マニタ書房閉店日記

26 消費税とメキシコ麻薬戦争とナスカジャン

2014年4月マ日 本日より消費税が5%から8%になった。まったく困ったもんだ。消費者としても、商店経営者としても、腹立たしいったらありゃしない。とはいえ、実際のところマニタ書房には関係なかったりする。なぜなら、うちは増税前も増税後も、一切、消…

25 山川惣治とピンカデリックとプリングルスの筒

2014年3月マ日 荒井由実の名曲に『海をみていた午後』がある。この歌詞の中に「山手のドルフィン」という店が出てくるが、これは架空の場所ではなく、神奈川県の山手と根岸の間に実在するレストランだ。中川右介の『角川映画』を読んでいたら、そのドルフィ…

24 BRUTUSと煙突写真と釣り人の群衆

2014年2月マ日 今月1日発売の『BRUTUS』は「手放す時代のコレクター特集」。企画段階から協力していて、ぼく自身もエッセイも寄稿しています。どのようなコレクション遍歴を経て「エアコレクター」の境地に辿り着いたのか? そんな感じの話を書きました。 …

23 山田風太郎と廃盤ビデオと万引きコーナー

2014年1月マ日 新年早々、早朝から公園にシケモクを拾いに行こうとする老いた父を引き止める。ヨボヨボのくせに握力だけはあって、つかまれた手の皮膚が裂けて出血した。 いまのところトイレも風呂も一人で済ませられるので、肉体的にはそれほど家族の手を…

22 古本ライターとやくざ者と浅田真央

2013年12月マ日 いまから4年前。復職して10年ほど勤めたゲームフリーク社との契約を解除して、またぼくはフリーランスに戻った。自ら進んでやったことではあるけれど、50歳を目前にしての再出発は難しい。ましてやおりからの出版不況で雑誌は激減し、ぼくに…

21 赤尾敏とリアル鬼ごっこと人喰い人種

2013年11月マ日 今日の閉店間際、やけに貫禄のある初老の紳士が店に来た。見るからにヤクザ、という風体ではないのだけど、あの貫禄は堅気ではなさそう。で、発した第一声が「ヤクザの本ある?」なのだ。 また都合がいいのか悪いのか、マニタ書房には「ヤク…

20 本の雑誌と安達祐実と蒐集100万年

2013年10月マ日 先月、かつて「週刊プレイボーイ」誌で編集長を務めていた島地勝彦さんの取材を受けた。氏が「月刊リベラルタイム」で連載している「ロマンティックな愚か者」という記事に、マニタ書房の店主であるぼくが取り上げられたのだ。自分で言うのも…

17 折りたたみ自転車と珍生相談と博士年表

2013年7月マ日 都内でブックオフ巡りをする際の機動力を上げるために、折りたたみ自転車を買った。なるべくコンパクトに折りたためるやつがいいなと思って、選んだのはSNSで教えてもらった「CARRY ME」。 ネットで写真を見て、これはぼくが求めていたちょう…

16 怪しい店と古本珍生相談と無看板営業

2013年6月マ日 ぼくらが子供の頃、町内に一軒くらいは怪しい店があった。見た目はごく普通の古本屋っぽいんだけど、店の一角にちょっと肌色が目立つ雑誌なんかが置いてあって、子供が近寄ろうとすると店のオババに「そこの本は触んな!」とか怒られる。当然…

14 アニマル洋子と店内撮影と宮尾登美子

2013年4月マ日 売り物の本に掛けるビニールに悩んでいる。この件は以前も書いたが、グラシン紙で本を包むのが好きじゃないので、状態の確認がしやすい透明ビニールで本を包みたいのだ。 店内にあるすべての本をビニール掛けするのは作業量的に現実的ではな…

13 飲尿療法とカンパの古本と謎の鉄パイプ

2013年3月マ日 かつて「飲尿療法」という民間療法が流行ったことがある。1990年に『奇跡が起きる尿療法』(中尾良一/マキノ出版)という本が刊行されて、広く世間に知られることとなった。飲尿、ようするに自分の尿を飲むことで体内がデトックスされ健康に…

12 忍者と豆盆栽と沖縄ブックオフツアー

2013年2月マ日 以前にも書いたが、つげ義春『無能の人』の「石を売る」は自分の中にとても深く食い込んでいて、ゲームデザイナーとして時代の最先端にある仕事をしていたときから、将来、自分はあそこへ行ってしまうんだろうなあ、という怖れのような気持ち…

11 セカンドライフとブックオフとトイレの問題

2013年1月マ日 マニタ書房を開業して初めての新年である。新年早々ブログを更新。マニタ書房としての公式ブログは作っていないのだが、とみさわ昭仁個人としてのブログ「Pithecanthropus Collectus(蒐集原人)」に、マニタ書房の概要という記事をアップし…

10 痕跡本と竹内力とマニタ書房の壁面メディア

2012年12月マ日 古本の世界に「痕跡本」というものがある。これは愛知県で古書店「五っ葉文庫」を営んでおられる古沢和宏さんが提唱している概念だ。 前の持ち主によって落書きなどが施された本は、一般的に「汚れ」や「キズ物」扱いとなって商品価値が下が…

09 顔と名前と窓際本棚と名古屋ツアー

2012年11月マ日 ついに開業した! 学生時代から古本屋という場所が大好きだった自分が、古本屋の主人になってしまった。それも神保町のまん真ん中で。 小学生のとき最初に憧れた職業の落語家にはならず、漫画家にもなれず、イラストレーターにもなれなかった…

08 ちんこ書店とマニタ原人とコンセントピックス

2012年10月マ日 マニタ書房を開業したとして、1日どれくらいのお客さんが来るだろう? そんなこと考えるまでもない。せいぜい一人か二人、おそらく数えるほどでしかない。だとするならば、代金を会計するためにレジスターが必要かと問えば、必要ないよね、と…

07 書籍商の標識と札幌ブックオフツアー

2012年9月マ日 松戸市役所に開業届を提出しにいく。なんというか、ちゃんとした正式の届け出用紙があるのかと思っていたら、藁半紙にコピーを繰り返したようなヘボい感じのものが出てきて、拍子抜けした。昭和の学校かよ。ともあれ、これによって古本屋の店…

06 暴走族本とせんべろ古本トリオと委託販売

2012年8月マ日 かつて暴走族に関する本の出版ブームがあった。『俺たちには土曜しかない』(二見書房)、『止められるか、俺たちを』(第三書館)、『ザ・暴走族』(第三書館)などなど。ぼくが高校生の頃だから、1979~1980年頃のことだろうか。ぼくが通っ…

05 仕切板とブックオフ巡りと純粋なコレクター

2012年7月マ日 古本屋になったらやりたかったことのひとつに「仕切板の製作」がある。店内の在庫をジャンルごとに分類して、お客さんにそれと認識してもらうための板だ。とくに、我がマニタ書房は分類が特殊なことをセールスポイントにしようと思っているの…

01 実店舗へのこだわりと値付け方法と蟲文庫

2012年3月マ日 正確な日付までは覚えていないが、3月のある日、唐突に古本屋を開業することを思いついた。昔から古本屋が好きだったぼくが、自ら、古本屋に、なるのだ。 最初に古本屋という場所に足を踏み入れたのは、いつ、どこの、何という店だっただろ…

00 少し長いまえがき

『マニタ書房閉店日記』とは、2012年の10月から2019年の4月まで、およそ7年弱の間だけ神保町に存在した「特殊古書店マニタ書房」という風変わりな古本屋の記録である。 ぼくは2011年の10月に、かねてより闘病中だった妻に先立たれた。後に残されたのは、小学…

メルマ旬報の終刊に寄せて

既報の通り「水道橋博士のメルマ旬報」は、2022年9月末で終刊となります。それにともない、現在ぼくが連載中の「マニタ書房閉店日記」も、前号での更新(2012年8月 第6回「暴走族本とせんべろ古本トリオと委託販売」)をもって終了となります。今後は、とり…