街角の似顔絵描きコレクション 5/8

1995年、10月の作品。サンシャイン60に登ったときに描いていただいた。針すなお先生、こんなところで何やってるんですか! と言いたくなるようなタッチだが、もちろん別人だ。

似顔絵というのは、その本人が気にしてそうな顔のパーツを大袈裟に描いて悪目立ちさせるほどそっくりになるものだが、己の肖像を描いてもらおうとするような人は、そんなことを望んではいない。むしろ、実物よりも何割増しかで男前(または美人)に描いてやるぐらいが丁度いい。街角の似顔絵描きに望まれるスキルというのはそういうものだ。

だが、この画伯は違った。己の本能の赴くままに描いて描いて描き上げて、我に返った瞬間、自分でも「やっちゃった!」と気づいたのだ。だが、もう描き直す時間はない。画伯は、完成したこの絵をおれに差し出しながら、しきりに謝っていた。「すみません、こんなんなっちゃって……」と。

ところが、そんな画伯の後悔とは裏腹に、「よくぞ、おもしろフェイスに描いてくださいました!」と心の中で興奮を抑えきれずにいるおれなのだった。