2014年9月マ日
早野凡平の『あゝお酒』という曲は、バラクーダの『日本全国酒飲み音頭』より2年も先に出ているが、そのコンセプトはまったく同じである。しかも、『日本全国酒飲み音頭』はご存知のように『ビビデ・バビデ・ブー』の替え歌だが、『あゝお酒』はというと『月光価千金』の替え歌だという共通点もある。
🎵一月はお正月、おさけがのめる~
二月は節分で、おさけがのめる~
三月はひなまつり、おさけがのめる~
四月は花見で、おさけがのめる~
と、このように続いていく歌詞は、一見『日本全国酒飲み音頭』のようだが、『あゝお酒』の歌詞なのである。
世の中のほとんどの人が知りもしないし、興味もないだろうことをあえて書いてみた。
2014年9月ニ日
忘れた頃にやってくる、年に数度のお楽しみ「せんべろ古本トリオ」のツアーの日である。この日まわるのは西武池袋線の沿線で、当日の日記をもとに訪問店を書き連ねておくと、
椎名町 正ちゃん(集合場所の酒場)
江古田 根元書房
ブックオフ江古田店
銀のさじ書店
根元書房(壁面本棚が壮観)
ひょうたん(タイ料理)
石神井公園 草思堂
きさらぎ文庫
大泉学園 ポラン書房
所沢 彩の国古本まつり
新秋津 古本らんだむ
サラリーマン(居酒屋)
秋津 野島(焼き鳥屋)
となる。
※いま振り返ってみると、初老のオヤジ3人がよくぞこれだけ歩き回れたものだ。しかも終盤には大スケールで知られる彩の国古本まつりにも行っているわけで、たった10年前とはいえ我々もまだまだ元気だったのだ。同じことをまたやれと言われても、さすがにもう無理だろう。
2014年9月タ日
ピープル江川さん(https://x.com/pegawa)がTwitterでつぶやいていたハッシュタグ「#こんな保育社カラーブックスを読みたい」がおもしろい。江川さんの『日本全国中古レコードショップ』を皮切りに、『全国芸人営業旅』『原色全国うどん図鑑』『世界の集客に失敗したロックフェスティバル』『日本の銭湯』などなど、いろんな人のつぶやきがいちいちツボに入る。
ぼくも何かいいのないかなーと考えて、『日本全国立ち食いそば1000軒』を挙げてみた。
2014年8月シ日
手当たり次第に青い鳥文庫を読んでいる娘ちゃんに、そろそろ一般小説の世界も知ってほしくて、ブックオフめぐりのついでに中2女子なら楽しめそうなものを見繕って来た。ラインナップは『アルーマ/高瀬美恵』『ラッキーマウスの謎/宗田理』『秘湯中の秘湯/清水義範』『長い長い殺人/宮部みゆき』など。
本来なら新刊で買うべきなのはわかっているが、いまは父が少ない稼ぎの中から未来の読者、未来の本買いモンスターを育成中なのだとご理解いただきたい。
2014年9月ヨ日
通りすがりの若者5人組が、堀道広さんの看板イラストに惹かれたと言いながら入店してきた。みんなで棚を見渡しながら大喜びしている。そのうちの一人が「店主の本コーナー」を指差し「えっ、これ書いた方なんですか!」と驚きの声をあげた。なんでも『人喰い映画祭』を読んでくれていたそうなのだ。
結局5人で本や雑貨などいろいろ買い物してくれて、平日なのにそこそこの売上げを達成した。誠にありがたいことである。
そうかと思えば、日が暮れた後には会社から帰る途中の初老の男性が来店し、奥の棚まで行って引き返し、首を傾げながら10秒で退店していった。こういう人は、たいてい「ビルの4階」「特殊書店」という怪しげな情報と、看板に書かれたいくつもの取り扱いジャンルの中のひとつでしかない「エロ」という単語に過剰反応して、「ひょっとして裏本とかあるのでは……?」と期待してきたお客さんなのだ。もちろん、そんなものがこの時代にあるわけもないのだが、そう誤解をさせてしまったのなら申し訳ないことである。
2014年8月ボ日
昨晩のこと。店を閉めて、マニタ書房から徒歩1分のところにある居酒屋「酔の助」へ飲みに行ったら、隣の席で飲んでいる客の横顔が漫画原作者の黒沢哲哉さん(「ファミコン神拳」のてつ麿先輩)に激似だった。えっ、本人? それとも他人の空似?
黒沢さんはお酒を飲まない方なので、こんなところにいる可能性は低い。しかし、同席してる人にも見覚えがあるし、やっぱり黒沢さんなのだろうか……。
いまいち確信は持てなかったけれど、下戸のはずの黒沢さんが飲んでいるドリンクを見れば烏龍茶。それで間違いなかろうと声をかけたら、やはりご本人だった。同席している人は、以前に一度だけお会いしたことのある漫画家の☆よしみるさんだった。
彼らは、近々刊行する『伝説の70~80年代バイブル よみがえるケイブンシャの大百科』(いそっぷ社)の出版記念トーイベントの打ち合わせで、この店に来たという。出版関係者が神保町にいるのは珍しいことではないが、なかなかおもしろい偶然だった。
2014年9月ウ日
ヤフオクで落札したレコードが届いた。かれこれ30年は追いかけてきたロックスター・水木豪の、新発見のレコードだ。
これまでにぼくが確認してきた限り、水木豪のレコードは2枚の7インチしか存在しないはずだ。ロックバンド「水木豪&ウルフ」名義の『MORNING LOVE/早撃ちマック』(ソーラスマーキュリー)と、フォークデュオ「ウルフ」名義の『モーニング・ラブ/愛はイリュウジョン』。縁あって元メンバーとコンタクトを取ることもでき、それで間違いないことは確認している。
いちおう、ヤフオクのアラート機能に「水木豪」というワードを登録していて、ときどき上がってくる出品を欠かさずチェックしているが、それらはすべて上記した「水木豪&ウルフ」名義のソーラスマーキュリー盤だけだ。「ウルフ」名義の『モーニング・ラブ』は自分が1枚見つけたっきりだし、それ以外の未発見盤にも出会ったことはない。
長いことその状態が続いていたので、ぼくはこの2枚しかないと思い込んでいた。
ところが。
先月、ヤフオクのアラートに見たことのない商品の出品が引っかかった。「立川談豪」の『道化師/わたし酒場の女』というレコードだ。なぜ、これがアラートにかかったかというと、ジャケ裏に印刷されている歌手のプロフィールが出品の商品説明欄に転載されていて、そこに「水木豪」という文字列が含まれていたからである。
えっ、これはどういうこと?
文面によると、このレコードの主である立川談豪氏は別名「水木豪」でのバンド活動を経たのち、落語立川流に入門して立川談豪の名をもらったという。マジか? あの水木豪が立川流に入って落語家になっていた!? そんな話は初耳である。でも、ここに現物があるのだから間違いない。
ぼくは立川流にさほど詳しいわけではないが、Aコース(本筋の弟子)で修行をして高座名までもらっていたら、その名前を知らないわけがない。水木豪はバンドマン出身だからBコース(芸能人用)という可能性もあるが、それにしたって同様だ。したがって、考えられるのは金さえ払えば名前をもらえるというCコース(一般人用)だ。こちらで名前を買った立川なんちゃらの全貌は、落語マニアだって把握しきれるものではないだろう。
ともかく、ギタリストとのフォークデュオ「ウルフ」から、バンド形式の「水木豪&ウルフ」になり、バンド解散後、立川流に入門(?)して立川談豪になった、という図式は判明した。
しかし、今回手に入れたレコードに書かれたプロフィールをよく見て、ぼくはさらに衝撃を受ける。そこには「二代目藤村縁郎」の名前で「活弁士」をやっているとの記述があったからだ。
インターネットはとても便利なものだが、知らないものは検索できない。だけど、言葉(固有名詞)さえわかれば、検索でかなりのことを知れるし、関連商品も見つけられる。ながらく2枚の7インチしか存在しないと思っていた水木豪も、立川談豪という名前を知ってみれば、これまでに何度かそのレコードが出品されていたことがわかる。
では、「藤村縁郎」はどうだろう?
即座にその名前で検索してみたところ、あっけなく『映画百年:顔のない戦士たち』という本が見つかった。まさか、水木豪に著書があったなんて……。
この本を取り寄せ、ページを開いたぼくは更なる衝撃を受けるのだが、長くなりすぎるのでそれはまた別の機会に──。