街角の似顔絵描きコレクション 1/8

街角の似顔絵描きには不思議な魅力がある。大勢の通行人が見ているなかで、絵のモデルとして数十分間じっとしているというのは、ちょっとした苦行だ。それでも絵を描いてもらおうとするからには、単なる思い出作りだけではない何かがある。

おれなんかは顔と名前をさらけ出して商売してるので、人前でヘンなポーズをとったり、ネット上に顔写真を出すことには何ひとつためらいはないが、妙齢のお嬢さんがそれをするというのは、なかなかに勇気がいることだと思う。ニャンコまで動員しちゃったりしてね。

ともかく、街角の似顔絵描きには、ひとを尋常でない気持ちにさせる何かがある。当然、おれがそういうものを黙って見過ごせるはずもなく、見かけるたんびに描いてもらっている。いつの間にやらけっこうな枚数の似顔絵が集まってしまった。それを今日から8日間に渡って毎日1枚ずつ紹介していこうと思う。

まずは軽いジャブとして、2003年の8月に描いてもらったものを。

地元の夏祭りだったと思う。夜店の屋台に4人ほど並んでいた画伯のうち、いちばんデッサンがしっかりしてそうな先生に描いてもらった。メガネがすごい適当だけど、似てるっちゃあ似てる。描きあがったとき、画伯は「どうだ似てるだろう!」ってな感じのドヤ顔で差し出してくれたんだけど、似てる似顔絵はつまんないんだよね。でも、そんなことはおくびにも出さない。ちゃんとお礼を言って受け取ったさ。それが似顔絵コレクションのマナーってやつだ。