56 伴久旅館の女将と人間の許容限界と無人島

2016年10月マ日

 湯西川温泉本家伴久旅館の女将・伴玉枝。大広間での夕食時には自ら十二単を着てお客様の前に現れるという、かなりファンキー極まる女将の本人歌唱レコードを入手した。

 といってもウルトラ地味な情念演歌なので、どのDJイベントでも使いどころが思いつかないが、手放すには惜しい。じゃあ値段をつけて店で売ってしまおうか、とも思ったりするが、それもまた惜しい。そういうレコードってあるよね。

 

2016年10月ニ日

 千代田線の新御茶ノ水駅で降りたら、神保町古書店街の店頭ワゴンをチラチラ覗きながら店に出勤するのがいつものルーチン。そんな中からマニタ向きのいい本をセドったことは何度もある。

 今日見つけた『人間の許容限界ハンドブック』は、タイトルに惹かれてすかさず手に取った。背のラベルから察するに、どこかの図書館か学術機関のライブラリから流れてきたものだろう。

 

▲ヒトの心拍数の限界はどこまでか? 肺の換気量の限界は? ヒトの寿命の限界はいつまでか? そういったことが知れる本である。

▲こんな本をぼくが持っていても何の役に立つやら。ミステリー作家とかが買ってくれるといいのだけど。

 

2016年10月タ日

 今年もまた、しりあがり寿隊長を先頭に、仲のいい漫画家さんらと岩手ボランティアツアーへ行ってきた。今年は震災からの復興というよりも、先の台風10号での大雨と河川氾濫による土砂災害の片付けのお手伝いである。

 訪問先は主に岩泉地区で、家屋の床下に流れ込んだ汚泥の撤去などをこなした。これが想像以上の重労働で、岩手から帰ってきて数日が経過するいまも、全身の筋肉痛が引いていかない。まったく日頃の運動不足が恨めしい。

 ……と、身体の痛みをボランティア作業のせいだと思い込んでいたのだが、右膝の関節の痛みだけは他とは異質な感じがしていた。ひと晩寝ても、ふた晩寝ても痛みが引かず、むしろ増していく。これはアレだ。痛風の発作だ。

 というわけで、店はすでに3日間ほど休んでいる。いまは好きなことしか仕事にしてないので、3日も休むのが本当につらい。仕事場(店内)にはぼくの好きなものしか置いてないので、3日も留守にすると禁断症状がすごい。

 

2016年10月シ日

 昨日は、マニタ書房開業5周年記念パーティーに多くの友人知人が来てくれて、お祝いがわりに皆さん本を買ってくださり、かなりの売り上げがあった。心より感謝。

 ところが、今日はなんでもないのに朝からひっきりなしにお客様が来てくれて、まだ昼過ぎだというのに昨日に匹敵する売り上げが出ている。なぜかといえば、神田古本まつりの期間中で、なおかつ土曜日だからなんですね。

 最終的に、昨日の売り上げを超えることができた。客の立場としては、古本まつりは普段神保町に来ない人たちが大量にひしめくので思うように本を物色することができず、そんなに嬉しいものではない。しかし、神保町で古書店を営む者としては、これほど有難いイベントもないのだった。ゲンキンなもんですな。

 

2016年10月ヨ日

 今日は、昨日とうってかわってお客さんが全然来ない。ここは無人島か!



55 サインを書く人と追突事故と全裸アーテイスト

2016年9月マ日

 本日も店のデスクでネットなどぼんやり眺めながら店番をしている。先ほどぼくの読者だという方がご来店され、拙著『無限の本棚』にサインを書かせていただいた。すると、その方が退店されたあと、その場にいた別のお客様から「あのー、あなたってサイン書くような人なんですか?」と聞かれた。

 なるほど、事情を知らない人からすれば、なんで古本屋のオヤジがサインを求められてるんだろう? って思いますよね。出久根達郎先生に少しだけ近づけたような気がした。

 

2016年9月ニ日

 このところありがたいことにライター業が忙しくて、古本の仕入れになかなか行くことができず、店の棚がスカスカになってきた。このままではいけないと思い立ち、急遽、明日は店を休んで福島方面へ古本仕入れツアーに出かけることにした。一泊する予定なので、できればご当地ラーメンも3〜4杯は食べておきたい。

 

2016年9月タ日

 福島へ向けて自宅を車で出発し、30分ほど経って柏付近の国道の交差点で信号待ちをしていたところ。うしろから「ドン!」と軽い衝撃を感じた。前方を見ていないクルマに追突されたのだ。相手は高齢の男性ドライバー。

 路肩に寄せて確認してみると、右後部の外装パネルが歪んで外れかけているだけで、それ以上の被害はない。走行には支障がないので、手でパネルを押し込んでこのまま行っちゃおうかとも思ったけれど、事故は事故なので警察を呼び、お互いの保険屋さんにも連絡をとりあって今日は家に帰ることにする。事故したまま旅を続けるなんて縁起が悪いし、仕入れツアーは次の機会へ切り直したほうがいいだろう。

 予定では温泉付きの道の駅に車中泊するつもりでいて、ホテルなど予約していなかったから旅行キャンセルのダメージがないのも不幸中の幸いだった。

 

2016年9月シ日

 以前、前衛芸術的な全裸男性アーテイストの本をブログで紹介したことがある。2008年だから、いまから8年も前のことだ。

 いましがた店番をしていたら、おそらく初めて来られたと思しきお客様が、ぼくが自費で作っている『蒐集原人1号』をお買い上げくださった。すると、そのお客様は「これに『お嬢さん全裸ですよっ』という本が紹介されてるでしょう?」と話しかけけてきた。うん、たしかに紹介してるけど、それが何か?

 そのお客様は続けてこう言った。

「あれね、ボクの本なの」

 ……え? えぇーーーっ!?

 そうなのだ。このお客様は8年前にブログで紹介した『お嬢さん全裸ですよっ』の著者であり、全裸の主でもある臈乃ディ(ローノディと読む)さんなのだった!

 ぼくが書いたブログで自分の本が紹介されていることを知り、そのブログ主が古本屋をやっていると知ったので、わざわざ顔を出しに来てくれたというわけだ。

 一瞬「変な紹介しやがって!」と怒られるのではないかと思ったけど、むしろ本を紹介してくれたことをとても喜んでくださった。ありがたいことである。

 臈乃ディさん、いまは全裸活動をお休みしているそうだけれど、いずれまた何かやりたいようなこともおっしゃっていた。あと、ハマザキカクさんの『ベスト珍書』にもチラッと出てくることもちゃんと把握されていた。

 まさか臈乃ディさんと名刺交換する日が来るとは思わなかったなー。実店舗を運営しているとこんなことが起こるからおもしろい。

 ちなみに、臈乃ディというペンネームは、絵本『ノディのおくりもの』が元ネタで、これに本名に由来するあだ名をプラスして「臈乃ディ」になったのだそうだ。

 

2016年9月ヨ日

 西武古書会館で開催中の「中央線古書展」にて12冊購入。さすがに朝イチでの突入は収穫が多い。

 人混みのなか争うようにして本を漁るのは苦手なんだけど、ぼくは他のお客さんとは狙い目が違うから、そんなに慌てる必要もない。だから古書市のたぐいにはたいていゆっくり目にでかていく。でも、久々に朝イチで行けばやっぱりいいものが多く拾えるのだ。とくに今日は、マニタ書房に並べたいと思える本を、軒並み100円で出してくれている業者さんがいたのがありがたかった。

54 アキヒトと長崎ちゃんぽんとエルビスのフィギュア

2016年8月マ日

 とみさわ昭仁の書斎と古書店を兼ねたマニタ書房ならではのことだと思うが、「そのうち原稿のネタに使おうかな~と思っていた本に限ってお客様に買われてしまう」の法則が今日も発動した。そんなつもりがあるなら店頭に出さずに避けておけよという話なのだが、そうなることを楽しんでいる自分がいるのも事実だ。

 

2016年8月ニ日

 靖国神社にもほど近いという場所柄、終戦記念日が近づくと神保町周辺は否応なしにざわつく。今日は店に面した白山通りを「天皇制反対ー!」と叫ぶ集団のデモ行進が通っていった。ぼくはどのような思想を持つのも自由だと思っているのでそれはかまわないのだが、「アキヒト、要らなーい! アキヒト、要らなーい!」と大声で叫ばれるのは、アキヒトの一人としてなんとも切ない。その言い方よ。

 

2016年8月タ日

 今日は〆切りもなく、天気がいいので、店を休みにして三軒茶屋でも散歩しようかと思う。かつてボニー・ジャックスの『ボンド小唄』を発見した古書店「サムタイム」さんも久しぶりに覗いてみたい。

 ゲームフリーク在籍時代に散々利用したキャロットタワー内のTSUTAYAで新刊をチェックし、池尻大橋寄りのブックオフでセドリをし、ふたたび駅の方へ戻って「長崎」でちゃんぽんを食う。三軒茶屋にはこのにも「来来来」という長崎ちゃんぽんの名店があって、こちらの方が知名度は高いようだが、ぼくは断然「長崎」派だ。炒飯もうまいし、持つ煮込みがあるのも嬉しい。

 お目当ての「サムタイム」は三軒茶屋から茶沢通りを下北沢の方へ向かう途中にある。幸い店は空いていたが、これといった収穫は得られなかった。

 並びにある靴屋さんの「ヘップコーナー」がいい。いまはもうこの意味がわかる人も少ないであろう。『ローマの休日』でオードリー・ヘプバーンが履いていたサンダルに似ていることから「ヘップ」と呼ばれるようになったつっかけサンダルのことである。

▲この店は、右手前にワラジがぶら下がってるのもいいね。

2016年8月シ日

 次に書く本のために、サザンオールスターズと安全地帯のレコードをオークションで入札する。どちらのバンドもぼくの趣味ではないので、これまでの人生で一枚も買ったことがない。

 ぼくにとってレコードというのは「自分が聴きたい」「人に聴かせたい」「レアなので持っていたい」という3つの理由のどれかで買うものだったが、いまは「次に書きたいテーマに必要だから」という理由も加わった。これがすごく斬新で楽しい。まさか自分がサザンや安全地帯のレコードを買う日が来るなんてねえ。

 

2016年8月ヨ日

 柳下毅一郎氏の『シン・ゴジラ』評が載っているというので、「TVBros.」を買ってきた。読み終えたら、マニタ書房の店頭に設けてある「フリーペーパー置き場」に放り込んでおこう。読みたい人がいたら勝手に持っていってね。

 

2016年8月ボ日

 ガシャポン──いまはカプセルトイと呼ぶのかな? それが大人気である。ぼくは怪獣とかヒーローなどのキャラものには興味がないので滅多にお金を入れることはないけれど、ロックアイコンのガシャポンがあったらすげー欲しい。ロックアイコンというのは、そのポーズだけで「ああ、アレね」ってわかるようなやつのことだ。

▲エルビスはいいけど、スコーピオンズのアレはダメだろうなあ。



 

53 八つ墓村と福岡〜熊本ツアーと掟ポルシェの白目

2016年7月マ日

 永六輔さん逝去。マニタ書房に永六輔さんの本はあったかなと在庫を調べてみると、『終りのない旅』があった。この本は巻頭にバリ島の衣装を着て踊る永さんの写真が載っていて、それがたまらん味わいなのだった。

 

2016年7月ニ日

 娘が16歳の誕生日を迎え、今夜は家でお誕生会をする。マニタ書房は店休日だけれど神保町には出かけて行って、東京堂書店と三省堂書店を回って娘のプレゼント用に本をしこたま買う。

『夏への扉/ロバート・A・ハインライン』
『そして誰もいなくなった/アガサ・クリスティ』
『アルジャーノンに花束を/ダニエル・キイス』
『人間椅子/江戸川乱歩』
『八つ墓村/横溝正史』
『時をかける少女/筒井康隆』
『喜嶋先生の静かな世界・森博嗣』

 今回はおもにSFとミステリーの入り口にふさわしい本を見繕ってみたが、うちのお嬢さんはどちらへ転ぶことだろう。どっちでもなく、なんとなく「ホラー」へ転がっていくような予感もするのだが……。

 

2016年7月タ日

 まずは『八つ墓村』から読み始めたお嬢さん、そろそろ三分の一くらいまで差し掛かっているところだが、すでに恐ろしくてたまらないのだという。そんな彼女に余計なアドバイスをする。

 父「では、ここでいいことを教えましょう」
 娘「……な、何でしょうか?」
 父「この小説はね……」
 娘「こ、この小説は……?」
 父「……………………実話が元ネタです」
 娘「ぎゃあぁーーーっ!!!!」

 

2016年7月シ日

 3日間を費やし、福岡から熊本にかけて古本屋(おもにブックオフ)と中古レコード屋を巡るツアーに出発する。飛行機移動の行程は省略して、博多空港に到着。空港でレンタカーを借り、ツアーの始まりだ。

 1軒目の「ブックオフ福岡粕屋店」で4冊購入。ブ「ックオフ熊本八代店」で本を4冊と7インチ2枚購入。「ハードオフ熊本宇土店」で本を4冊購入。「ブックオフ熊本田崎店」で2冊購入。「ブックオフ熊本琴平店」ではとくに買うものはなし。

 ここからレコード屋にも寄り始め、「BEGINNERS RECORD」で7インチを3枚購入。お会計時に可愛い看板猫ちゃんに足をペロペロされるという悶絶プレイが付いてきた。

 次に向かった「NASTY STREET RECORDS 1号店」はブラックミュージック専門のようで、ぼくが買えるものはなかった。「iNaDAY」ではサントラの7インチなど5枚ほど購入。

 ぼくの旅は古本&中古レコード漁りと並行して、ご当地ラーメンの食べ歩きもこなしている。もちろん今回の福岡〜熊本ツアーも例外ではなく、熊本では宿題にしていた「紅蘭亭」の太平燕をやっと食べることができた。

 一旦ホテルにチェクインし、当たりをつけておいた酒場に繰り出し、ほろ酔いになってからホテルに帰る前に夜食のラーメンを食べる。どこへ行くかはもう決めてあった。「桂花ラーメン 熊本本店」の太肉麺である。

 極端に少食なぼくは、お酒を飲んだあとにラーメンを食べることは滅多にないのだが、桂花の本店はそんなぼくにも優しい。なんと通常の太肉麺(たーろーめん)の三分の二の量の「こたろう」というメニューがあるのだ。もちろん味は変わらない。これは少食の飲ン兵衛にはありがたいよね。

 

2016年7月ヨ日

 福岡〜熊本ツアーの2日目。今日もまたレンタカーを駆ってあちこち回る。まずはブックオフ熊本健軍店で4冊購入。

 ここで朝ごはん。もちろんご当地ラーメンだ。せっかく熊本まで来てるんだから熊本ラーメンの名店で食べたい。でも「こむらさき」などの東京にも支店があるような有名店ではおもしろくない。そこで、事前に熊本出身のとり・みきさんに「上京前に地元で常食していたラーメン屋を教えてちょ!」とお願いし、教えてもらっておいた「竜保ラーメン」をいただく。なんの変哲もない熊本ラーメンだけど、スープにかかっていたマー油がやたらと美味しかったなー。

 さらに行程を進めて、「ブックオフ熊本渡鹿店」で7冊購入。「ブックオフ熊本くすのき店」で2冊購入。「ブックオフ熊本北部店」で1冊購入。

 これで熊本での要件は終了。あとはふたたびクルマを飛ばして北上し、福岡へ戻ればいいだけなのだが、途中、西鉄久留米駅にちょっと寄り道する。密かに集めている「パンクじゃないのにピストルズ」のいい物件を写真におさめるためだ。

 それは数年前、たまたまネットで見かけた。ご当地にある皮膚科・心療内科の「おか医院」が駅ホームに掲出している看板が、セックスピストルズのレコジャケのパロディになっているのである。

 パンクと関係ないものにパンクアイコンの意匠が施されているものをぼくはちょこちょこ集めている。ネットで拾った画像だけは保存してあるが、どうせなら現地を訪れ、自ら写真撮って残しておきたい。

 だが、駅前の駐車場にクルマを停め、わざわざ入場券を買い、ホームに上がってみて力が抜けた。すでに契約期間が終了したのか、目当ての看板は消え失せていた……。

 長いことコレクター活動をしていると、こんなことは日常茶飯事だ。くよくよしていても仕方ない。すぐに撤収して先を目指すことにする。

「ブックオフ楽市街道くるめ店」で2冊購入。さらに「ブックオフ大野城市役所前店」で3冊購入。本日最後に訪問しようと思っていた「ブックオフ福岡板付店」はすでに閉業したあとだった。

 福岡に到着。帰京の予定は明日だからもうクルマは使わないのでレンタカーは返却。ホテルでシャワーを浴びたらひとり夜の酒場へ……と言いたいところだが、今夜は地元の友人と飲む約束をしている。そう、先ごろ長く住んでいた中野から奥さんの実家がある福岡へ移住した掟ポルシェ氏と、現地で合流して飲むのである。

▲掟さんの真似をしてみるが、白目を剥くのは案外難しい。

2016年7月ボ日

 福岡〜熊本ツアーの3日目。まずは博多から福北ゆたか線に乗って黒崎へ向かう。自称・古本乙女のカラサキアユミさんに教えてもらった巨大古書店「珍竹林」の閉店セールに闖入するためだ。店頭に置かれた「全品7割引」の看板には、上に「8割引」の紙が貼られている。

 在庫が減って行くにつれ値引率を上げていくのはよくあること。ということはもういい本は残ってないのかな、と心配になったが、店内に足を踏みれて驚いた。なんという在庫の量!

 2時間たっぷり時間を費やして16冊ほど購入。通常なら5〜6,000円は行くところ、8割引なのでこんなに買ってもたったの1,200円だった。まことにありがたい。

 その後、ふたたび福岡に戻って中古レコードとCDの祭典「サマーカーニバル福岡編」に顔を出す。7インチ盤だけに集中して見ていき、ここでは11枚購入。こちらでも素晴らしい収穫がいくつも得られた。

 というわけで、今回のツアーではレコ屋と一般古書店を別にして、ブックオフだけでも福岡と熊本の11支店を訪問したことになる。これによりトータル訪問数は517支店に到達。県単位で制覇したのは岩手、群馬、茨城、埼玉、千葉、東京、石川、山梨、熊本、宮崎、鹿児島、沖縄の12都県となった。

52 チロルチョコとコペ転とデニムハンター

2016年6月マ日

 三センチ四方の四角錐で一口サイズのチロルチョコだが、その包み紙を広げるとジャストでトレカサイズであるのを知り、猛烈に集めたくなってしまう。トレカサイズということは、トレカ保護用のスリーブにもぴったり収まるわけで、トレカ収納用の9ポケットバインダーにも綺麗に収まるわけだ。

 しかも、チロルチョコはレギュラー商品の他に限定フレーバーがあったり、個人がオリジナルを作れたりもするから、そのバリエーションは無限だ。実際、コレクターが何人もいるらしい。

 まあ、その先には地獄の底なし沼が待っているだけなので、ぼくのような蒐集狂は手を出さないほうが身のためである。

 

2016年6月ニ日

 本日発売の雑誌『Spectator 36号 特集:コペ転』にて、ロングインタビューを受けている。出来上がった記事は、インタビューというよりも、ぼくについてのドキュメンタリーのようなものに仕上がっていて、我がことながらおもしろい。できれば一人でも多くの人に読んでいただきたいものだ。

 ちなみに、特集タイトルの「コペ転」というのは、コペルニクス的転回の略。コペルニクスが天動説を捨てて地動説を唱えたことから、世界の見え方が一気に変わる際の形容として使われる。それを「コペ転」と略したのは、ぼくの知る限りでは長谷川法世氏の『博多っ子純情』が最初だろう。

 

2016年6月タ日

 Twitter(現在はX)をエゴサしていて、ぼくの『無限の本棚』(アスペクト)をブックオフで入手したという方のツイートを見つける。

 ぼくは古本屋だし、ブックオフも大好きだから、そこに自分の本が並んでいるのは大歓迎だ。新刊ではなくブックオフで買ったその方にも何ら含むところはなく、楽しく読んでいただけるといいなと思うだけである。

 それより驚いたのは、その方のツイートに添えられていた画像だ(他人様の写真なので勝手に転載はできない)。それはブックオフの棚に『無限の本棚』が並んでいる様子なのだが、そこには「コレクション」と書かれた仕切板が挿してあるのだ!

 これまで日本全国のブックオフを500支店ほど巡ってきたけれど、コレクション関連の書籍をまとめたコーナーが作られているのなんて見たことがない。つぶやき主のプロフィールを見ると神奈川県在住の方らしいが、いったいどこの支店なんだろう……。

 

2016年6月シ日

 渋谷のブック1stで「BRUTUS」誌のバックナンバー(No.824)を立ち読みしたら、おもしろい記事が載っていたので購入。ネバダ州のデニムハンターの話である。

 デニムハンターというのは、廃棄された古い倉庫や廃墟などを訪ねて、ヴィンテージ物のデニム(主にジーンズ)を探している人たちのことだ。ヴィンテージデニムが高額で取引されているのは知っていたが、それを専門に集めて回る人たちがいたんだね。

 で、この記事でおもしろかったのは、彼らが目をつけたのが単なる廃墟ではなく、ゴールドラッシュ時代の廃鉱山だということだ。そう、一攫千金を夢見て金塊を掘る人たちは作業着としてジーンズを履いていたわけで、そんな彼らが脱ぎ捨てていったジーンズが出てくれば、たいへんな金額になるのだ。

 ぼくは昔から埋蔵金の話が大好きだけど、金が掘り尽くされた現場から、新たな金塊(ヴィンテージデニム)が出てくるかもしれない、というのは実に夢がある話じゃないか。

 

2016年6月ヨ日

 そろそろ本気でマニタ書房のレコード販売部門の改革に乗り出そうかと考えている。レコードは本よりもたくさん陳列できるから、うまく仕入れることができれば売上向上にもつながるはず。

 これまでは1枚1枚それぞれ値付けしていたが、あんまり意味がないし在庫管理がめんどくさくなるだけなので、100円、300円、500円、あとはそれ以上、という4段階に分けることにする。

 これからやるべきことは、自宅を片付ける→店に置いているDJシステムと個人的なレコードコレクションを自宅へ移動する→自宅のメタルラックを店へ運び込む→売り物のレコードすべてに新しい値付け(おもに値下げ)をして陳列する。……と、ここまでをなんとか7月中に済ませたいものだが、ズボラなぼくにそれができるとは思えない

 

2016年6月ボ日

 今日は店を休みにして店内で書きもの仕事をしていたところ、遠方から東京出張のたびに寄ってくださる常連さんがご来店されて、まとめて1万円も本をお買い上げくださった。ありがたいことである。よし、パーッと飲みに行くかー!

51 TONYレコードとリスを捕って売れ!とアレコード

2016年5月マ日
 マニタ書房が入居している小川図書ビルの2階にTONYレコードさんが入居してきた。そのおかげで、レコード目当てのお客様がうちにも流れてくるようになった。いままでは自分の不要レコードを置いているだけだったけど、こうなると商品としてのレコードを本気で仕入れたほうがいいのではないか、という気がしてくる。
 いやいやいや、当初に立てた営業方針がブレる店は潰れるので、レコードを売るにしてもほどほどにしておくべきだろう。

 

2016年5月ニ日
 ブックオフで仕入れた渋谷陽一氏の本に、とてもいい栞がはさまっていた。

▲古沢和宏さんの提唱する「痕跡本」も楽しいが、こうした古本に挟ま
っている紙モノも、集めてみるといろいろなことが見えてくるものだ。

2016年5月タ日
 ぼくはよく本にまつわるトークライブのときに、珍ビジネス書の『リスを捕って売れ!』をネタにするけど、冷静になってよく考えると、マニタ書房という店自体がまるでリスを捕って売ってるような商売だということに気がついた。著者の人、これまで笑ってすまなかった!

 

2016年5月シ日
 大阪へ出張する新幹線の車中、普段は見ることもない迷惑メールのフォルダを確認してみたら、TBSラジオ「伊集院光とらじおと」のディレクター氏からメールが来ていた。珍レコ紹介コーナー「アレコード」への出演依頼である。メール到着からすでに9日も経過していたので、依頼がまだ有効がどうかはわからないが、あわてて返信する。

50 アビーロードとエアロビスタジオと吉野朔実さん

2016年4月マ日

 昨夜、仕事帰りに地元のリサイクルショップを覗いてみると、店頭ワゴンの中に何枚かの中古レコードが並べられていた。ひと通りチェックしてもありきたりのものばかりで、収穫と言えるようなものはなかった。それでも、こういう行為を徒労と思わずに見る習慣をつけるのは大事なことだ。コレクターなら、そして古物商なら尚のこと。

 

2016年4月ニ日

 熱心なビートルズファンの男性が、8年もの年月を費やしてイギリス国内にある全132箇所の「アビイロード」を訪問したというニュースを見た。

 記事によると男性は〈家の近くにビートルズのアルバムとは関係がない“アビイ・ロード”があった〉ことを知り、ならばイギリスにはどれほどの“アビイ・ロード”があるのかが気になり始め、それらをすべて訪ねてまわったのだという。

 まるでエアコレクターの鏡のような人である。

 エアコレクターというのは、ぼくが提唱しているコレクターの概念で、何も集めないコレクター、つまり究極のコレクターの在り方だ。

 日本は地震大国だ。地震、火事、雷、津波。いつなんどき自然災害が襲いかからないとも限らない。ひとたび津波に襲われれば、家もコレクションも、ときには家族さえも失ってしまう。そんななかで物を溜め込むことにどの程度の意味があるのか。物はいつかは消えてなくなる。だから、現物に頼るのではなく、概念を集めればいいのだ。

 ……という非常にわかりにく〜い話なので、正しく理解したい方は拙著『無限の本棚』を読んでいただくのが一番なのだが、まあ、かなり乱暴に要約するとスタンプラリーみたいなことだ。そして、このイギリスの男性は自分で、ビートルズの「アビイロード巡り」というスタンプラリーを発見してしまい、それを達成したというわけだ。この人と一緒に昼酒を飲みに行きたい〜。

 ちなみに、イギリスにはそんなにたくさん「アビーロード」があんの? と素朴な疑問もあるのだが、「abbey」は「修道院」という意味なので、日本で言うところの「〜参道」みたいなことだという。そりゃアチコチにあるやね。

 

2016年4月タ日

 店番をしていたら、植地毅さんがご来店。ぼくのゲームデザイナーとしてのデビュー作である『エアロビスタジオ』の北米版ソフトを持ってきてくれた。

 あれは当時、バンダイの下請け会社からの「ファミリートレーナー用にエアロビクスを題材にしてゲームを作る」というザックリした依頼で、開発用のトレーナーマットも支給されなければ、定例会議も何にもなかった。ただぼくがエアロビのビデオを見ながら絵コンテに書き起こし、数週間でチャチャっと仕様書にしたやっつけ仕事だった。仕様書を提出してから数ヶ月後に、忘れた頃に完成品のカセットがひとつ送られてきただけである。

 だから、その後に海外版が作られていたことなんて知るはずもない。そのパッケージを目の前に出されて「へー」と驚きはしたものの、これといってなんの感慨もなかったな。

 

2016年4月シ日

 今日、ある友人に急に誘われて北千住の幸楽へ行く。すると、そこには共通の友人である中川いさみ氏と吉田戦車氏が先に来ていた。そしてよく見れば三人とも喪服を着ている。なんと、吉野朔実さんの葬儀の帰りなのだという! 急逝された吉野さんの葬儀帰りで、この店で飲んでいたとのだそうだ。

 吉野さんの死はあまりに急なことで、彼女の手帳に残されていた仕事仲間にしか連絡ができずにこのようなことになったが、とみちゃん(ぼく)も彼女とは親しかったので早めに知らせるべきだと、こうして呼んでくれたのだという。 

 彼女の急逝にぼくがどれだけショックを受けたかをここに書いても意味がない。ただ、みんなと別れたあとに自分の行きつけの店へ行き、涙の流れるままに一人でラムソーダを飲んだ。