ブックオフをたちよみ!

2020年06月23日

 2019年の4月いっぱいでマニタ書房を閉めてから、近頃とんとブックオフには行かなくなってしまった。そりゃそうだ。なにせ本を仕入れる必要がなくなってしまったから。

 個人的にはいまも古本を集めるのは好きだし、ブックオフという場所にも愛着はあるので、今後も行くことは行く。だが、綿密にスケジュールを組んで、朝から未踏のブックオフを10軒ハシゴする、みたいな狂った旅をすることはもうないだろう。

 ……と、思っていたら、ブックオフから仕事が来た。ブックオフが公式で運営するサイト「ブックオフをたちよみ!」で、ブックオフ愛についてのエッセイを書いてほしいという依頼だ。そのエッセイはすでに掲載されているので興味のある方は読んでみていただきたいが、そのことを境にまた自分の中でブックオフ愛が再燃した。より正確に言うならば、「スタンプラリーとしてのブックオフ全店巡りへの意欲」が再燃してしまったのだ。

 ブックオフの全店リストは、公式サイトの店舗データからコピペして、独自のものをエクセルで作ってある。しばらくはそのリストを頼りにしていたが、いかんせん作成してからそれなりの時間が経っていて、データが古くなっている。ブックオフは生き物なのだ。売り上げの芳しくない店舗は閉店し、かわりに新しい店舗として統合されたりする。全体的にはトータルの支店数は減っているが、もし新しい支店が都内にできているのなら、それほどの時間と交通費をかけずに踏破数を増やすことができそうだ。

 調べてみると、東京都内に6店舗ほどの新しい支店が出来ていることがわかった。それらは従来の支店とは少し形式の違う「総合買取窓口」と呼ばれる店舗で、名称の通りお客様からの買取のための窓口が主な業務だ。それだけだったら、ぼくのブックオフ巡りに組み込む必要はないのだが、どの窓口も50冊から100冊ばかりの古本を置いている。それがブックオフとしてのアイデンティティなのだろう。

 たとえ少量でも、古本を置いているのなら、それはブックオフだ。ぼくが行かない理由はない。

 締め切りの谷間にポッカリあいた暇な日を利用して、「代々木上原駅前店」「経堂農大通り店」「用賀駅北口店」「中目黒店」「恵比寿南店」「広尾店」と6軒の「総合買取窓口」をまわってみた。これらの店の本棚をひと通りチェックてみて思うことは、「ぼくが欲しいと思うような本はない」ということだ。でも、それは無理もない。総合買取窓口は、あくまでも買取のための窓口なので、店頭の本棚に並んでいるのは小綺麗な写真集だったり、売れ筋のビジネス書だったり、ベストセラーになった文庫本といったものを中心に構成されている。つまり、店の雰囲気を盛り上げるインテリアなのだ。

 それでも古本である限り、その本が値段を付けられて、買える商品として並べられている限り、そこは古本屋であり、ブックオフであるのだから、ぼくは行かなければならない。冒頭では「近頃とんとブックオフには行かなくなってしまった」なんて言っておきながら、いつのまにか「行かなければならない」なんて言ってしまってるよ。懲りない男だおれは。

 ひとつびっくりしたのは、そんなお飾り本しか並んでいないはずのブックオフ買取窓口だったはずなのに、恵比寿南店に行ったら1冊だけ異質な本があったことだ。

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セドラー垂涎の1冊が定価の半額で!

 刊行後、即、絶版になってしまった村田らむさんのマボロシ本『こじき大百科』が、まさかブックオフで拾えるとは! やはり、古本屋に行かない理由なんて、ないのだ。