第四話 鬼ごっこの終わるとき

第一話「2001年リアル初版探しの旅

第二話「ゾンビとの鬼ごっこを観る前にブックオフで鬼ごっこ

第三話「4年越しでリアル初版探しに王手をかけた!

このところ、古本屋のヒマヒマ店主である自分にしては珍しく忙しい日々が続いていた。それは無理もない。マニタ書房はヒマでも、ライター業の仕事が最近増えてきたことと重ねて、亡き妻の三回忌法要(10/27)、マニタ書房開業一周年記念パーティー(10/28)、トークライブ攻略本大博覧会(11/3)、文学フリマ出店(11/4)、古本ゲリラ主催(11/10)……といったように、様々なイベントの準備が立て続けにあったからだ。

しかし、古本ゲリラを無事に終えたことで、それらの波もいったんは過ぎ去った。まだ、いくつかの連載原稿はあるし、ムック本の制作もしている。12/3にはとみさわメインのトークライブも控えている。だから完璧にヒマになったというわけではないが、半日くらいなら時間がとれそうだということに、今日の朝になって気がついた。

えーい、ブックオフ行っちゃえ!

これまでに自宅周辺の千葉、茨城、東京のすべてと、埼玉の一部のブックオフは踏破してきた。神奈川方面にはまだゴッソリ未踏の支店が残っているのだが、あいにく神奈川は家から遠く、なかなか遠征する時間がとれずにいた。でも、今日なら行ける!

というわけで、松戸から千代田線〜小田急線と乗り継いで「新百合ケ丘オーパ店」。さらに小田急江ノ島線で鶴間まで行って「大和西鶴間店」。続いて中央林間から田園都市線で「大和つきみ野店」と「横浜あざみ野店」を訪ねるというルートを組み立てた。これなら、あとは田園都市線から半蔵門線への乗り入れでまっすぐ神保町へ帰れる。

結局、帰りの途中下車で寄った「246三軒茶屋店」も含めると5軒まわって18冊の本を買ったことになるのだが、そのうちの大和西鶴間店で感動的な発見があった。結論を先に言おう。

リアル鬼ごっこ』の初版をついに見つけたのだ!

見つけた瞬間のことを詳しく書いておこう。

文芸書の105円棚、山田悠介先生のコーナーには、『リアル鬼ごっこ』の在庫が2冊あった。それをまとめてつかんで引き出す。おもむろに開いて奥付を確認する。1冊目は8刷。このとき、心の中で「お、ひと桁……」とつぶやく。これ、刷りの数がひと桁の『リアル鬼ごっこ』を見つけるたびに毎回つぶやいている。9刷のものを見ては「へえ、ひと桁……」とつぶやくし、2刷のものなら「ナイスひと桁。でも、すでに持ってるなぁ……」とつぶやき、6刷なら「このへんのひと桁はいちばん見かけるな……」とかとかとか。思えば、おれのリアル鬼ごっこ初版探しの旅は、この「ひと桁」の大小を行ったり来たりする旅だったのだとも言える。

そして、もう1冊の奥付を開いた瞬間、そこに「初版第1刷発行」の文字があった。探そうと決意してから4年かかったとはいえ、いざ出会ってみればとても呆気ないものだった。

さて、ようやく手に入れた初版だが、それでは2刷と初版ではどこか違うのだろうか? 本当に初版だけは先生のピュアな文体が眩しく、神々しい独特の輝きを放っているのだろうか?

結論はノーだ。2刷と初版を総ページ数で比較しても、どちらも325ページと同じ。各章の目次もページにズレはない。問題の「二人が向かった先は地元で有名なスーパーに足を踏み入れた。」という文章も同様だ。したがって、編集者によって磨かれる前の先生の原石のような文章は、何も初版を求めなくとも2刷で味わうことが出来ていたのだ。

でも、いいんだ。

この旅も今日で終わり。

もう、おれは山田悠介先生の背中をタッチした──。

リアル鬼ごっこ (幻冬舎文庫)

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