http://d.hatena.ne.jp/washburn1975/20081113
id:washburn1975さんとこの企画。コレクターネタではないけど、せっかくのはてなダイアリーだから参加しちゃうぜ〜。
というわけで以下の10本。普段からこういうこと考えるのが好きなので、そんなに迷わず選び出した。泣く泣く落としたのは『幕末太陽傳』と『百萬両の壺』ぐらいかな。監督ひとり1本しばりをするつもりはなかったけど、結果的にはきれいにバラけたね。それぞれに順位はつけられないので、公開年代順に並べてあります。
■どですかでん/黒澤明(1970)
貧乏人と狂人の出てくる邦画が昔から大好きなのです。見下してるんじゃなくて、いつ自分がそうなるかわかんない危うさのうえで生きているから、そのスリルがダイレクトに感じられておもしろいんだと思う。冒頭のエア電車のシーンからして鳥肌モン。
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■股旅/市川崑(1973)
エンターテインメントの中ではじめて「リアリティ」というものを意識させられた作品。まあ股旅が存在した時代を実際に見てきたわけじゃないから、これが本当にリアルかどうかなんてわかんないんだけど、フィクションでは“そう見える”ってことが大事。ショーケン、小倉一郎、尾藤イサオという3人の組み合わせが奇跡のよう。ラストのあっけない(本当にあっけない)幕切れも、いかにもな感じでジーンと来る。
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■県警対組織暴力/深作欣二(1975)
深作は『仁義』シリーズを入れちゃうと1本に絞れなくなるので、そのエッセンスがぎゅーっと詰まったこちらを選択。サンダ対ガイラよりも、プレデター対エイリアンよりも、県警(文太)対組織暴力(松方)の方が百万倍おそろしい。お茶漬けを食べるときは、いつも松方弘樹の「あんたに食わせてもらった茶漬けの味は忘れんよぉ」というセリフを心の中でつぶやいている。それぐらい好き。
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■ガキ帝国/井筒和幸(1981)
この10本に順位はつけられないけど、1位だけは決まっている。つまりこれ。公開時に渋谷のシネマプラセット(銀色ドームの仮設映画館)で観て、レンタルビデオで見て、VHS買って見て、DVD買って見て、去年、シネマート六本木でやったリバイバル上映も見に行った。いまもYouTubeで見ながらこれを書いています(嘘です)。
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■TATTOO[刺青]あり/高橋伴明(1982)
1979年、大阪の三菱銀行籠城事件をモデルにした映画。当時のニュースでは、犯人梅川による行員らへの鬼畜の所行も克明に報道されたが、このときうちの姉も三菱銀行に勤めていたので、まったく他人事じゃなかった。で、現実には戦慄するけれど、映画は映画として最高におもしろい犯罪映画の大傑作。たとえば松田優作のアウトロー演技なんかはわざとらしくて好きになれないんだけど、こちらの宇崎竜童は地と演技の区別がつかない怪演っぷりでたまらない。
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■竜二/川島透(1983)
脚本、主演をつとめた金子正次が映画の完成直後にガンで早逝したせいで伝説となってしまったが、そうでなくても日本映画史に深く刻まれたであろうことは間違いない名作。金子正次がいいのはもちろんだが、前半で駆け出しのヤングやくざを演じ、後半で貫禄たっぷりの幹部に変貌する北公次が本当に素晴らしい。あと、落ちぶれたときの桜金造の泣き笑い顔も見逃せない。
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■生きてるうちが花なのよ死んだらそれまでよ党宣言/森崎東(1984)
ストリッパー、原発ジプシー、やくざという社会の底辺でうごめく者たちの哀しくも逞しい物語。死んだふりをして埋葬された泉谷しげるが墓の下からズババッと出てくるところと、いまではすっかり好々爺の小林稔侍が、まだピチピチの極悪俳優で、ニカニカしながら猟銃をぶっ放すシーンは必見。
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■座頭市/勝新太郎(1989)
座頭市の映画はピン(三隅研次)からキリ(綾瀬はるか)まであるけど、おれが最高傑作だと信じているのは勝新自らメガホンをとったこのマカロニ風座頭市。勝新を筆頭に、緒形拳、内田裕也、陣内孝則、奥村雄大などなど、やくざもんがみんな素晴らしいのは当然ながら、小物役の片岡鶴太郎さえもが生き生きしている(彼は絵さえ描かなきゃいい俳優だよね)。北野武版も悪かないけど、やっぱりこれと比べちゃうと、ねえ?
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■無能の人/竹中直人(1991)
ブックオフに行くと、本の知識なんかこれっぽっちもないのにケータイ片手に情報商材で知ったサイトにアクセスして高く転売できそうな本を必死に探している素人セドリ屋の皆さんを横目で見ながら、でも心の底では「楽しそう……」と思っている自分も十分無能の人。竹中監督本人が助川を演じることで、つげ義春の原作よりさらに無能感が強調された映画版は、見るたびに身につまされて笑いごっちゃない。
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■一杯のかけそば/西河克己(1992)
何かっつーと感動を大安売りする邦画界にあって、真の感動をもたらしてくれるのはこの映画しかない!(大袈裟)。ご存知クリ良平の泣かせ童話を映画化した貧乏親子の感動ストーリー。冒頭いきなり人語を喋る犬のアニメ(しかも声はタラちゃん)から始まって度肝を抜かれたり、殴り合いの喧嘩をする息子たちを止めるために亡き夫の仏壇から取り出した次男の作文を朗読する母ピン子の熱演に涙腺を潤ませたり、革ジャン着ているバイトの青年を蕎麦屋の女将さんが「ロック」ってあだ名で呼んだり、立派な大人に成長した息子二人と夫の遺影を持ってやってきたピン子を見て蕎麦屋のじいさんが「今日はかけそば四丁だーい!」とうれしそうに叫んだり、怒濤のように繰り出される名場面の連続にクラクラする。こんなすごい映画がDVD化されていないなんて世の中間違っているっ!
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