は、紀田順一郎氏の『古本屋探偵の事件簿』にも若干の脚色を加えつつ描写されている。それが実際にどれほどのものなのか、一度、この眼で見ておきたかったのだ。
というわけで、朝の9時40分くらいに京王百貨店へ行ってみた。開店まではあと20分。なるほど、すでに催事フロアへの直通エレベーター前には行列が出来ている。でも、言うほど殺伐とはしていない。一瞬、「これも不況のせいかなあ」なんて思ったりしたが、そうじゃない。同じ京王百貨店で開催されている駅弁大会(毎年参加してます!)と無意識に比較していたのだ。あちらの開店直後のモッシュは、野音のラフィンノーズか、ってぐらい殺気立ってるからねえ。
ともかく、10時の開店とともにエレベーターが始動すると、予想外にみんなおとなしく乗り込み、7階に着いてドアが開いても誰一人として駆け出すことなく(駅弁大会はマジでダッシュするやつがいる)、それでいて、あっという間に商品棚の前は古本マニアたちで埋め尽くされていった。
そして発掘したのがこの5冊。

「幻のツチノコ/山本素石
ツチノコ本は無条件で買う。つり人ノベルスのラインナップとして刊行されているのがなかなか愉快だ。
「幻のツチノコを捕獲せよ!!/山口直樹」
当時新刊で買ったものを引越しのときに手放してしまって激しく後悔していたら、ふたたび発見。とてもうれしい。ツチノコ発見したよりうれしい。
阿部定 公判記録」
和綴じ本というか、いわゆる公判記録の体裁を模した造本になっているので背表紙がない。奥付も前書きもなく、本当に公判記録を活字で起こしただけのものなので、誰がいつ作ったのやらさっぱりわからない。
「達人に学ぶ鉄道資料整理術/柳澤美樹子」
コレクターの整理術について調べるのはライフワークなので、ドンピシャリの資料を見つけた。
「大蛸に食われた女たち/花咲一男」
人喰い本というわけではない。大蛸が女の股間に吸いついている様子を描いた北斎春画は有名だが、江戸時代には、北斎以外にも多くの画家が同様の絵を描いている。それらの絵と、そういう絵が描かれた時代背景について解説した本だ。
まあ、古書市の開店行列に並んでまでこんな本を買うやつはあんまりいないと思うが、おれにとってはこれが重要なんだからしょうがない。これでシメて2415円。安上がりな道楽だ。
続いて浅草を攻めるのだー! と、大江戸線で蔵前へ出て、そっから歩いて浅草松屋へ行ったら……古書市なんてやってなかったよ! こりゃいったいどういうこった!? とiPhoneで調べてみたら(便利)、今日、古書市をやってるのは浅草松屋じゃなくて、銀座松屋のほうでやんの。ひゃあ、おれってばうっかりさん!
いまから銀座へ行くのも面倒なんで、あきらめて映画でも見てくことにした。いつもの浅草名画座健さんと文太が共演する石井輝男の『大脱獄』と、鶴田浩二対梅宮辰夫の対決が熱い『渡世人』、それからなぜここに混ぜるのか意味がわかんない『おくりびと』の3本立て。『おくりびと』はこのあいだレンタルDVDで観たばかりなので、『大脱獄』と『渡世人』だけ観た。どちらも素晴らしい映画だった。
ところで、浅草名画座の番組チラシの文章がおかしいことは一部の人の間で有名で、たとえばこのブログにもそのことが書かれていたりする。浅草の、しかも場外馬券売り場のすぐとなりという立地だから、普通に説明したのでは安物焼酎で脳が溶けかけた親爺客には伝わらないんだろう。全然他人事じゃないけどな。

ほいで、映画を見終わってから劇場前の看板をじっくり見てみたんだけど、ここに貼られている説明文もやけにおかしいんだ。クローズアップにしてみよう。

網走番外地の番外編」って、別にそういうわけじゃないんだけど、でも、言い得て妙でもあるな。

おれも映画見てるあいだ「カメダ、カメダって、砂の器かよ!」ってツッコミ入れてたので、あとでこの解説読んで吹いた。

アカデミー賞を獲ったぐらいだから、これが納棺夫の映画だってのはみんな知ってると思うんだけど、この土地でそんなことは通用しない。ここに書かれた説明だけ読むとなんだかサスペンスフルで全然ちがう映画みたいだよね。

というわけで、オチはとくにないけど、まとめると「出掛けるときは目的地をよく確認しよう」ってことかな。