ぜんぜん他人事じゃない!『レスラー』

渋谷のシネマライズで『レスラー』を見た。映画館のポップコーンにはちょっとうるさいおれだけど、ここシネマライズのポップコーンは化学調味料が効いていてとくにうまい。化学調味料をきらうひとも多いが、あれは人類最高の発明だと思う。入れすぎはよくないが、ほどほどに入れればうまくなる。料理におけるCGみたいなもんだ。
ポップコーンはうまいのだが、シネマライズで許せないのは売店でグミを売っていることだ。いや、グミにツミはない(ここは笑うところ)。より正確に言うならば、グミのはいった袋がいけないのだ。なんの案配か知らんがパリッパリなのだ。上映中それを食ってる奴がそばにいようものなら、ずーっと耳元でパリパリパリパリ聞かされるのだ。わしゃヘップバーンの映画見にきたんと違うわ!
『レスラー』は噂通りの傑作だった。かつてはマット界の頂点に立ったこともあるプロレスラー、ランディ“ザ・ラム”ロビンソンは、老いたいまも現役にしがみつき、地方興行のリングに立っている。たとえば絶頂期に、たっぷりもらったであろう報酬を元手にしてサイドビジネスを始めて実業家になることもできたろう。あるいは団体の経営陣にはいることもできたろう。だが、ランディはそれをしなかった。できなかったのかもしれない。生涯リングに立つことを選んだのだ。
興行ではそれなりに声援も受けるが、往年のようにキレのある動きはもうできない。楽屋では補聴器をつけ、老眼鏡をかけている。ときおり行われるファンフェスタに出てみても、来場客はまばらで、1回8ドルのサインに行列などできるはずもなく、ろくな収入に結びつかない。おなじくフェスタに出演している往年の仲間たちも皆、歩行器具をつけなければ歩けなくなっているなど、長年の無茶で身体はボロボロになっている。このシーンの絶望感はたまらない。
ランディは貧相なトレーラーハウスに住んでいるが、そんなところでさえも家賃を滞納しては、大家からたびたび閉め出されている。放蕩暮らしとプロレスに夢中になりすぎる性格が祟って、最愛の娘からも愛想を尽かされている。一度は引退を決意したランディは地元のスーパーで働き始める。だが、ムカつく上司と、ムカつく客の板挟みになり、流血騒ぎを起こして自らリングアウトする。どこにも行き場はないのだ。ランディにとって、帰るところはリングしかない。そこに希望なんかないのはわかっていても、リングに飛び込む以外の方法がみつからないのだ。
プロレスというものにほとんど思い入れのないおれなので、感動したのは間違いないんだけど、なぜ感動したのか観終わった直後にはその理由がうまくつかめなかった。でも、帰ってきてネットで深町秋生さんの感想を読んだ瞬間に「ああっ!」といろんなものが押し寄せてきて、家で泣いた。
http://d.hatena.ne.jp/FUKAMACHI/20090614


ところで、この写真、おれにはなんとなく『トイストーリー』に見えるのだが。

パンツがバズ色だからか?