古本たずねて神戸弾丸ツアー その1

仕事と称して朝からゲームをやっていたり、ヒマさえあれば古本屋めぐりをしたり、下町のもつ焼き屋に通いつめたり、普通の勤め人からするとずいぶんお気楽な生活をしているように見えるかもしれない。ま、楽しくない、とは言わないが、こう見えてもこちとら借金はあっても貯金はゼロだ。105円の本を買って、1串80円のもつを食うぐらいしか楽しみがないんだ。

古本をたしなむ者として、前々から「神戸はいい!」という話は聞いていた。古本屋と中古レコ屋が充実していて、東京よりそこそこ相場が安くて、おまけに戸川昌士さんがいる(おれ、戸川さんの熱烈な読者だからサ)。そんな憧れの聖地へいつかは行かなきゃ、と思い続けて幾星霜。しかし、東京から神戸まで出掛けたら、新幹線の往復だけで3万円とか減るじゃん。たかだか古本買いに行くだけのために3万も出せるかよ!

そう考えて、ずーっと諦めてたんだよね。会社員時代にも何度か神戸ツアーを計画していたんだけど、なかなか予算の都合がつかなくて、何度も計画を白紙に戻していた。それから会社を去ってフリーになり、少しずつ財政が好転してきたので、そろそろ行けるか……と思ったら、取引先の事情で決まりかけていた仕事の話が立ち消えになったりしてガックシ。おまけにこの大震災だ。

自分は直接被害には遭っていないけれど、福島にたくさんいる親戚と連絡がつかずにヤキモキしたり*1、4月1日にリリースを予定していた自分の新作ゲームが延期になってしまったり、テレビのニュースはいつ見ても気持ちを沈ませるようなものばかりだったり、どんどん暗い気分になっていく。いくつかやらなきゃいけない仕事はあるのに、なかなか手につかない。自分には鬱の気はないと思うのだが、でも、なんだかスレスレのところに触れているような気もしていた。

このままじゃヤバいな、と思った。ここらでスコンと気分を変えていかないと、マジで鬱になるぞ、と思った。だから思い切って行ってきた。神戸に!

決行したのは3月24日。といっても、予算を最大限に節約するために、新幹線なんていうお高い乗り物は使わず、夜行バスで行くことにした。だから出発するのは夜だ。

昼に『共喰山』の試写会があったので、それを見て、夕方くらいに身体が空いた。あとはバスの出発する時間までヒマをつぶす。で、何をしたかというと、よせばいいのに古本屋に行っちゃうわけだ。明日からイヤというほど神戸の古本屋をまわるのに、なんでおれはわざわざこっちで古本買って荷物を増やすかね。

久しぶりに訪問した渋谷のサンエー書店で、いいタイトルの自動車雑誌を見つけた。「ドライブ野郎ブーブー」だ。200円。

夜行バスを利用するのは生まれて初めてだけど、人から聞いたり、ネットで調べたりして、だいたいどんなものかは知っている。とにかく寝るしかないわけだから、出発までにどこかで酒飲んじゃおうと思った。酔わないと寝らんないんだ。出発地点は新宿西口なので、しょんべん横町のもつ焼きウッチャンへ行き、極旨のレバ刺しをハイボールで。

うまいなー。ごま油と塩っていう組み合わせは、あらゆるタレの中でも最強だな。何をひたしても旨くなる。これさえあれば狂牛病で死んだウシの骨髄だって美味しくいただけるのではあるまいか。

もっともっと美味しいもつでハイボールを飲りたいところだったが、ここであんまり飲み過ぎて寝小便してはいけないので、適当に切り上げる。続きはバスの中で〜、と考え、コンビニで赤ワインの小瓶とおつまみを仕入れた。

ところが! バスに乗り込んで、乗務員さんの説明を聞いて初めて知ったんだけど、こういうバスって禁酒なのな*2。仕方ないのでペットボトルのお茶だけ買って、JJライナーというジャン・ジャック・バーネルっぽい名前のバスに乗り込み、いざ、神戸に向かって出発したのだった(その2に続く)。

*1:その後、みんな無事が確認できました

*2:会社によってはOKなところもあるのかもしれない