第2湯目「ゆートピア21/葛飾区29番」

さて、2軒目の銭湯だ。今度はどこへ行こうかと考えて、風呂あがりの酒場から逆算して場所を決める。せっかくの湯上がり極楽気分を、つまんない酒で台無しにしたくない。となると、もう思い当たるのはアソコしかない。自分にとってあらゆる点で文句のつけようがない酒場。亀有の「江戸っ子」だ。

亀有ってことは……と、「湯めぐりマップ」をめくってみると、北口を出てちょっと歩いて環七を渡ったところに「第一日立湯」ってのがあった。よし、ここにしよう。マップをよく確認せずにすぐ決めちゃった。これがいけなかった。気が短いのは自分の悪い癖だ。銭湯の前まで行ったら真っ暗だよ。定休日だったのね。

でも、「湯めぐりマップ」さえあれば心配はいらない。他に近所の銭湯を探せばいいのだ。江戸っ子に着くまで湯冷めをしないで済むぐらいの距離のところは……と探して、駅の反対側に「ゆートピア21」っていうのがあった。ここはあれだ、亀有MOVIXへ映画を見に行くときいつも前を通るところじゃないか。

不思議なもんだよね。これまで何度も前を通っていたときにはまったく興味を引かれなかったのに、ひとたび自分の中で「銭湯スイッチ」が入ってしまうと、いきなりその店構えが輝いて見えはじめるんだから。ようするに、ものごとを“見る”っていうのは目が見るんじゃないんだね。心が見てるんだよなあ。……なーんてことをツラツラ考えながら、「ゆートピア21」さんの暖簾をくぐる(暖簾ないよ!)。

ちなみに、おれがカバンに常備している銭湯セットは、ごく普通の「タオル」と「石鹸」ひとつ。とりあえずこれだけをコンビニ袋に入れている。シャンプーなんていらない。頭は石鹸で洗っちゃうんだもん。ヒゲは家で風呂はいったときに剃ればいい。他に必要なものがあるとしても、それは銭湯通いをしているうちにわかってくるだろう。ただ、二日続けて銭湯に来て服を脱いでいるとき、重大なことに気がついた。

おれ、一昨日から同じパンツ履いてる!

そうなのだ。家では替えの下着を用意してから風呂にはいっていたので、毎日、新しい下着に着替えていた。ところが、仕事場から銭湯へ出掛けて行くときはわざわざ替えの下着なんか持っていないので、風呂あがりにまた同じ下着を身に着けることになる。でも、風呂で身体を洗って清潔になった気はしてるから、家に帰ってそのまま寝ちゃうんだよね。で、翌日も同じ下着のままで外出してしまう、と。

この調子で銭湯通いを続けたら、おれはずーっと同じパンツを履き続けることになるじゃないか!

それはいけない。なんとかしなければ。でも、カバンにパンツ入れて歩くのってなんかイヤだしなー。いい方法ないかなー。いっそ使い捨ての紙パンツかなんかを……。