第8湯目「石川湯/世田谷区2番」

今日は借りていたDVDの返却日なので、帰りに亀有のTSUTAYAに寄ろう。亀有に行くなら、ついでに江戸っ子でもつ焼きを食っていこう。そのためには店(マニタ書房)を6時には閉めなきゃなあ……なんてなことをつらつらと考えていた。ところが、店番しながらfacebookをながめていて、あっ、と思った。

話は前日にさかのぼる。

2月12日、新宿ロフトプラスワンで開催されたトークイベント「日本最速試写つき!タランティーノ監督『ジャンゴ 繋がれざる者』公開記念イベント〜情無用の血斗ナイト〜」を見に行ってきた。そこに特別ゲストとして、まさかのタランティーノ本人が登場したのはネットのニュースにもなったので、ご覧になった方も多いかと思う。

シネマトゥデイクエンティン・タランティーノ、新宿にサプライズ登場!ファンからタラコールの嵐!


高橋ヨシキ氏のリデザイン&改題による『鎖無用のジャンゴ』ポスター。

おれさー、せっかく整理番号40番という確実に座れそうなチケットを持ってたのに、余裕ぶっこいて歌舞伎町の立ち飲み屋で串カツなんか食ってたのよ。それで、はっと気がついたときにはもう開場後10分経過。あわててロフトに行ったらもう場内満席ね。座るところなんかない。ふと見ると、通路脇のテーブルに友人たちが陣取っていたので、その端っこにちょこんと混ぜてもらった。この位置からはステージが全然見えないけど、自分がわるいんだから仕方ない。

そうこうするうちにイベントが後半に突入し、スペシャルゲストのタラさん登場。約40分ほど喋ってましたかね。ものすごい盛り上がった後、すみやかに退場。このとき、通路脇の丸椅子に座ってるおれのすぐ横を通るわけですよ。入場のときは呆気にとられてた(というか「そっくりさん?」とか呑気なことを考えてた)けど、退場のときは瞬時に判断して立ち上がり、タランティーノ監督本人に握手してもらっちゃいましたよー。よー。よー(余韻)。

この日は終演後の打ち上げに顔を出すのは遠慮して(だってタラ監督がいるかもしれないし、そんなところにまでクビを突っ込むのは図々しいだろうと思ってね)、やはりイベントを見に来ていた喜久盛酒造の藤村社長とゴールデン街の某スナックに入り、しみじみと飲んでたんだな。そしたら、そこへ柳下毅一郎さんが来て、高橋ヨシキさんも来て、しまいには町山智浩さんまでやって来た。なんという奇遇か!(そのとき興奮して、3人と飲んでることをツイートしたけど、おれのツイートを読んだ友達はみんな「本当はタラ監督もいるけど伏せてるんだな」と思ったらしい)。

いやー、たのしいよるだったなー。と、散々自慢話をしておいてナンだけども、ここまでの話は本題にはまったく関係ない(ズルッ!)。

いやいや、ま、ちょっとは関係あるんだ。ようするに、この日をきっかけに高橋ヨシキさんとけっこう仲良くなったので、本当は行くつもりのなかった翌日のトークイベント「メルマ旬報 映画班オフ会〜 高橋ヨシキ×柴尾英令×木村綾子」にも顔を出してみる気になった、というわけ。facebookでヨシキさんが告知してるのを見て、よし、やっぱり行こう! って思ったんだ。しかも、お相手を務めるのが自分にとって旧知の仲である柴尾さんだしね。この二人、それぞれ大変な映画狂でありながら、アプローチはかなり違う。そんな二人がぶつかり合うとどんな化学変化が生まれるのか、それも楽しみだ。

場所は下北沢「B&B」。となると……と、ここでいつもの「湯めぐりマップ」が登場。例によって最終目的地から逆算して銭湯を探し、東北沢の「石川湯」というところに目標を定めた。

東北沢の駅を出て、住宅地の暗がりをトボトボ歩くこと数分で着いてしまった。ご覧のように、外観はあんまり銭湯っぽくない。ここで言う“銭湯っぽさ”っていうのは、おれの幼少時(昭和40年代あたり)の銭湯っていう意味で、いまの若い人にはこの石川湯でも十分銭湯っぽく見えているのかもしれないが。

東京の銭湯は一律450円。用意しておいた小銭をじゃらりと番台に出す。すっかり慣れた手順で服を脱ぎ、石鹸箱と手ぬぐいを持って浴場へ。身体を洗って湯船につかって、さあ、のんびり壁画でも眺めよう……と視線を上げて驚いた。

ここ、壁画ないのな!

いや、正確にはある。あるんだけど、いわゆる浴場の正面(湯船の背後)の壁には何もないんだ。そのかわり、女湯との間の壁にA2サイズくらいの小さい富士山の絵が2枚飾ってあるの。なんかヘン! でも愉快! こういう変化球、嫌いじゃないよ〜。

風呂は泡風呂とジェットのふたつ。ただ、泡風呂の方はいつも固定なのではなくて、泡風呂、薬草湯、漢方湯といったスタイルをちょいちょい入れ替えで実施するらしい。おれは効いてんだか効いてないんだかわかりにくい薬湯より、ダイレクトに気持ちよさの伝わる泡風呂の方が好きなので、泡の日に当たってラッキーだったな。

そして風呂あがり。夜風に吹かれながら、いい気分で下北沢まで歩くと、ちょうどトークイベントの始まる時間。「B&B」で当日券を買い、ワンドリンクを受け取って客席に向かうと、知った顔が何人も来ている。火照った身体に生ビール。濃厚な映画トーク。気の合う友達との談笑。おれは本当に幸せな毎日を送っているなあ。