ナニワのオッチャン弁護士を集めたい 

大阪に坂和章平という人がいる。通称:ナニワのオッチャン弁護士。

この人、ヒジョーに映画が好きで、本業(弁護士)の合間にひたすら映画を見ては、その感想をコツコツとブログに書いたりなんかしている。最初の頃は個人的な日記に書いていたんだと思うけど、いまはブログ形式でご自身の映画評論を発表し続けている。

弁護士としてはたいへんなキャリアをお持ちで、それに関する著作もたくさんあり、そっち方面では十分に成功を収めたと言ってよいだろう。

ところが、映画評論家になりたいという夢が忘れられず、書き貯めた映画の感想を『SHOW-HEY シネマルーム1 〜二足のわらじをはきたくて〜』というたいそう正直なタイトルで出版してしまった。出版といっても自費出版なんだけど。

おれみたいに、連日、全国各地のブックオフを巡っていると、日本の出版文化のいろんな面が見えてくる。そのうちのひとつが“自費出版の本は薄い”ということだ。そりゃそうだよね。プロだって原稿書くのはメンドくさくて嫌なもんだ。編集者に尻を叩かれなければ、いつまでたっても書きゃしない。出来ることなら、予定枚数の半分ぐらい書いたところで本にしちゃいたいぐらいだ。だから、担当編集者もついておらず、一刻も早く“自分の著書”を手にする喜びを味わいたいアマチュア著者の自費出版物は、どうしたって薄くなってしまう。

……というようなことが、ブックオフめぐりをしていればアリアリとわかってしまう。だって自費出版で有名な文芸社新風舎、日本図書刊行会といったあたりの本は、軒並み薄いんだもの。

ところが、坂和章平先生に限ってはこの法則が当てはまらない。たしかに、最初に私家版として上梓した『SHOW-HEY シネマルーム1 〜二足のわらじをはきたくて〜』こそ厚さ5ミリ程度のものだったが、先生は映画に対する情熱がハンパないので、1冊本にしたぐらいではその情熱がおさまらない。書いても書いても書き足りない。本業だって激務であるはずなのに、ヘタなライターよりも執筆活動に力を注いでしまう。そうして書き上げた映画レビューをギュギュッと詰め込んで、さらに続刊を出し続けていく。結果、出来上がったのは、とても自費出版とは思えない厚さの本なのだ。

ブックオフで物差しをアテるわけにもいかないので正確なところはわからないが、だいたい3センチくらいある。さすがに京極夏彦先生には負けるけど、作家専業ではない人の出版物として、これは異例なほどの束(ツカ:本の厚みのこと)だ。しかも、ハードカバーにするなどして本の厚みを底上げするようなこともない。正真正銘の3センチ。

そして、さらに恐ろしいことには、これが2冊や3冊の話ではないということだ。

普通、アマチュアの場合は「生涯に1冊でも本を出せれば……」という人生の記念碑的なニュアンスで本を作るので、1冊出したところでだいたい満足してしまう。ところが、坂和先生はまったく飽きるということがない。2冊、3冊、4冊、5冊。まだ飽きない。6冊、7冊、8冊、9冊。まだまだ飽きまへんでぇ〜。第2巻から以降は、書名を『ナニワのオッチャン弁護士、映画を斬る!』という大変に威勢のいいタイトルに改題し、「SHOW-HEY シネマルーム」シリーズは2013年3月現在までに、なんと29冊も刊行されているのだ!

ナニワのオッチャン弁護士、映画を斬る! SHOW-HEYシネマルーム21

ナニワのオッチャン弁護士、映画を斬る! SHOW-HEYシネマルーム21

▲21巻の表紙では、著者の還暦を祝っている!

この『SHOW-HEY シネマルーム』シリーズ、あまり一般の書店で見かけることはないと思う。それは仕方のないことだ。だって自費出版だもんね。

ところが、ブックオフめぐりをしているとアッチャコッチャで見かけるんだな。さすがに都内では、4〜5軒まわってようやく1冊見かける程度のものだけど、オッチャンの本拠地である大阪へ行くとものすごいよ。とにかく、どこのブックオフに行っても必ずと言っていいほど在庫がある。おまけに判型が大きく、1冊がブ厚いわけだから目立ってしょうがない。それが同時に何冊も並んでいるもんだから、大阪のブックオフの棚で異様な迫力を放っているのだ。

集めてぇぇぇ〜! でも、場所とる〜。