35 ソウルじじいと岡山のローカルスターとBAWDIES

2015年1月マ日

 新年明けましておめでとうございます。

 昨年の前半は相変わらずの「いつ開いてるかよくわかんないわがまま営業」をしていたけれど、後半になって突然「このままじゃいけないのではないか?」と思い直して、わりとちゃんと店を開けるようにした。おかげで、売上げも少しは上昇してきた感じがする。

 実際のところは、原稿依頼が増えたことで必然的に仕事場に常駐している時間が長くなり、ついでに店を開けるようにもなった、ということなのだが。

 以前は、締め切りに追われているときはお客さんの相手ができないので、店を閉めることも多かったんだけど、最近は古本屋であることにも慣れてきたのか、お客さんの出入りがあっても気にせず原稿が書けるようになってきた。

 この、ほどほどの忙しさの古本屋と、ほどほどの忙しさの物書き稼業の両立が、いつまでも続いてくれることを願う。

 

2015年1月ニ日

 今日は仕事を少し早めに切り上げて、武道館までダイアナ・ロスの来日公演を見に行く。ダイアナ姐さんも御年70歳。もうこれが最後の来日となるかもしれない。

 マニタ書房から武道館までは徒歩15分ほど。九段下を上がっていくにつれ、若い頃はさぞ遊んでいたであろうソウルじじいとディスコばばあの数が増えていく。今夜の武道館、平均年齢が高い。

 開演直前に2階席正面がざわついたので何事かと思ったら、たくさんのSPを引き連れた安倍晋三総理(当時)が来ていたのだった。税金使っていい席取りやがってコンチクショー。

 ぼくが取れた席は2階の左翼の端の方なので、ダイアナの右側面しか見えなかったけど、やはり生の迫力はすごかった。何度も退場したのは、おばあちゃんトイレが近いんだろうなあというところだろうけれど、ボーカルの衰えは感じさせることなく、"Stop! In the Name of Love"も"You Can't Hurry Love"も"Ain't No Mountain High Enough"も、あとタイトル知らないけどぼくでも知ってるヒット曲を片っ端からやってくれた。

 

2015年1月タ日

 いまから5年くらい前までは中古盤屋へ行っても、あんまり歌謡曲のいいレコがなくて掘り甲斐がなかったが、ここ数年でザクザクいいものが出てくるようになった。不謹慎な言い方だが、おそらく第一次廃盤歌謡ブームを支えた世代のコレクターが死にはじめて、遺族が処分しているのだろう。ということは、いまから10年くらいは中古市場がすごくおもしろくなるはずだ。

 なぜそんなことを思ったかというと、今日はディスクユニオンの柏店で「うわっ、このレコがこんな値段で!?」みたいな掘り出し物がざくざく出てきたからだ。勢い込んで14枚も買ってしまった。

 そして、いつかは自分も死んで、娘にレコードコレクションを叩き売られ、どこかの歌謡曲コレクターを喜ばせることになるのだろう。それもまたよし。

 

2015年1月シ日

 この日より3日間、岡山かた倉敷にかけての仕入れツアーに出かけるのだ。いちばんの目的は古本マニアなら知らぬ者はない万歩書店に行くことだが、ついでに中古盤屋も可能な限りチェックしたい。

 で、怒涛の3日間を過ごしたわけだが、日記ではその釣果だけをまとめておく。

 

 1日目 5冊購入@ブックオフ山東古松店

     1冊購入@南天荘書店

     2枚購入@GROOVIN' 岡山表町店

     自分が欲しいものはなし@キングビスケットレコード

     1冊購入@古書隠書泊(オニショハク)

 2日目 9冊購入@万歩書店本店

     8冊購入@ブックオフ岡山西長瀬店

     16枚購入@グリーンハウス岡山店

     6冊購入@ブックオフ岡山妹尾店

     6枚購入@レコード屋(という名前の中古盤屋)

     4冊購入@ブックオフ倉敷浜店

     13枚購入@グリーンハウス倉敷店

     4冊購入@ブックオフ倉敷笹沖店

 3日目 4冊購入@万歩書店倉敷店

 

 他にブックスフロンティアもいい店っぽいので覗いてみたかったのだが、営業時間が未定らしく、あいにくぼくが訪問したタイミングに合わなかった。名残惜しかったがワケありで早く帰京しなければならず、予定より2時間も早い新幹線に乗車して帰京した。

 ※当時、SNSには「ワケありで」なんて言い方でつぶやいていたが、この年の1月7日に親父が死んでいて、その葬儀のために早く戻る必要があったのだ。親が死んでも古本仕入れツアーの予定はキャンセルしたくないので、親父の死体は葬儀屋さんの冷蔵庫に突っ込んで岡山まで遊びに行っていた酷い息子。古物商の業である。

 

 結局、岡山~倉敷ツアーの成果は、古本42冊、ドーナツ盤36枚、LP1枚というまずまずのものだった。駆け足な旅にしてはいい収穫だったのではないかと思う。岡山のブックオフは北部を残しているので、いつかまた来なければなるまい。

 今回の旅では古本も中古盤もいいものがたくさん買えたが、実はいちばんの収穫は「うちだよしはる」というナイスなローカルシンガーを知れたことかもしれない。

岡山の街の随所でこの方のポスターを見かけた。

 どのポスターにもことごとくこのような落書きがされていて、れが第三者によるイタズラではなく、どうも本人の手によるものらしいのだ。スナックもやっているようなので、いつか飲みに行ってみたい。あと、この方の新曲『東京スカイツリー・ラブリー・ロンリー・ナイト』も手に入れないとね。

 

2015年1月ヨ日

 これは、岡山のブックオフで買ってきたとある本のカバー裏。貼ってある値札シールが、ちょっと珍しいパターンだった。

▲お馴染みブックオフの値札シールの下に、見慣れないシールが見える。

 ブックオフでは一定期間売れずにいた本は値下げをして値札シールを重ね貼りするが、その際にシールの色が変わる。だから、いつまでも売れない本は何度も値下げを繰り返して、3色のシールが重なっているようなものもたまに見かける。ところが、これは他店で売っていたときのシールがそのまま残っているのだ。これを剥がしてみると……。

 

前の店では93円で売られていたことがわかった。

 93円でも売れなかったものを108円で売ろうとしているわけだが、ブックオフは最低価格が108円(当時)なのだから、こればかりは仕方がない。

 次に、この93円シールを剥がしてみると、その下は105円だった。

 

▲また別のデザインのシールが出てきた。

 これもブックオフのシールではないし、その前の店のものでもないようだ。どこのものかはわからない。もしかすると、店名が入っていないだけで、ブックオフの古いシールという可能性もあるのかな。

 そして、3層になっていたシールを並べてみるとこんな感じになる。

▲お客さん来なさすぎて暇なので、こんなことしかやることがない。

 

2015年1月ボ日

 スペースシャワーTVの番組「THE BAWDIES A GO-GO!!」から取材依頼があった。彼らが街歩きをするコーナーでマニタ書房を訪問したいのだけどいいですか? という問い合わせである。

 マニタ書房は原則としてテレビ取材は受けない(店主がテレビ嫌いなので)のだけど、BAWDIESはわざわざアナログ盤を所有している程度には好きなバンドなので、例外的に快諾した。

 ところが、それっきり連絡ナシでロケは実現しなかった。最終的に会議を通らなかったのかもしれないのでバンドに罪はないが、テレビはこういうことが多いので、ますます取材拒否の気持ちが高まるのである。