2016年2月マ日
モーリス・ホワイト死去。ぼくはソウルミュージックに目覚めたのが遅いので、アース・ウインド&ファイアーを聴き始めたのもずいぶん遅いのだが、それでもやはり74歳での死去というのは早すぎるし、まだまだ活躍を見せてほしかった。
中学時代、レコード屋に勤めていた近所のお兄さんから何枚かレコードをもらったことがあり、その中に「アース&ファイアー」というバンドがあった。ウィンド無えのかよ! とすかさずツッコんだものだが、あとで検索してそれがオランダのロックバンドであることを知った。
そのときもらったレコード『Seasons』は一度も針を落としたことがなく、とっくに処分してしまったが、いま改めてYoutubeで聴いてみたら……。
https://youtu.be/qN24NwMSBHM?si=1Tcd_F_-c3kurRJa
これがホワイトストライプスの『I think I smell a rat』の元ネタであることに気がついた。やってくれたなー。
https://youtu.be/_ALZTuyM7lg?si=uwBt2ioyLJJBBbr1
そして、ホワイトからホワイトにつながったのであった。
2016年2月ニ日
日常的に「どの店に行った」「何を食べた」「何を見た」などとSNSに投稿することが多い。自身の居場所が特定されないように時間や地名をボカすのはSNSを運用する際の基本とも言えるが、ぼくはけっこう迂闊にリアルタイムでつぶやいてしまう。
有名芸能人ならいざ知らず、ぼく如きがストーカーを心配する必要はないのだが、それでもときおり、居場所を特定されて急に会いに来られたらどうしよう? と不安になる瞬間もある。
だが、その直後に我に返る。行きつけの店がバレることよりも、そもそも長時間滞在している「マニタ書房」は住所を公開してるんだから、自分の居場所を隠す意味なんてないのだった。
だから、とみさわ昭仁に会いたいという奇特な方いるのなら、いつでも店に来てくれれば会えます。ただし、店番してるからといってヒマなわけではないので、何か話をしたい方は事前にアポイントを取っていただけるとありがたい。
2016年2月タ日
今日は、とりいかずよし先生のトークショーを見に来た。

トークは、いまだ衰えない先生のサービス精神に感銘しっぱなしの4時間であった。ただ、司会を担当した人物があまりにも物知らずで、せっかく先生がトークで発した単語を拾えず、話題がまったく広がらないのが残念だった。現場で見ていて腹立たしいことこのうえなかったのだが、そのことはまあ、ここでは語らない。
それはそれとして、いまから15年ほど前に神保町の某古書店で『トイレット博士』の原画を見つけて、連載当時に大好きだったコマが含まれてる1ページだけを購入し、大切にしていた。しかし、どういう事情で流出したにせよ、こういうのは本来なら作家本人が持っているべきもの。ぼくはあくまでもこの原画を預かっているだけの立場。だから、いつかとりい先生にお会いできる日が来たら、ご本人にお返ししようと思っていた。

そして、この日、とりい先生にお会いできるチャンスが来た。いまこそお返しするとき! と、その原画を持参して今日のトークイベントに参加したわけだ。
トークショーの後、サイン会が始まった。原画をお渡しするため、ぼくは客席でサイン会が終わるのを待っていた。すると、サイン会の列に並んでいたあるファンが取り出したアイテムに注目が集まった。
なんと、その彼が取り出したものもまた、『トイレット博士』の原画の一枚だったのだ。
先生を囲むファンたちの現場に漫画の生原稿が出現したら、そりゃ盛り上がりますわな。ワイのワイのとひとしきり盛り上がったあと、そのファンはまた原画を自分の鞄にしまった。
念のため言っておくと、とりい先生は漫画家を廃業した際に、もう漫画は描かないということで、保管していた原画をすべて処分したという。だから、『トイレット博士』の原画が神保町などで売りに出されていたのも不思議ではない。ぼくはそれで購入したし、そのファンの方もきっとどこかでその出物を買ったのだろう。
で、その彼がとりい先生に原画を見せて、先生が和かに笑い、原画をまた鞄にしまった様子を見て、ぼくは自分の持っている原画を先生にお返しすることをやめた。
だって、この流れでぼくが原画を取り出して先生に「お返しするべきだと思うので──」なんて言ったら、先に原画を見せた彼も手放さなきゃならなくなる。そうさせるのはぼくの本意じゃない。
だから、ぼくはサイン会が終わるのを待たず、先生にはとくに声をかけず、原画をお見せすることもなく、サイン会が終わる前に退散したのだった。べつにサインが欲しいわけではない。それよりも、ぼくが生まれて初めて大好きになった漫画の作者が、いまもお元気でいらっしゃることを目の当たりにできただけで、もう胸がいっぱいなのだ。
2016年2月シ日
この半年ほどずうっと書き続けてきた本を脱稿し、ゲラチェックもすべて終わり、ようやく発売日と価格が決まった。アスペクトより3月23日発売、『無限の本棚 手放す時代の蒐集論』。本体1,480円(税抜き)。
内容を簡単に説明すると、ぼくが子供の頃に初めて酒ブタ(日本酒のキャップ)を集めることでコレクションのおもしろさに目覚めてから、50歳に至るまでの様々なコレクション遍歴をたどり、最終的に古本屋開業までに至る物語。それがはからずも前代未聞の蒐集論になっているという、そんな本である。
これまで数え切れないほどの「コレクション本」や「蒐集論」に触れた本を読んできたけれど、人がものを集める衝動の本質を突いている本には出会ったことがない。今回、おそらく世界で初めて、そのことを書いた本になっていると自負している。
※2018年に筑摩書房で文庫化されているので、お求めはそちらでどうぞ。
