ブックオフツアー銚子編

 7年ほど経営していたマニタ書房を2019年の4月末に閉店して以来、古本の仕入れツアーをすることはなくなっていた。ぼくが古本の仕入れといったら、それは「ブックオフめぐり」であることは、とみさわ昭仁を知る人ならばわかっているはず。

 閉店後も個人的な趣味でブックオフに行くことはあるが、それは仕事で都内を移動している途中にあればちょっと覗く、という程度のものだ。そして、それらの店舗はすでに訪問済みの支店ばかり。だから、日本一ブックオフに行く男の踏破記録は「552店舗」で止まっていた。これが増えることは、今後はそうないだろう。

 と思っていたのだが、ふと思いついたことがあった。

 かつて頻繁にブックオフツアーをやっていたとき、ときどき支店の近隣移動があることに気づいていた。あるブックオフの支店が、これまであった店舗を閉鎖する。それとほぼ同時くらいのタイミングで、少し離れた場所に新店ができる。近隣移動は同じ市内、同じ地区内であることが多いので、店名は以前のものを引き継ぐか、あるいは少し違うが似ているものだったりする。

 ぼくのブックオフ・マイルールでは、店舗が移動しても店名が変わらない場合は同じ店として扱うが、店名が少しでも変わったのなら、それは別の支店としてカウントする。であるならば、訪問しないわけにいかない。

 それが遠方の都市では、「仕入れ」という大義名分がなくなった今、カウント数を稼ぐためだけに旅立つのは気がひけるが、都内、あるいは住まいのある千葉県内なら出かけていってもいいんじゃないか? そんなことを思いついたのである。

 ざっと千葉県のブックオフを調べたところ、2013年1月27日に訪問済みの「BOOKOFF四街道和良比店」が、移転して「BOOKOFF四街道店」となっていた。明確に名前が変わっているので、ここはぼくにとって未踏の地だ。行かなければならない。

 ついでに、と言ってはなんだが、銚子の先っちょの方にいつのまにか「BOOKOFF PLUS 銚子店」という新店がオープンしているのも知ったので、これも訪問しておこう。というか、これこそ第一目標にすべきだろう。

 というわけで、さっそく出かけてきた。自宅のある松戸市から銚子までは、高速を使わず一般道だけで行けば約3時間半。そこで6時に家を出た。ブックオフの開店は10時なのに、なぜ30分も早く着けるように家を出たのかは理由がある。

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寺子屋 吉田書店

 成田街道の途中にあった「吉田書店」という店。看板に「書肆(しょし)」の文字が見えたので古書店だと気付いたのだが、一般営業はしていないようだった。帰宅後に調べたところ、現在は寺子屋として地域資料の展示や勉強会の場に使われているとのことだった。

 さて、最初の目的地に到着。9時半の到着を目指して出発したのは、この銚子駅前にあるリサイクルショップが9時半オープンだからなのだった。途中、数カ所で渋滞にあったので、実際に着いたのは10時頃だった。

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リサイクル・アースマインド

 事前の調査で、ここは地元民のためのごく普通のリサイクルショップで、レコードや古本などは扱ってなさそうなことはわかっていたが、予想通りだった。ガッカリ……と言いたいところだが、この程度のことでいちいち失望していたらコレクターなんかやっていけない。さっさと気持ちを切り替えて次へ進む。

 が、まだブックオフへは行かない。

 6時に出発して車内でサンドイッチなど食ってきたが、さすがに腹がへっている。で、ちょうどこんな時間に店が開くラーメン屋の目星をつけてあるのだ。その名も「中華ソバ 坂本」。「そば」じゃなくて「ソバ」なのがいい。

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ラーメン 450円

 一見、何の変哲もない醤油ラーメンだが、少しだけ変哲がある。

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表面張力

 まず、スープが丼のフチまでギリッギリ入っている。非常にすっきりとした美味しいスープなので、量が多いのはありがたいけれど、こんなに振舞ってくれなくてもよい。あと、ナルトが2枚。これも地味に珍しいと思う。

 そして、思いっきり意表を突かれるのが、スープに浮かんでいた黒くて四角い物体。常識で考えればそれは海苔で決まりなのだが……。

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昆布! コンブ! COMBU!

 昆布なのだ。さすがは港町!(そういう解釈でいいのだろうか)。昆布だしが効いているのか、かなりあっさりながら、何とも深みのあるいいスープだ。麺も関東風の醤油ラーメンのものとしてごく標準的なもの。普通のうまさを再確認させてくれるラーメンだった。値段も良心的で素晴らしい。

 と、なかなかブックオフの話にならないまま、ここまで5枚も写真を費やしてきたが、ようやく本来の目的地である「BOOKOFF PLUS 銚子店」に到着した。

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BOOKOFF PLUS 銚子店

 謎のポーズは「犬吠埼 灯台」のつもりだ。これが普通のレポート記事なら、「では、いよいよ店内に突入してみたいと、思いま〜す!」なんつって店内の様子などをレポートするところだが、そういうことはしないし、店内も別に変わったところなどない。ブックオフはいつだってブックオフだし、それこそがブックオフのいいところでもある。そして、とくに収穫もないまま、ぼくは淡々と次へと向かう。

 いや、収穫はあった。踏破数がひとつ増えて全踏破数553軒という収穫が。

 次に向かうべきは、近隣移動して新店舗扱いとなった「BOOKOFF 四街道店」だが、その途中にある「BOOKOFF PLUS 126号旭店」にも寄っていくことにする。すでに訪問済みの支店ではあるが、好きな造形の店なのでその顔を見に行く、くらいのつもりで寄ってみた。

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BOOKOFF PLUS 126号旭店

 こちらでもまたとくに収穫はなかったが、それでもいい。しばらくの自粛期間を抜けて(万全の対ウィルス防御もしたうえで)再び古本がずらりと並ぶ棚を眺められるのは、とても幸せなことだと実感した。

 途中、回転寿司で軽く寿司をつまんだり、道の駅でソフトクリーム舐めたりしながら、四街道へ向かう。

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ジャガーさんのステッカーを買った

 これまでのブックオフツアーは、1日に8軒とか回ることが多く、大変なハードスケジュールだった。のんびり休憩したり、景色を眺めたりする暇のないのが常だ。もちろん、それを喜びと感じてやってきたわけだが、今回みたいに最初から3軒しか回らないと決めてのんびりドライブするのは、これはこれでいいものだな。

 と言ってるうちに着いた。「BOOKOFF 四街道店」である。

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BOOKOFF 四街道店

 謎のポーズは、四街道のゆるきゃら「よつぼくん」のつもりである。

 こちらでは、以前から読みたかった小説の文庫を数冊購入した。表紙やタイトルをお見せすると、作家の知人関係に差し障りがあったりするので割愛させていただく。なお、最初に書いた通りここも初訪問ということになるので、これにてぼくのブックオフ支店の全踏破数は554店舗になったことをご報告しておく。

 というわけで、急遽、実施してきたブックオフミニツアーだが、やっぱり楽しい。9月に刊行する予定の新刊の準備で今は忙しいけれど、それが終わったらぜひまたブックオフ巡りの旅に出たい。その頃には、もう少しコロナ禍も落ち着いているといいな。

 それまで待てない! もっとブックオフに触れたい! という人は、ブックオフの公式情報サイト「ブックオフをたちよみ!」が出来たので、それを読んで過ごすといいのではないだろうか。

bookoff-tachiyomi.jp