大阪・なんば、味仙の担仔麺

今年の5月に大阪へ行ってきた。千日前にある味園ビル内「紅鶴」でトークライブに呼んでいただいたからだ。まあ、その話は別の機会にするとして、せっかく大阪まで行ったのだから、仕事のついでにその土地ならではのラーメンを食べておきたい。ぼくの脳と胃袋は、常にそう考えるようになってしまっている。

名古屋には、味仙(みせん)という中華料理屋があって、そこの店主が発明したという台湾ラーメンが気絶するほどうまい(自分好み)という話は以前書いた。それ以来、台湾ラーメンのトリコになったぼくは、日本各地で「台湾ラーメン」を名乗っているものを食べ歩いたりしているのだが、最初に食べたアレに敵うものは一杯も見当たらない。やはり名古屋の味仙じゃなきゃダメなんだ! と、やはり別件で大阪へ出かけたときに、わざわざ帰京の新幹線を名古屋で途中下車したほどだ。

ところが、そこでぼくは失望した。そのときは名古屋の今池本店で台湾ラーメンを食べたのだが、最初に食べて感動したあの味とはまるで別物だったからだ。「味仙の台湾ラーメンは支店によって味が違うらしい」とは、きいていた。それでも、本店なら矢場店よりさらにおいしいに違いないだろうと、無意識に思い込んでいた。ところがそうではなかった。これ、わりと衝撃的でしたね。そうか、単に矢場店の味付けがぼくの好みにドンピシャリだっただけなのかー。

それ以来、ちょっと気持ちが冷めてしまって、台湾ラーメンを過剰に追求する気持ちはなくなってしまった。

で、ここで話は最初に戻る。5月に大阪へ行きまして、なんば周辺に何かうまい麺はないものか……とジタバタしていたところ、ぴあ関西のWさんから「味仙(あじせん)という店の担仔麺がうまいですよ」と教えていただいたのだ。ぼくは基本的にうまいものの情報を他者から提供されても、それに素直に従うことはない。味覚なんて人それぞれで、誰かがうまいと思ったものでも、それをぼくが同じようにうまいと感じる保証はまったくないからだ。

それでも、そのときは気まぐれで行ってみようと思った。他に行きたい店もなかったし、読みは違うけど「味仙」という店名が大阪にもあるのがおもしろいじゃないか。

店は心斎橋にもあるが、なんばこめじるしのところにも「なんこめ店」という支店がある。泊まっているホテルからはそちらが近い。夕方6時の開店に合わせて店に行き、一番乗りの客として「担々麺」を頼んでみた。

食べ終わってボーッとしてしまった。うますぎた。カンッッッペキに好みの味だった。スープは台湾風(?)のあっさりした味で、ラー油がピリリとした辛さを引き受けていて、ひき肉がコクを加える。スープの表面に散っているネギのようなものは、細かく刻んだセロリだ。これがシャクシャクした歯ごたえで、とてもいいアクセントになっている。ぼくは大阪へ行ったときはいつもなんばを拠点にするので、これはもう毎回ここで一食とることが決定だ。