港のヨーコの港

2020年07月18日

 ぼくはレコードコレクターだが、集めているのは原則として7インチ(いわゆるシングル盤)だけ。

 なぜ、7インチを偏愛しているかというと、それがもっとも「好きな曲を所有している感じ」がするからだ。この気持ち、わかってもらえるだろうか。

 たとえば、坂本慎太郎に『ナマで踊ろう』という曲がある。ぼくはこれが大好きなんだけど、この曲は同タイトルのアルバムの表題曲で、7インチではリリースされていない。だから、否応なしにアルバムを買ったのだが、いまいちうれしくない。アルバムでは、他にたくさんの曲が入っている中の1曲という扱いで、所有感が薄れてしまうのだ。

 じゃあ、ダウンロード販売ではどうかいうと、そんなの問題外。デジタルデータを買ったところで、所有感なんか1ビットも感じられない。やはり、溝の刻まれた盤で、ジャケットがついてなければ。物体としての手応えが欲しい。針を落としてクルクル回したい。

 7インチ、すなわちシングル盤は、好きな曲そのものだ。厳密にはA、B面あるから2曲ということになるのだが、まあ細かいことは言わない。好きな曲のタイトルがデカデカと印刷されたジャケットがあって、好きな曲の溝が刻まれた盤が入っている。これほどまでに好きな曲を「所有した」と感じさせてくれる物体はないだろう。

 だが、例外もある。

 先日、四谷アウトブレイクの無観客生配信で披露(2020年06月13日を参照)したように、ぼくにはいくつか集めているジャンルがある。好きな「曲」かどうかではなく、好きな「ジャンル」だ。その場合も、7インチで集められれば言うことないのだが、世の中そううまくはいかない。ある「ジャンル」を集めていくうえで、絶対に手に入れておかなければならない曲が、アルバムにしか収録されていなければ、そのアルバムを買うしかない。

 我ながら何とメンドクサイ性格だろうか!

 というわけで、最近買ったアルバムをご紹介する。もったいぶっても字数の無駄なのでズバッとお見せするが、西城秀樹のライブ盤『ヒデキ・オン・ツアー』である。

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辛さにこだわるジャワ原人

 ぼくはダウンタウンブギウギバンド(DTBWB)の『港のヨーコ・ヨコスカ・ヨコハマ』という曲が大好きで、DTBWBのオリジナルはもちろん、それのパロディーやカヴァー曲、パクリ曲を集めている。つまり「港のヨーコ歌謡」というジャンルである。そして、この『ヒデキ・オン・ツアー』には、ライブで秀樹が『港のヨーコ~』をパロッた音源が入っているのだ。もちろん、そんなものがシングルカットされているはずがないから、アルバムで手に入れるしかないわけだ。

 中古を安く手に入れたから、経済的な負担は軽い。だが、2枚組なので20曲も入っている。そして、ぼくが欲しかったのは、その中のたった1曲だけ。非常に効率が悪いけれど仕方ない。鬼にならなければコレクターは続けられない。