中古盤屋で語る自分史 その6

【7】iPodとの出会い

持っていたアナログのレコードの大半を処分し、ごく普通の音楽マニアとして、聴きたいCDだけを買う生活になってしばらくした頃、突然、おれは音楽への興味を失ってしまった。理由はわからない。なんか知らないけど、いきなり音楽がどうでもよくなっちゃったのよ。
それで、この時点で持っていたCD(たしか300枚くらいか)を、ほぼすべて売り払ってしまったのだった。

このときはフリーライターをやめて下北沢の会社に勤めていたので、売るCDはすべて下北沢ディスクユニオンに持ち込んだ。コレクション目的ではなく、単に聴きたくて買ってたロックのアルバムばかりだったので、えとせとらに廃盤歌謡を持ち込んだときのようなプレミアはつかなかった。
それでも、CDというのは状態が劣化しにくいものだったし、アルバム単位で単価が高かったこともあってか、そこそこの値段で買い取ってもらうことができた。その金は全部飲んじゃったけどね。

で、1年ほど経過しただろうか。その間、ほとんど音楽を聴かない生活を送っていた。新譜のレコード屋はもちろん、あれほど大好きだった中古盤屋にも行かなくなっていた。

そんなところにiPodが登場したのだった。

iPodの衝撃について、いまさらここで述べるのも小っ恥ずかしいので深くは語らないが、ようするにウォークマンが登場して音楽を聴くスタイルが劇的に変化したように、iPod(というか、iTunes)の登場が、ふたたび音楽の視聴スタイルを大きく変えた。音楽はもういいや、と思っていた自分が、またぐわーっと熱くなった。
で、おれみたいなコレクターバカがそういう状態になるとどういう行動に走るかというと、手放したCDをふたたび買い集めはじめたりするわけだ。まったく無駄の多い人生よ。

結局、途中で少しずつ音楽の趣味が変わっていったりしたこともあって、元のコレクションとはだいぶ違ったものになったけれど、なんだかんだで300枚くらいは買っただろうか。最近はその熱もまた冷めたので、もうCDを買うことはほとんどない。また売り払おうとは思わないけれど、新しい音楽への欲求もそんなにない。

が、このブログを読んでいる方ならおわかりのように、変なドーナツ盤だけはまだ買っている。そういうものだけが秘かに、少しずつ、増殖していて、いまではそういうレコードばかりが1000枚くらいある。
いまはヤフオクがあって、おれもそれなりに利用はしているけど、あれは明確に狙いのレコードがある人に有効なシステムなんだな。でも、おれみたいに漠然と「なんか変なレコードないかしら?」と思っているような人間には、実は向いてないんだ。やっぱり、実際に中古盤屋に出かけていって、山ほどある在庫を1枚1枚めくっていって「ピン!」と来たものでないとね。ヤフオクのサムネイル(写真)とタイトルだけでは、そういう変な物の匂いは伝わってこないんだ。

◀最近手に入れた、1971年りぼん5月号の付録。人気漫画家3人衆(一条ゆかり先生、井出ちかえ先生、もりたじゅん先生)がディスクジョッキーに挑んだソノシート。ご本人たちもいまさら聴かれたくないだろうが、おれも恐ろしくて針を落とせない。

(このテーマ、おわり)