永福町・大勝軒の中華麺

永福町の駅を降り、井の頭通りの交差点に立つと、すぐ目の前の角に行列が見える。道路越しにスープの匂いが漂ってくる。煮干しをメインにした醤油のスープだ。最初に訪問したのは何年前だっけな。たぶん下北沢に住んでいた20代の頃だろう。味がどうこうよりも「すごく熱いらしい」という噂を聞いて出掛けていった。実際、熱かったねえ。火傷したよ。翌日、口ん中の天井の皮がペロンと剥けるんだ。だが、それがいい

そんな話だけ聞くとひどいラーメンのようだけど、この味は本当にうまい。というか完璧におれの好み。自分にとってのキング・オブ・ラーメンがこれ。熱くて、醤油味で、煮干しダシ。

永福町大勝軒の丼はとにかく巨大なことでも知られている。冗談でなく洗面器レベル。そこへ麺が2玉入ってる。1人前なのに2玉。初めて行ったときは、少食だったこともあって食べきれなかった。最後の方はちょっと麺を残したっけな。スープなんか半分も飲めない。熱いのは平気なんだけど、なにしろ量があるからね。「このスープ、こんなにうまいのに飲みきれなひぃ! でも、残して帰るのはもったいなひぃぃ!」と、いつも後ろ髪を引かれる思いで店を出ることになる。

このバカみたいな量と、表面に浮いたラードのせいでいつまでもスープが冷めないという(マグマ舌のおれにはありがたい)効果があるわけだが、そのぶんお値段も1050円と、およそラーメンらしからぬ高額設定になっている。せめて小盛りがあればなあ、と思わないでもないが、創業者・草村賢治氏の哲学がそうさせているんだから、文句を言ってもはじまらない。そして、この不満はのれん分けした支店が解消してくれたりする。どういうことかは、おそらく「ラーメン男」カテゴリで次に書くであろうエントリに続くのだった。

それから念のために言っておくと、日本に「大勝軒」というラーメンチェーンは2種類あって、この大勝軒は「永福町系」。もうひとつは、もりそば(つけ麺)を考案した山岸一雄さんの「東池袋系」。でも、そっちには全然興味ないんだ。不味いわけじゃないけど、食の好みだからこればっかりはどうしようもないよね。