辛口好きな黄色い子熊

昨日から新宿の京王百貨店では、恒例の歳末古書市が開催されている。

日々、あっちゃこっちゃの古書店を訪ね回っている古本コレクターにとって、デパートの古書市は数多くの店の棚を一度に見てまわることができるので効率がよく、非常にありがたい。ただし、お値段はというと、デパ市には“出店料”というものがあるから、どの店もそんなには安く出せないのが現状だ。これはまあ古本屋さんの立場からすれば致し方ないことだろう。

でも、実際のところ値段が高いのは掛け軸や浮世絵、初版本、稀覯本(きこうぼん、って読むんだよ)、昔の漫画本なんかであって、おれが集めているようなモンド系の雑本は全然高くない。だいたいは200〜300円。多少高くてもせいぜいが500円ってところだ。

それに、京王百貨店古書市は初日の開場ダッシュが有名だったりするけど、自分以外にも集めてるひとがいるようなジャンルにはまったく興味がないおれなので、10時の開店に駆けつける必要がない。昼過ぎにのんびり出掛けていっても、おれが欲しいような本は普通に残っている。

さて、そういうわけで昨日のお昼過ぎ。京王百貨店に行ってきた。

気のせいか規模が縮小されているような気がする。同じフロアで年始に開催される駅弁大会が年々規模をデカくしていってるのに反して、古本市はなんだかフロア面積が狭くなっているような気がするのだ。食い物は不況に強いけど、古本なんて生きていくのに必要ないものは消えつつある、ってことなのかねえ。

なーんてことを考えながらフロアを一周し、本の山のなかから見つけ出したのがこの1冊だ。

『아기곰푸우』

英語の原題が書かれておらず、コピーライトすらどこにも表記されていないので、ハングル文字が読めないおれにはこれが何の本なのかはわからない。表紙の絵には見覚えがあるような気もするが、やっぱりわからない。わかってしまうといろいろヤバいのでわからない。

タイトルの意味をエキサイト翻訳で調べてみたところ、「아기」が“赤ん坊”で、「곰」が“熊”をあらわし、「푸우」がちょっとわかりにくかったがどうやら“プー”という音を意味しているらしい。ふうむ……。

ハングルに馴染みのない人間からすると、このユニークな形の文字がデカデカと本の表紙に書かれているだけでも、それなりのおもしろさは感じられる。しかし、それだけではわざわざ自分が単なる絵本を手に取る理由にはならない。
なのに、どうしてこれを手にしたかというと、なんとなく匂ったのだ。モンドの香りが。幻の名盤解放同盟の著作を見てもわかるように、数々のおもしろ物件を世に送り出して我々を楽しませてくれた彼の国のことだから、この本にも何かあるんじゃないかなーという勘が働いたんだ。

中を見ていくと、これは黄色い子熊を主人公にした絵本だった。100エーカーはありそうな森で、黄色い子熊がたのしそうに遊んでいる。風船につかまって空を飛んだり、穴にもぐったりしている。

で、真ん中あたりまで来たところで、自分の勘が的中した。それは子熊とその友達らしきウサギが仲良く蜂蜜を食べようとしている場面。

聞くところによると、オリジナルの方では、子熊が愛用している壺に英語で蜂蜜を意味する単語が書かれてあるらしい。そして、この本でもやはりその単語は「蜜」を意味するハングル文字の「꿀」に修正されている。

通常、漫画や絵本の書き文字を外国語に翻訳する際には、文字の書かれた部分を塗り潰し、その上に訳語を書き直す。この本でもその通りのことをしているのだが……、どうしたわけか塗り潰すときに子熊が愛用している黄色い壺を赤く塗っちゃったので、蜂蜜の壺がキムチの壺にしか見えなくなっているのだった!


兎「やあ、黄色い子熊、蜂蜜の味はどうだい?」
熊「唐辛子が利いていてうまいよ、兎!」

このような掘り出し物が売られている京王百貨店歳末古書市に、みんなも行ってみよう! 30日までやってるよ!