トホ散歩

朝の散歩を始めた。

第一の目的は健康増進、体力維持だけど、第二の目的というか、どちらかというとこちらの方が本当の目的じゃないの? と自分で思っているのは「本を読むため」だ。

ゲームフリークに勤務していたり、神保町でマニタ書房を経営していたときは、通勤電車の中で本が読めた。しかし、現在のように基本自宅に引きこもって原稿を書くだけの生活になってからは、とにかく本が読めなくなっていた。

べつに家にいたって、1日24時間のうち1時間でも2時間でも読書時間を設けて本を読めばいいのだけど、それができない。家にいるとやることはいっぱいあるし、ネットを見たり、映画を見たり、お酒を飲んだり、読書どころではなくなってしまうからだ。

通勤電車というのは、他にやることがないので本を読むには適している。そう、ぼくにはこの「他にやることがない」という状態が、読書のために重要なのだ。他にやることがある場所では本は読めない。

で、散歩である。

ぼくは昔から朝型で、だいたい午前4時くらいには目が覚める。そこから少しだけ仕事をしてから、6時になったら家を出る。上下ジャージで、寝ぐせ隠しのハットをかぶり、マスクをし、ポケットにはスマホを入れ、読みかけの本を持って家を出る。

そして歩きながら本を読む。歩いている最中というのは、他にやることがないので読書がはかどるのだ。これは昔からの癖。会社に勤めていたときも、家から駅まで、駅から会社までの道のりを、ぼくは歩きながら本を読んでいた。

マニタ書房をやっていたときも、新お茶の水駅を出て、店まで歩く道すがら本を読んでいたところを本の雑誌社の浜本編集長に見られて笑われたことがある。まさに『活字中毒者 地獄の味噌蔵』である。

朝の散歩は、自宅を出て、家のあるブロックをぐるりと回るだけの簡単なものだ。そんなに遠くまではいかない。一周まわって家の近くにあるセブンイレブンでコーヒーを買う。財布を持っていなくても、スマホのPaypayで決済できる。

コーヒーを買ったら、それを飲みながらさらに本を読み続け、隣のブロックまで足を伸ばす。軒下にベンチが置いてあるアパートがあるので、そこまで来たらひと休み。腰をおろしてゆっくりコーヒーを味わいながら本を読む。で、区切りのいいところまで来たら帰るのだ。

歩き読書の天敵は雨だ。これからの季節、雨降りが多くなるのが憂鬱だ。