名古屋市内ブックオフ支店全制覇ツアー その8

高級ホテルにでも泊まるならともかく、安いビジネスホテルの朝食なんて味気ないものだ。だから、一人旅でホテルに宿泊するときは、必ず“素泊まり”にする。食事を摂るときは外へ出る。そうすることで、土地の名物や、おいしいもの、変わったものを食べる機会を一食でも増やしたいのだ。

さて、名古屋で迎える3日目の朝。行動開始の前にまずは朝ごはん。今日は何食べようかなー。

と、迷ったフリをしつつ、もう決めてある。それは、きしめんのリベンジだ。前日食ったきしめんがさー、塩っ辛いばっかりでちっともうまくなかったんだよねー。名古屋まで来ておいてそれはないよ。なんとかうまいきしめんを食べなきゃトーキョーにゃ帰れねえ! と決意した名古屋の朝なのだ。

向かうはJR名古屋駅。ここのホームの立ち食いきしめんが、たいへんうまいと評判なのは、おれもアメトークを見て知ってた(詳しくはこちらのブログを参照のこと)。そこで、まず最初に訪ねたのは、14-15番線ホームの「住よし」だ。もちろん、注文するのはプレーンな「きしめん」。

あれ……?

なんか満足できないので、もう一軒にも行ってみる。今度は3-4番ホームの「住よし」だ。ここでもきしめんを注文する。で、やっぱり「あれ……?」となった。

どういうことだ、これは。

まあ、そんな大袈裟に言うほどのことじゃないんだけどね。答えは、すぐに予想がついた。

おれにとって「きしめん」といったら、下北沢一番街の「広栄屋」が最高なのだ。ここのきしめんがいっぺん死んで生き返るほどうまい。ダシがとても効いていて、汁がとても熱い。ほとんど湯通しをしていないそのまんまの油揚げがフカフカしている(関西風の甘辛く煮染めた油揚げは好きじゃない)。大胆にオゴった鰹節も湯気の中で踊っている。つゆがドンブリに並々と注がれているので、おばちゃんがASIMOみたいなポーズで運んでくる。どの側面から見ても、チリひとつ文句の付けようがない。

だから、世界中のあらゆるきしめんを、おれは広栄屋を基準にして考えてしまう。そんなことは名古屋の方々からすれば言い掛かりも同然だろう。たしかにその通りだ。でも、しゃーないよ。おれはコッチの人であって、ソッチの人じゃないんだもんね。きしめんに関しては、本場の味は(あくまでも自分にとって)無用、という結論が出た。

ミもフタもない結論が出たところで、ホテルへ戻って身支度を整え、チェックアウトする。そして車庫からクルマを出して清算を済ませ、いよいよツアーの最終行程に取り掛かるのだった。

その9へ続く)