33 ターンテーブルとプノンペンそばとマドモアゼル朱鷺

2014年11月マ日 朝からあいにくの雨。だからというわけではないが、開業3年目にしてとうとうマニタ書房にも傘立てが導入された。といっても、標準的な傘を2本も挿せば一杯になってしまうごくコンパクトなものだ。もう少し大きなものにすることも考えたが、…

30 ファンコットとナスカジャンとドグラマグラ

※過去ログを遡っていただくとわかりますが、第30回(2014年8月分)が抜け落ちていたので、今月はそれをアップしておきます。 2014年8月マ日 白石晃士監督の新作『ある優しき殺人者の記録』を見に、日比谷シャンテ内にある東映試写室まで出かけていく。刃物…

32 ヘッドと天使と超芸術トマソン

2014年10月マ日 神保町の事務所に出勤したら、気持ちは原稿を書きはじめたいのだけど、まずはその前に前日までに仕入れておいた本のデータを帳簿に入力する作業を始めて、ウォーミングアップする。程よく指先と頭脳が暖まったところで店を開店し、自分はパソ…

31 古本トリオとてつ麿先輩と立川談豪

2014年9月マ日 早野凡平の『あゝお酒』という曲は、バラクーダの『日本全国酒飲み音頭』より2年も先に出ているが、そのコンセプトはまったく同じである。しかも、『日本全国酒飲み音頭』はご存知のように『ビビデ・バビデ・ブー』の替え歌だが、『あゝお酒…

29 ばむと幻のチンタマとアーカイブック

2014年7月マ日 ふと、疑問が頭に浮かぶ。「夏は暑く、どうしても汗ばむ」などと言うときの「ばむ」ってなんだろうか? と。 たとえば四季の変化で「春めく」と言えば、その「めく」は動カ五、すなわち動詞カ行の五段活用ということになる。では「汗ばむ」は…

28 横溝正史の世界と髑髏ベレーと映画のパンフ

2014年6月マ日 昨年でライター生活30年を迎えたため、12月に新宿のロフトプラスワンで「とみさわ昭仁30周年記念トークライブ〈蒐集100万年〉」を開催した。ぼく自身はそれで十分満足したのだが、DJ急行&セラチェン春山コンビが大阪でもやりましょうと言っ…

27 尾崎と竹中直人とブッコロールシャツ

2014年5月マ日 朝イチから八王子まで出かけて、駅の北口、西放射通りユーロードで展開されている古本まつりを見てきた。ここは自分と相性のいい古書市で、いつ来ても何らかの収穫があるのだが、今日は2時間くらいかけてじっくりワゴンを見て回ったが、これ…

26 消費税とメキシコ麻薬戦争とナスカジャン

2014年4月マ日 本日より消費税が5%から8%になった。まったく困ったもんだ。消費者としても、商店経営者としても、腹立たしいったらありゃしない。とはいえ、実際のところマニタ書房には関係なかったりする。なぜなら、うちは増税前も増税後も、一切、消…

25 山川惣治とピンカデリックとプリングルスの筒

2014年3月マ日 荒井由実の名曲に『海をみていた午後』がある。この歌詞の中に「山手のドルフィン」という店が出てくるが、これは架空の場所ではなく、神奈川県の山手と根岸の間に実在するレストランだ。中川右介の『角川映画』を読んでいたら、そのドルフィ…

24 BRUTUSと煙突写真と釣り人の群衆

2014年2月マ日 今月1日発売の『BRUTUS』は「手放す時代のコレクター特集」。企画段階から協力していて、ぼく自身もエッセイも寄稿しています。どのようなコレクション遍歴を経て「エアコレクター」の境地に辿り着いたのか? そんな感じの話を書きました。 …

23 山田風太郎と廃盤ビデオと万引きコーナー

2014年1月マ日 新年早々、早朝から公園にシケモクを拾いに行こうとする老いた父を引き止める。ヨボヨボのくせに握力だけはあって、つかまれた手の皮膚が裂けて出血した。 いまのところトイレも風呂も一人で済ませられるので、肉体的にはそれほど家族の手を…

22 古本ライターとやくざ者と浅田真央

2013年12月マ日 いまから4年前。復職して10年ほど勤めたゲームフリーク社との契約を解除して、またぼくはフリーランスに戻った。自ら進んでやったことではあるけれど、50歳を目前にしての再出発は難しい。ましてやおりからの出版不況で雑誌は激減し、ぼくに…

21 赤尾敏とリアル鬼ごっこと人喰い人種

2013年11月マ日 今日の閉店間際、やけに貫禄のある初老の紳士が店に来た。見るからにヤクザ、という風体ではないのだけど、あの貫禄は堅気ではなさそう。で、発した第一声が「ヤクザの本ある?」なのだ。 また都合がいいのか悪いのか、マニタ書房には「ヤク…

20 本の雑誌と安達祐実と蒐集100万年

2013年10月マ日 先月、かつて「週刊プレイボーイ」誌で編集長を務めていた島地勝彦さんの取材を受けた。氏が「月刊リベラルタイム」で連載している「ロマンティックな愚か者」という記事に、マニタ書房の店主であるぼくが取り上げられたのだ。自分で言うのも…

19 古本ゲリラの可能性とフリースタイルと神戸ツアー

2013年9月マ日 古本ゲリラは、みんなで古本を売ったり買ったりする行為がしたくて始めたイベントだけど、ぼくは自分でリアルな古本屋を始めて、実店舗まで持ってしまったものだから、もう古本ゲリラをやることはないだろうと思っていた。 けれど「またやっ…

18 攻略本の巣窟と伊勢うどんと美濃加茂盆踊り

2013年8月マ日 自分で店を始めてわかったことがひとつある。それは「ドアを開けておくと虫が入ってくる」という事実である。虫といっても、このビルは飲食店が入居しているわけではないのでゴリブリ的なやつは出没しない。せいぜいが蚊とか小さな蛾のような…

17 折りたたみ自転車と珍生相談と博士年表

2013年7月マ日 都内でブックオフ巡りをする際の機動力を上げるために、折りたたみ自転車を買った。なるべくコンパクトに折りたためるやつがいいなと思って、選んだのはSNSで教えてもらった「CARRY ME」。 ネットで写真を見て、これはぼくが求めていたちょう…

16 怪しい店と古本珍生相談と無看板営業

2013年6月マ日 ぼくらが子供の頃、町内に一軒くらいは怪しい店があった。見た目はごく普通の古本屋っぽいんだけど、店の一角にちょっと肌色が目立つ雑誌なんかが置いてあって、子供が近寄ろうとすると店のオババに「そこの本は触んな!」とか怒られる。当然…

15 裸で覚える竹熊さんとビッグダディ

2013年5月マ日 朝から雨降り。こんな日にわざわざ古本屋巡りをする人も少ないだろうから、店は開けずに家でおとなしく原稿でも書いていればいい。だが、池袋の西口公園では今日から古本まつりが始まっている。うちの店にも客は来ないけど、古本まつりの客足…

14 アニマル洋子と店内撮影と宮尾登美子

2013年4月マ日 売り物の本に掛けるビニールに悩んでいる。この件は以前も書いたが、グラシン紙で本を包むのが好きじゃないので、状態の確認がしやすい透明ビニールで本を包みたいのだ。 店内にあるすべての本をビニール掛けするのは作業量的に現実的ではな…

13 飲尿療法とカンパの古本と謎の鉄パイプ

2013年3月マ日 かつて「飲尿療法」という民間療法が流行ったことがある。1990年に『奇跡が起きる尿療法』(中尾良一/マキノ出版)という本が刊行されて、広く世間に知られることとなった。飲尿、ようするに自分の尿を飲むことで体内がデトックスされ健康に…

12 忍者と豆盆栽と沖縄ブックオフツアー

2013年2月マ日 以前にも書いたが、つげ義春『無能の人』の「石を売る」は自分の中にとても深く食い込んでいて、ゲームデザイナーとして時代の最先端にある仕事をしていたときから、将来、自分はあそこへ行ってしまうんだろうなあ、という怖れのような気持ち…

11 セカンドライフとブックオフとトイレの問題

2013年1月マ日 マニタ書房を開業して初めての新年である。新年早々ブログを更新。マニタ書房としての公式ブログは作っていないのだが、とみさわ昭仁個人としてのブログ「Pithecanthropus Collectus(蒐集原人)」に、マニタ書房の概要という記事をアップし…

10 痕跡本と竹内力とマニタ書房の壁面メディア

2012年12月マ日 古本の世界に「痕跡本」というものがある。これは愛知県で古書店「五っ葉文庫」を営んでおられる古沢和宏さんが提唱している概念だ。 前の持ち主によって落書きなどが施された本は、一般的に「汚れ」や「キズ物」扱いとなって商品価値が下が…

09 顔と名前と窓際本棚と名古屋ツアー

2012年11月マ日 ついに開業した! 学生時代から古本屋という場所が大好きだった自分が、古本屋の主人になってしまった。それも神保町のまん真ん中で。 小学生のとき最初に憧れた職業の落語家にはならず、漫画家にもなれず、イラストレーターにもなれなかった…

08 ちんこ書店とマニタ原人とコンセントピックス

2012年10月マ日 マニタ書房を開業したとして、1日どれくらいのお客さんが来るだろう? そんなこと考えるまでもない。せいぜい一人か二人、おそらく数えるほどでしかない。だとするならば、代金を会計するためにレジスターが必要かと問えば、必要ないよね、と…

07 書籍商の標識と札幌ブックオフツアー

2012年9月マ日 松戸市役所に開業届を提出しにいく。なんというか、ちゃんとした正式の届け出用紙があるのかと思っていたら、藁半紙にコピーを繰り返したようなヘボい感じのものが出てきて、拍子抜けした。昭和の学校かよ。ともあれ、これによって古本屋の店…

06 暴走族本とせんべろ古本トリオと委託販売

2012年8月マ日 かつて暴走族に関する本の出版ブームがあった。『俺たちには土曜しかない』(二見書房)、『止められるか、俺たちを』(第三書館)、『ザ・暴走族』(第三書館)などなど。ぼくが高校生の頃だから、1979~1980年頃のことだろうか。ぼくが通っ…

05 仕切板とブックオフ巡りと純粋なコレクター

2012年7月マ日 古本屋になったらやりたかったことのひとつに「仕切板の製作」がある。店内の在庫をジャンルごとに分類して、お客さんにそれと認識してもらうための板だ。とくに、我がマニタ書房は分類が特殊なことをセールスポイントにしようと思っているの…

04 店名決定と業務用本棚とナニワのオッチャン弁護士

2012年6月マ日 古物商の許可申請をするため、神田警察署の生活安全課防犯課に行く。目についた職員(という言い方でいいのかな?)に声をかけ、要件を告げると個室に通された。少しすると担当の者が来て、申請書類の書き方ををひとつひとつ丁寧に教えてくれ…