発表!アーカイブック2016

2016年も終わりだねえ。今年もたくさんの著名人が亡くなりまして、とくに自分に限って言えば、憧れのスターはもちろん、友人や知人も何人かあの世に行ってしまった。悲しいことだけれど、齢を重ねるということは、そうした別れの機会が加速するということだ。「2016年はもう終わりかよ!」って文句が言えるのは自分が生きている証拠だから、まあ、いま生きていることを喜ぼう。

さて、前回提唱したアーカイブックという言葉。これは「何らかのコレクションをまとめた書物」、あるいは「何らかの蒐集家がコレクションについて書いた書物」のことで、そういうもんばかり買ったり読んだりしてるぼくが、それらの年間ベストを毎年発表していくという活動(ただの趣味だけど)で、いよいよ2016年度ベスト・オブ・アーカイブックの発表です。

……と、その前にここで自分がこれまでに書いてきた本をちょっと並べてみる。

底抜け!大リーグカードの世界―「珍プレイ&超絶プレイ」コレクション
人喰い映画祭 【満腹版】 ~腹八分目じゃ物足りない人のためのモンスター映画ガイド~
人生のサバイバルを生き抜く映画の言葉
無限の本棚

見事にアーカイブックばかりなのねん。つまり、ぼくは自分自身がアーカイブックな人生を歩んでいるということ。これが何かを意味しているかといえば、とくに何も意味はない。このベスト・オブ・アーカイブックは、ただ自分が楽しいからやっている。それでいいのだ。

というわけで10位から発表!

■10位『中国遊園地大図鑑 北部編』

中国遊園地大図鑑 北部編 (中国珍スポ探検隊)

中国遊園地大図鑑 北部編 (中国珍スポ探検隊)

出版をやめたら死ぬ靴を履いた男・ハマザキカクがプロデュースする過剰な図鑑は、2016年も恐ろしい勢いで出版点数を重ねていった。なかでも話題を呼んだのが、この『中国遊園地大図鑑 北部編』。かの国の著作権意識がヤバイのは皆知っていたが、まさかここまでとは。

■9位『デスメタル インドネシア

デスメタルインドネシア: 世界2位のブルータルデスメタル大国 (世界過激音楽)

デスメタルインドネシア: 世界2位のブルータルデスメタル大国 (世界過激音楽)

これもまたハマザキカクの手による過剰図鑑の1冊(正しくは「世界過激音楽シリーズ」という)。昨年はアフリカにもデスメタルがあることを知らしめたが、今度はインドネシアである。しかもアフリカを大幅に上回る350ページ超という重厚さ。大統領までもがデスメタラーってどういうことなのか。

■8位『珍盤亭娯楽師匠のレコード大喜利

全国各地のDJ現場はもちろん、今年はTBSラジオ伊集院光とらじおと「アレコード」コーナーでも大活躍した娯楽師匠の珍レコアーカイブック。見たこともないレコに驚かされたり、自分の秘蔵盤が載っていてニンマリしたり、ああこれでまたこのレコの相場が上がる…と焦らされたり、いろいろ忙しい本である。

■7位『東京レコ屋ヒストリー』

東京レコ屋ヒストリー

東京レコ屋ヒストリー

レコード屋の誕生からその盛衰と衰退までを、歯切れのいい文章で謡い上げている壮大なレコ屋絵巻。「レコードを買うという行為はじぶんの意思を買うのといっしょだ」という著者の言葉に深く頷く。

■6位『共産テクノ(ソ連編)』
共産テクノ ソ連編 (共産趣味インターナショナル)

共産テクノ ソ連編 (共産趣味インターナショナル)

意外なところに意外な音楽。こういう本を見ながら気になるアーティスト名をYoutubeで検索して、すぐに聴くことができる。いい時代になった。ちなみに、共産圏+テクノとして忘れてはならないのは『テトリス』だ。あれこそ究極の共産テクノ。

■5位『モダンガールのすスゝメ』

モダンガールのスヽメ

モダンガールのスヽメ

大正百五年(2016年)発行の本書もめでたくランクイン。ご本人はコレクションのつもりはないと思うが、生き方を丸ごと大正時代にゆだねるカヨさんの姿には圧倒される。

■4位『タイポさんぽ(改)』

タイポさんぽ改: 路上の文字観察

タイポさんぽ改: 路上の文字観察

味わい深きタイポグラフィを求めて町の看板を渉猟する。そんな趣味をもつ者は多いが、本書の著者は現役のグラフィックデザイナーでもあり、そのデザインの分析は的確で、視点も確か。続刊の『タイポさんぽ 台湾をゆく』もまたよし。

■3位『痴女の誕生』

痴女の誕生

痴女の誕生

イヤラシイことをしてくれるおねえさんの歴史を詳細に綴った貴重な資料。アダルトビデオの登場以降に話を絞ってあるので、とてもわかりやすい。安田氏の次作は「巨乳史」を追ったものだそうで、これまた読むのが楽しみだ。

■2位『東京レコード散歩』

名うてのレコードアーカイヴァー鈴木啓之が、昭和歌謡を切り口に東京の街々を45回転で歩きまわったお散歩ガイド。出版後、本書をベースにしたコンピレーションCDも3枚同時発売され、その素晴らしすぎる展開は、自分のことのように嬉しかった。

■1位『ブラック アンド ブルー』

2016年度ベスト・オブ・アーカイブックの第1位に輝いたのは、特殊漫画大統領・根本敬先生が古今東西の名盤ジャケットを独自の解釈でリメイクした作品集『ブラック アンド ブルー』。レコジャケ原寸での収録も圧倒的なのだが、ここに掲載されている作品は描いたそばから展示会で売りさばかれているので、本人の手元にほとんど残されていないという事実。「チンポが乾く暇もない」という諺があるが、根本先生の「乾いた絵の具に興味はない」と言わんばかりの前のめりな姿勢に大きな拍手を送りたい。

アーカイブックという分野を振り返ってみると、昨年は本の雑誌社が活躍した年で、今年はパブリブ──すなわちハマザキカク氏が踊り続けた年だったな、という印象がある。タモリ倶楽部にもDOMMUNEにも出てたしな。さて、来年はどんなアーカイブックが出てくるだろうか。そしてぼくが準備中の本(これもアーカイブック的な側面がある)は来年中の発売に間に合うのだろうか……!