21 赤尾敏とリアル鬼ごっこと人喰い人種

2013年11月マ日

 今日の閉店間際、やけに貫禄のある初老の紳士が店に来た。見るからにヤクザ、という風体ではないのだけど、あの貫禄は堅気ではなさそう。で、発した第一声が「ヤクザの本ある?」なのだ。

 また都合がいいのか悪いのか、マニタ書房には「ヤクザ」なんてコーナーがあるわけで、恐る恐るその場所を案内して差し上げると、しばらく吟味なさったあと、山口組六代目の写真集など数冊を買っていかれた。ビビるぜ。

 

2013年11月ニ日

 午後に店へ出勤し、まだ路面へ看板を出さずに4階のドアを開け放って作業していたところ、お客様が階段を上がってきた(そういうことはたまにある)。まだ開店前ですよ、と追い返してもいいのだが、せっかく来てくださったのだから「どうぞ」と招き入れる。

 お客様は店内をひと回りしたあと、「底抜け!大リーグカードの世界」(新品)だけピンポイントで買っていかれた。ということは、ぼくの読者なのだろうか? でも、とくに話しかけられるわけでもなかった。なんてことないが、ちょっと不思議な気分である。

 

2013年11月タ日

 マニタ書房は、オープン時の在庫の半数はぼくの個人的な蔵書を並べたものだが、今日はその中の一冊である『赤尾敏写真集 人間の貌』が売れた。値付けは5,000円。蔵書の処分だから安くしておいたのだが、レジを打ったあと買ってくれたお客様がこう言い放った。

「これ、ネットなんかでは一万円以上しますよ!」

 カチンときたね。このように、買い物したあとでその値打ちをひけらかす(ときには店主の無知を笑う)輩がいるのは古本業界あるあるのひとつで、ぼくもよく知っていたが、まさか自分がその目に遭うとは思わなかった。

「だったら12,000円に値付けを書き換えますので返してください」とでも言ってやりたかったが、もちろんそんなことはしない。

 マニタ書房は、おもしろい本を、そのおもしろさをわかってくれる人に、少しでも手頃な値段で届けたくてやっている店だ。多少でも利益が出さえすれば、ギリギリまで値付けを下げる。でも、こんなことを言われると、値段を吊り上げたくなってしまうよ。

 Twitterに思わず「うちの娘には、すごい掘り出し物の本を見つけても、無表情を装ってレジに差し出して清算が済んだあと店主に『これネットでは倍の値段が付いてたんですよねー』とか言う人間にだけは、決してならないで欲しいと願う」とつぶやいてしまった。

 

2013年11月シ日

 今日は朝から横浜方面へ「リアル鬼ごっこ探しの旅」に行ってきた。それはいったい何か? リアル鬼ごっこ』とは、小説家・山田悠介氏のデビュー作である。本文中には、

〈二人が向かった先は地元で有名なスーパーに足を踏み入れた〉

 という有名な一説があり、唖然とする設定とこうした破壊力満点の文章が話題を呼び、自費出版でのスタートながらトータルで30万部を超えるベストセラーとなった。

 ぼくが最初に手に入れたのは第6刷で、これでもかなりの衝撃だったのだから、編集者の手が入っていない初版はさぞかし凄かろうと、ブックオフへ行くたび探していた。

 2008年の9月から探し始め、同年の11月に第3刷を入手。それから今年、つまり2013年の7月には第2刷を発見した。

 そして本日、神奈川方面のブックオフを巡ってきたところ、とうとう初版と出会うことができたのだ。

 見つけた瞬間のことを記録しておく。

 この日は「新百合ケ丘オーパ店」「大和西鶴間店」「大和つきみ野店」「横浜あざみ野店」「246三軒茶屋店」と5軒のブックオフを回った。そのうち「大和西鶴間店」の105円棚には『リアル鬼ごっこ』が2冊あった。それをまとめて掴み取り、奥付を確認する。1冊目は8刷。このとき、心の中で「お、ひと桁……」とつぶやく。これ、刷りの数がひと桁の『リアル鬼ごっこ』を見つけるたびに毎回つぶやいているのだ。9刷のものを見ては「へえ、ひと桁……」とつぶやき、2刷のものなら「ナイスひと桁……」とつぶやき、6刷なら「このへんのひと桁はいちばん見かけるな……」などとつぶやく。続けてもう1冊の奥付を開いた瞬間、そこに「初版第1刷発行」の文字を見たのだ。初版! 初版! 初版! 探そうと決意してから4年かかったが、いざ出会ってみれば呆気ないものだった。

 思えば、ぼくのリアル鬼ごっこ初版探しの旅は、この「ひと桁」の大小を行ったり来たりする旅だったのだとも言える。

 ようやく手に入れた初版だが、では2刷と初版ではどこか違うのだろうか? 結論はノーだ。2刷と初版を総ページ数で比較しても、どちらも325ページと同じ。各章の目次もページにズレはない。問題の「二人が向かった先は地元で有名なスーパーに足を踏み入れた。」という文章も同様だ。したがって、編集者によって磨かれる前の原石のような文章は、何も初版を求めなくとも2刷で味わうことが可能だったのだ。でも、それでいいのだ。この旅も今日で終わり。いつの間にかリアルな鬼ごっこに巻き込まれていたぼくは、ようやく鬼の背中をタッチした──。

 

2013年11月ヨ日

 近頃、とても忙しくなってきた。マニタ書房の業務があるのは当然として、他にもフリーライターとしての原稿依頼は着実に増えている。レギュラーで「エキサイトレビュー」「ナビブラ神保町」「ビッグコミックオリジナル」「フリースタイル」に書かせてもらっているうえ、イレギュラーでも各種の雑誌や単行本の仕事が来るようになった。とあるゲーム開発の仕事にも関わっているし、ロフトグループを中心としたライブハウスでのトークイベントも定期的に声がかかるようになった。とてもありがたいことである。

 いまでも、仕事がゼロになった4年前を思い出す。失業給付金をもらいに行くため、女房に運転してもらってハローワークへ急いでいる途中、うっかり一時停止無視をやった女房が隠れていた警官にキップ切られ、そのせいでハロワの営業時間に間に合わなくなったときは、いろいろと情けなくて死にたくなった。あるいは、気晴らしで深夜に女房とドライブに行った際、ふいに自分が誰からも必要とされていない気がして涙が止まらなくなり、女房にしがみついて泣いたこともある。いまのこの忙しい状況を、あいつと喜び合いたかった。

 

2013年11月ボ日

 ブックオフはいろいろ批判されがちだ。曰く「一律の値付けが本の価値を貶めている」、「本を文化ではなく物としてしか見ていない」、「出版不況を加速させる原因のひとつである」などなど。

 でも、ブックオフ──新古書店といっても結局はただの古本屋なんだから、なぜブックオフだけが悪者にされるのか、ぼくにはわからない(もちろん、そこにはぼく自身が古本屋であるという贔屓目があるのは認める)。

 ブックオフを散々回っていて感じるのは、あそこに並んでいるのは基本、売れた本ばかりだということだ。ベストセラーになればなるほど、中古市場にも大量に出回り、ブックオフの店頭に並ぶ。逆に、売れてない本(ぼくの本とか)は、ブックオフでは滅多に見かけない。

 だから、ブックオフのせいで本(新刊)が売れなくなるとか、著作権者に支払われるべき対価が失われているというような話を聞いても、どうもピンとこない。そもそも売れなきゃブックオフには並ばないのだ。

 本や雑誌の販売部数が減っているのは、ブックオフやその他の古本屋のせいじゃない(影響がゼロとは言わないが)。読書より他に時間を奪うもの(ゲームとかスマホとか)が登場しているからではないのかな。出版点数が少なかった時代(古本屋が少なかった時代)と、出版点数が多い時代(新古書店が乱立する時代)で、古書流通による著作者利益の損失にどれくらい差があるのか、数字で比較してみたいな。おそらくそれほど違わないのではないか。

 誰とは言わないが、ブックオフを目の敵にしている作家の言い分は「たくさん売れてるおれの本がもっとたくさん売れるチャンスをブックオフが阻害している!」という風にしか聞こえない。少なくとも「文化を守ろう」と言っているようには聞こえない。

 ぼくは「あなたの本をブックオフで買いました」って言われたら、ふたつの意味で感激してしまう。ひとつは「ぼくの著書もとうとうブックオフに並ぶほど売れたか!」と。もうひとつは「そんなレアな本をよくぞブックオフで見つけてくださいました!」と。

 そんな感じでブックオフが好きすぎて擁護するわたくしですが、少しだけ苦言を呈すると、客が本を探してるのにその前に入ってきてドカドカ在庫を補充するのはやめていただきたい。お客様の快適さより、店の作業効率を優先させるのは、なんだかなあと思う。

 あと、105円コーナーで立ち読みしてるお客さんにもひと言。キミら105円の本くらい立ち読みしてないで買いなさいよ。たった105円のお金すら出すのを惜しんでいたら、出版文化じゃなくて、キミらの心の中の文化が死ぬぞ。

 ※ブックオフに対する風当たりも、この日記を書いた当時と現在ではずいぶん変わってきているし、ブックオフの業態そのものも変化してきているようだ。まさか、このときから約10年後に自分がブックオフ公式の仕事をすることになるとは思わなかった。

 

2013年11月ウ日

 姉妹社から刊行されている『サザエさん』は、蒐集のゲームバランスが良いのではないかと、昔から想像している。

サザエさん』の単行本はカバーの用紙がビニールコートされておらず、古本屋に並んでいるのはあまり状態のいいものが少ない。ただ、ロングセラーなので数だけは出回っているから、「状態のいいものをコツコツ探して全巻揃えるゲーム」だと考えると、蒐集の遊びとして非常にゲームバランスがいいように感じられるのだ。全68巻という数もいい。自分で集める気にはならないが、店に置くために全巻セットを組んでみるのはいいかもしれない。

 そうそう、マニタ書房には一冊だけ常備している『サザエさん』があるのだった。それが最終巻である68巻だ。これのラストには「ひょうりゅう記」と題するエピソードが収録されていて、サザエさん御一行を乗せた船が沈没して漂流し、たどり着いた島の人喰い人種に食われそうになるというものだ。この人喰い人種が褐色、腰ミノ、分厚い唇、でかい鼻という現在は完全にアウトな描写で、現行の単行本には収録されていない。

 古書市で見つけるたびに仕入れて、マニタ書房名物「人喰い」コーナーに並べている。

20 本の雑誌と安達祐実と蒐集100万年

2013年10月マ日

 先月、かつて「週刊プレイボーイ」誌で編集長を務めていた島地勝彦さんの取材を受けた。氏が「月刊リベラルタイム」で連載している「ロマンティックな愚か者」という記事に、マニタ書房の店主であるぼくが取り上げられたのだ。自分で言うのもなんだけど、赤字覚悟で半分道楽みたいな古本屋をやっておやじを「ロマンティックな愚か者」とは言い得て妙である。

 ライターとしてのぼくは「週刊プレイボーイ」とは縁がなく、これまで(そしておそらくこれからも)原稿を書くことはなかったが、島地さんは「週刊プレイボーイを100万部雑誌に育て上げた男」として、業界で名を知られる人物だ。そんな方がマニタ書房に注目してくださるというのは、実に光栄の極みである。

 掲載誌「月刊リベラルタイム 11月号」は2013年10月03日発売

 

2013年10月ニ日

 数年前から温めているアイデアがある。オリジナルのスカジャンのデザインで、どこか作ってくれるところはないものだろうか? こちらで用意したデザイン画をそのまま刺繍してくれるところはあるが、できれば生地から選択できるところがよい。セミオーダーってことになるのだろうか?

 ※と、以前からぼんやりと考えていたアイデアが次第に明確な形として見えてきたので、この日に上記のようなことをTwitterでつぶやいた。ここから半年後に、ハードコアチョコレート代表のMUNEさんに相談したところ、その場で制作が決まったのだった。これが後のナスカジャンになるのである。

 

2013年10月タ日

 ただいま発売中(※2013年の話です)の「本の雑誌 11月号」に、「マニタ書房の作り方」というエッセイを寄稿している。ぼくがなぜ古本屋を始めようと思ったのか、そして実際に開業するうえでのノウハウなどを語っているのだ。

 ぼくは椎名誠さん直撃世代で、『さらば国分寺書店のオババ』とか『気分はだぼだぼソース』とか『もだえ苦しむ活字中毒者地獄の味噌蔵』とか、すべて貪るように読んだ。なかでも『哀愁の町に霧が降るのだ』は、まだ何者でもなかった若者たちの群像劇として自分を重ね合わせながら繰り返し読んだものだ。

 それから数年後、「よい子の歌謡曲」への投稿から編集スタッフを経て、フリーライターになった。「よい子」編集部では、発行人の加藤秀樹くんから「よい子が地方へ販路を拡大できたのは、目黒孝二さんに地方・小出版流通センターを紹介してもらったからなんだよ」と聞かされて感動したものだ。

 そんなぼくなので、「本の雑誌」に原稿を書かせてもらえるようになったのは、なんというか非常に感慨深いものがある。

 椎名誠さんといえば、あるとき丸ノ内線に乗り込んで、ふとドア上を見あげたら、椎名誠さんが出ているサントリービールの広告が貼ってあった。「椎名さんすげえなあ、本も売れまくってるし広告にも出てらぁ」なんてぼんやり考えていたのだが、次の駅に着いたらそのドアから椎名さん本人が乗ってきて、ぼくの真正面に立ったことがあった。思わず広告と本人とを交互に見ちゃったよ。

 

2013年10月シ日

 皆さんご存知のように、ぼくは一般の古書コレクターが求めるような貴重本には興味がない。そういう本は古書市では特別な存在として、棚挿しではなく、面出し(表紙をお客様のほうへ向けて展示)されていることが多い。でも、そういうのには目もくれず、ぼくはあくまでも棚やワゴンの中だけを漁る。そういうところには、古書マニアがクズ本と切って捨てるような本ばかりが埋もれている。でも、そんなクズ本の背表紙を必死に目で追っていると、ときどきキラリと光るタイトルと出会うことがある。

 どうでもいいビジネス書に紛れた『安達祐実になれる本』というタイトル。おやおや? と思ったね。

 でも、安心するのはまだ早い。いくらタイトルがおもしろそうでも、棚から引き抜いて表紙を見たらまるで魅力的じゃなかったり、あるいは表紙がそこそこ魅力的でも、中身はすごくつまらない切り口の本だった、ということはよくある。その善し悪しの基準はひと言では語れないけれど、毎日ものすごい数の古本を見ていると、そういうのがだんだんわかるようになってくる。

 で、この本を棚から引き抜いたら、こんな表紙だったわけだ。

針すなお風の似顔絵がいい味。

 これを目にした瞬間、この本がどういう素性のものかわかった。だって芸能人のことを書いた本なのに、その人物の写真が使われていないのだ。つまり、これは「安達祐実の人気に便乗して勝手に出しちゃった系の本」ということなわけで、そういう本は大好物である。

 気になる内容は、人気子役である安達祐実の魅力を紹介しつつ、「子役とはどうあるべきか」を語り、「子役の仕事のいろいろ」を解説し、「オーディションの必勝法」を伝授し、最後には「子役のための養成機関」や「事務所の一覧」まで掲載している。なーるほど、これはまさしく「安達祐実になれる本」だ。というか「うちの子を安達祐実にする本」ですね。

 

2013年10月ヨ日

 念願だった古本屋を始めて、一年が経過した。この日は「マニタ書房 開業1周年記念パーティー」である。まあパーティーといっても昨年のオープニングと同じく、狭い店内でお酒を飲みながら営業するだけのことだが。

 11:00~20:00くらいまで店を開放し、店内ではBGMにシーパンクを流しながらビールなど飲んでいるので、誰でもウェルカムである。

 ※この当時、ぼくは夢中になってシーパンクばかり聴いていた。

 

2013年10月ボ日

 ぼくがフリーライターとしてデビューした日を、いつと認定するか? 同人誌(よい子の歌謡曲)はさておき、初の商業誌デビューが1984年1月10日刊行の『ザ・シングル盤』(群雄社)なので、来年の1月でちょうどデビュー30周年ということになる。

 そこで、新宿ロフトプラスワンにて、とみさわ昭仁デビュー30周年記念イベント「蒐集100万年」を自分で企画して自分で主催することにした。ゲストにせんべろ古本トリオの安田理央柳下毅一郎、コレクター友達の石川浩司、『人喰い映画祭』の装画でお世話になった寺田克也(以上敬称略)を招いて、愉快なトークを繰り広げる予定。皆さんお誘い合わせのうえ遊びに来ていただきたい。

▲わざと寝癖のある写真を選んだのだが、うまく伝わらなかった。

 ※当然ですが、イベントはもう終わっています。

19 古本ゲリラの可能性とフリースタイルと神戸ツアー

2013年9月マ日

 古本ゲリラは、みんなで古本を売ったり買ったりする行為がしたくて始めたイベントだけど、ぼくは自分でリアルな古本屋を始めて、実店舗まで持ってしまったものだから、もう古本ゲリラをやることはないだろうと思っていた。

 けれど「またやってほしい!」という声はたくさん耳に届くし、古本ゲリラがきっかけで渋谷直角くんの『カフェボサ』のような作品が生まれたりしたことも考えると、今後も続ける意味はあるのだろう。

 ただ、第2回の古本ゲリラは、ラッキーなことに第1回のときの倍以上のスペースを無料で借りられたからあの規模でやれたわけだけど、あれと同等のスペースを無料(もしくは限りなく低価格)で借りるのは常識的には無理。だから、もしも第3回をやるとして、前回と同等かそれ以上の出店者を募るのはできそうにない。

 第1回の会場として使わせてもらったnakanof(ナカノエフ)はJR中野駅からも近いし、オーナーがいろいろと融通を利かせてくれて、とてもいい会場だった。でも、あそこでやるならまた出店者を第1回のときの数(つまり第2回の半分)に減らさないとならない。それはやっぱり寂しいものだ。

 出店者は第1回が24組で、第2回が53組。これで第3回がまた25組くらいに減ったら、お客さんから見てもショボくなった感じがするし、出店者の何人かは「えー、次はおれ出れないのー?」ってなって悲しい思いをするだろう。

 どうせ誰かを減らさなきゃいけないのなら、いっそ全員減らして、古本トリオ(安田、柳下、とみさわ)の3人だけでやってはどうか? それなら出店者のみんなは許してくれるんじゃないか、なんてことも考えた。でも、それだとたぶんお客さんが許してくれない。

 古本ゲリラの会場は、単なる箱モノ施設でいい。ただ、「飲みながら古本が買える」のが古本ゲリラの基本コンセプトなので、冷蔵設備だけは必要。音響とかはあってもなくてもいい。出展者の誰かがノートPCから勝手に音楽をかけたりするだろう。

 そして、ここが大事なところなのだけど、所詮は古本市だから出店者が大きな利益を得ることはまずあり得ない。となれば、出店料は無料か、可能な限り安くしておきたい。そのためにも会場のレンタル料は激安が望ましいわけだ。どこかそんな会場はありませんか?(※いまは募集していません)

 

2013年9月ニ日

 夕方から打ち合わせが入ったため、本日は店の営業を取りやめる。いや、家を早く出て、11時くらいから店を開け、夕方まで営業すればいいだけのことなのだが、そんなことができたら古本屋などやっていない(いま、全国の古本屋さんを敵に回した)。

 仕事は1日ひとつまで。打ち合わせがある日は、仕事はそれだけ。我ながら怠惰だなー。

 

2013年9月タ日

 雑誌『フリースタイル』の執筆陣には友人知人がたくさんいるので、そのうち自分もそこへ加わりたいと思っていた。そうしたら、タイミングよく編集部から声がかかり、執筆陣に混ざてもらうことができた。とてもありがたいことである。

 マニタ書房を始めてから、小さな夢が次々と叶っていて嬉しい。まあ、ぼくにとっていちばんの夢は「古本屋をやりたい」ということだったから、その夢はすでに叶っているわけだ。そんなマニタ書房という場が、いろいろな人との出会いの場にもなっていて、それが連鎖的に小さな夢をも叶えてくれる。本当に店を始めてよかった。

 最近はありがたいことにライターとしての仕事も順調に増えてきて、その分、店を開けられる時間が減っている。かといって、店番のバイトを雇えるほど稼げているわけでもない。実に悩ましいところである。いまいただいている原稿料がすべて倍額になれば、マニタ書房はアルバイトを雇って年中無休の店になることだろう(なんねーよ)。

 

2013年9月シ日

 ライター仲間の安田理央柳下毅一郎と組んでいるユニット「せんべろ」古本トリオで、神戸遠征をすることにした。神戸の古本屋巡りとうまい酒、それだけでも楽しそうなのだが、せっかく神戸まで行くのだから、地元の友人との交流も深めたい。そこで声をかけたのが神戸在住のロック漫筆家の安田謙一氏だ。

 まあ、ぼくらみたいな商売をやっていて古本屋や中古盤屋を嫌いな人間なんていないと思うのだが、安田(謙)さんも例に漏れずそういう店が大好きで、当然のように地元神戸の古品屋にはメチャ詳しい。これはいいナビゲーターになってくれそうだ。

 で、ここはぼくの意地汚いところなんだけれど、どうせこれだけのメンツが集まるのなら、その日の夜に古本トリオ+安田謙一トークショーをやれば、そこそこお客さん入るんじゃね? そうすると往復の交通費は無理でも、宿泊費くらいにはなるんじゃね? と算段した。

 世間的には売れっ子に見えるかもしれない我々だけど、出版不況のこの時代、フリーライターがそう稼げる職業でないのは誰もが知るところ。だから、投資をすると同時になんとかして回収することも考えなければならないのだ。世知辛いねえ!

 てなわけで、当日まわる古書店のルートは安田(理)&柳下さんにお任せして、あとはアドリブ的に安田(謙)さんお勧めの古本屋を回れば良いだろう。ぼくは、トークの会場として元町映画館さんに交渉して時間と場所を確保してもらった。

 ※当日の楽しげな様子は、togetterにまとめてあります。

togetter.com

 

2013年9月ヨ日

 2013年2月ヨ日にカラーブックス『豆盆栽』のことを書いた。ツイッターで見かけた「長年『豆盆栽』を探している人」のために、たまたま見つけたその本をセドリして店頭に出しておいたら、当の本人が来店して買ってくれたという話。

 その後、もっと状態の良い本を見つけたのでふたたびセドリし、今度はそのお客さんのツイッターアカウントがわかるので、交換を呼びかけてみた。

「マニタ書房のとみさわです。以前お買い上げいただいた『豆盆栽』、カバーが反っていてあまり状態がよくありませんでしたよね? 今日、もう少し状態のいいものを手に入れました。もし、以前のやつを持って来てくだされば、無償で交換いたしますよ」

 後日、店に本を持ってきてくださったので、より綺麗なものと交換して差し上げた。古本屋としてはそこまでする必要なんてないのはわかってる。でも、ぼくは古本屋である前に一人の古本マニアだから、機会あればついこういうことをやってしまう。どうりで儲からないわけだが、後悔はしていない。

18 攻略本の巣窟と伊勢うどんと美濃加茂盆踊り

2013年8月マ日

 自分で店を始めてわかったことがひとつある。それは「ドアを開けておくと虫が入ってくる」という事実である。虫といっても、このビルは飲食店が入居しているわけではないのでゴリブリ的なやつは出没しない。せいぜいが蚊とか小さな蛾のようなもので実害はない。それにしても、4階までよく上がってくるな~。

 成澤大輔くんと企画しているトークイベント「攻略本大博覧会」の準備で、関東某所にある松原圭吾くん(おそらく日本一のゲーム関連書籍コレクター)の家を訪問してきた。

 とにかく、家のありとあらゆるところに本棚が設置され、隅から隅までゲーム攻略本とゲーム関連書籍で埋め尽くされている。その物量にはただただ圧倒される。まさに「ここにない本は(この世にも)ないですね~」状態だ。とにかく現物があるということはとても重要で、あれこれ本を見せてもらっているうちに、イベントのいいアイデアがいくつも湧いてきた。

 打ち合わせを終えたあと、成澤くん松原くんと「庄や」で軽く飲んで帰宅。あ、もちろん打ち合わせの前には、周辺のブックオフをチェックすることは欠かしていない。

▲唖然とする成澤大輔。その背後には攻略本山脈が。

2013年8月ニ日

 せっかく古本屋を開業したのに一年と経たずに店を閉めた人のブログが話題になっていて、同業者としては非常に気になるので読んでみた。率直な感想としては「ずいぶん開業資金を投入してるんだなあ」というものだった。

 この日記を読んでいる方ならおわかりのように、マニタ書房は100万円もかけていない。本棚は貰い物だし、その他の什器類もできるだけ中古で間に合わせている。あとは友人たちの優しさに支えられてなんとかやっている。

 とかなんとか言っていたら、神戸の海文堂書店さんが来月末で閉店との知らせが。一昨年に仕事で神戸まで行った際に寄らせてもらったけど、古書と新刊を両方扱っていて、とても雰囲気のいい店だった。出版不況がますます深刻化しているのを実感する。

 

2013年8月タ日

 今日は店を休んで、立川にある未踏のブックオフ2軒を訪問する。まず1軒目「ブックオフSUPER BAZZER 立川駅北口店」にて7冊購入。で、次に向かうべきブックオフへの道すがらにうまそうな煮干しラーメンの店があるので、そこまで歩いて行く。

 食後、駅まで戻ってバスに乗るか迷うが、腹ごなしも兼ねてこのまま歩いて行っちゃえ! と歩き始めたら、思っていた以上に遠い。でもまあ歩くのは好きなので延々と歩いて、「ブックオフ立川栄店」で4冊購入。収穫があってよかった。

 店を出たら真ん前にバス停があったので、そのまま冷房の効いたバスで立川駅まで戻り、そこから神保町へ。買ってきた本を店に置き、事務作業を少し済ませたら四谷三丁目の「スナックアーバン」へ向かう。今夜は石原壮一郎さん主催の「伊勢うどんの会」があるのだ。

 石原さんは『大人養成講座』でデビューしたほぼ同世代のライターだが、故郷の名物である伊勢うどんの普及にも尽力しており、来月には『食べるパワースポット「伊勢うどん」全国制覇への道』(扶桑社)という本も出版される。そうした努力が認められたか、伊勢市麺類飲食業組合と三重県製麺協同組合公認の「伊勢うどん大使」にも就任している。そんな石原さんが伊勢うどんを振る舞ってくれるというわけである。

 アーバンの常連さんの他に、おそらく石原さんの読者であろうお客さんが続々集まってくる。出迎える石原さんは、その都度「今日はよく来てくださいました」と声をかけている。さらに「伊勢うどんも喜んでいますよ」の一言も。これか! これが「大人力」か! と妙なところで感心させられたのだった。

 

2013年8月シ日

 ブックオフ欲が収まらず、この日から三日間かけて愛知、岐阜、長野、八王子のブックオフ巡りをする。お父さんのお出掛けについて行くと美味しいものが食べられるので、娘も同行してくれるという。

 クルマで家を出発し、東名高速で一路西へ。1軒目は愛知県の「ブックオフ豊田柿本店」で11冊購入。2軒目「豊田下林店」で5冊購入。3軒目「豊田朝日店」で1冊購入。4軒目「瀬戸共栄通店」で2冊購入。

 ここから岐阜県に入り5軒目の「多治見大畑店」で1冊購入。6軒目「可児広見店」で3冊購入。7軒目「美濃加茂店」で8冊購入。ここまで来たところでちょうどよく日が暮れてきたので、ホテルにチェックイン。実は、初日の真の目的地はブックオフではなく「美濃加茂おん祭」で、ここの盆踊りでは荻野目洋子の『ダンシングヒーロー』で大量の住人が狂ったように踊る。これをエキサイトレビューでコラムにするために取材しに来たのである。

 現地で録った動画をYouTubeに上げてあるので見てみて。

youtu.be

 

2013年8月ヨ日

 2日目。朝食バイキングもそこそに出発して、8軒目「ブックオフ19号土岐店」で6冊購入。

 ここから長野方面へ向かい、9軒目「飯田かなえ店」で本4冊と、クルマに積んであるCDに聴き飽きたのでツェッペリンのCDを購入。10軒目「座光寺店」で13冊購入。11軒目「伊那店」で8冊購入。12軒目「箕輪松島店」で7冊購入。

 で、中央道を岡谷インターで降りたら、本日の目的のひとつでもある義父の墓参り。いまはもう妻の両親はもちろん、妻本人もいないので岡谷に来る用事はないのだが、近くまで来たらなるべく墓参りだけでもするようにしている。

 その後、再びブックオフへ向かって13軒目「岡谷若宮店」で10冊購入したら、予約してあるホテルにチェックイン。このあと旧友の石埜三千穂くんと夕飯を共にする。

 彼は「ファミコン必勝本」時代のライター仲間で、ゲーム業界から身を引いたあとは故郷の下諏訪へ戻り、諏訪の信仰史や民俗学を研究する「スワニミズム」の事務局長をやっている。かれこれ20年ぶりの再会だ。これもまた、今回の旅の目的のひとつ。

 

2013年8月ボ日

 3日目。今日は中央道を南下しながら未踏のブックオフを巡りつつ家に帰る。14軒目「茅野塚原店」で本を5冊とドライブ用のCDを2枚購入。

 ここで都内に入り、15軒目「八王子大和田店」で11冊購入。16軒目「八王子堀之内店」で5冊購入。17軒目「八王子めじろ台店」で5冊購入。最後は調布の「ロイヤルホスト」で夕食をとって、あとはひたすら千葉県の自宅へ。

 結局、この三日間の旅で17軒のブックオフを回り、古本を101冊、中古CDを3枚買っている。

17 折りたたみ自転車と珍生相談と博士年表

2013年7月マ日

 都内でブックオフ巡りをする際の機動力を上げるために、折りたたみ自転車を買った。なるべくコンパクトに折りたためるやつがいいなと思って、選んだのはSNSで教えてもらった「CARRY ME」。

 ネットで写真を見て、これはぼくが求めていたちょうどいい感じ! と直感した。出先で原稿を書くのにちょうどいいテキスト入力装置を探していて、MacBook Proじゃデカいし、ポメラじゃ小さすぎるし、なんかいいのないかなー、と思っていた矢先にMAcBook Airを見たときの“ちょうどいい感じ”。あれと同じ匂いを感じたのだ。 でまあオンラインで買うこともできるけれど、できれば試乗もしたいしということで、出勤前に町屋にあるサイクルショップ「アライ」で、店頭在庫にあったグリーンの車輛と純正カバーを購入した(ぼくはこういう決断は早い)。そのまま慣らし運転というか、自分自身がこの自転車に慣れるために、町屋から神保町まで走ってきた。

ブックオフ千駄木店に寄り道

 町屋から神保町まではだいたい8キロ弱ってところかな。CARRY MEは車輪の径が小さく、チューブの空気量も少ないので、路面のデコボコをかなりダイレクトに拾ってしまう。だから乗り心地は決してよくない。歩道と車道の段差が繰り返し出て来るエリアはかなり走りづらい。それと、やはり車輪の小ささのせいだと思うが、安定性が悪いので片手ハンドルなんかすると瞬時にグラついてかなり危険。でも、これらのことはある程度予想していたので割り切っている。走りの気持ちよさを求める乗り物じゃないからね。いずれ、電車で出掛けたときに、この自転車の真価が発揮されることだろう。

 

2013年7月ニ日

 神保町周辺にまつわる情報サイト『ナビブラ神保町』にて、今日から「とみさわ昭仁の古本珍生相談」という連載がスタートした。雑誌がメインの時代から読者欄は何度かやっているが、こういうページは読者の皆さんからのお便りが命。一通でも多くのお悩み相談をお待ちしています!

 ※連載はすでに終了していますので、お悩み相談は送らないでくださいね。

 

2013年7月タ日

 雑誌「TV Bros.」での「水道橋博士特集」を読む。約4万字から抜粋して1万字に要約された年表が見もの。すっかり老眼になった身には雑誌の活字は小さくて、なかなか読み進めるのがしんどかったが、堪能した。ぼくも自分の人生を年表に記録し続けている「年表者だから、博士の年表趣味にはおおいに共感する。

 文中にある「大人になってもバカをやってない人はバカになる」。これは町山智浩氏の言葉だと思うが、至言である。ぼくは幸運なことに『ボケモン』の開発に携わることになり、その結果、世界中の子供たちを喜ばせることができた。この運命にはとても感謝しているが、いまはその反動なのか「世の中に誇れる仕事はもういいんじゃないか」と感じている。それでゲーム開発の仕事はやめた。「ポケモン」と同等とは言わないが、それなりのギャラで制作の依頼があればやらないこともないけれど、まあ、そんな機会は訪れないだろう。

 で、残りの人生をどうやってすごそうか。マニタ書房は続けられる限りは続けるとして、物書き──クリエーターとして何をするかだよね。個人的には「どうでもいいこと」「クダラナイことだけ」をして生きて行ければいいなあと思う。人が喰われる映画をひたすら見たり、珍本を集めたり、それを人に売ったり、どうでもいことをコラムに書いたり。世の中の役に立たないことだけをして、社会の隅っこで細々と生きていければ幸せだ。

 

2013年7月シ日

 これは自分が古本屋になる前からのことだけど、よそ様の古本屋で気になる本を見かけると、売値を確認する前に、この店でだいたい幾らくらいの値付けをしているかを予想する癖がある。

 先ほど、出勤途中に寄ったある古書店で見かけた本。「これが500円以下なら店の仕入れになるし、800円くらいでも自分で読む用に買うなら有りだな」と思って棚から引き抜いたら、4,000円だった……。

 でも、たしかにそれくらいの価値はある本だから、その店がボッタクッテいるということではないんだよね。買える値段と売りたい値段。あんまり売れなくてもいいから高めにつけて一冊当たりの利益を大きくするのか、安めにして素早く売り上げに計上するのか。古本屋として悩ましいところであります。

16 怪しい店と古本珍生相談と無看板営業

2013年6月マ日

 ぼくらが子供の頃、町内に一軒くらいは怪しい店があった。見た目はごく普通の古本屋っぽいんだけど、店の一角にちょっと肌色が目立つ雑誌なんかが置いてあって、子供が近寄ろうとすると店のオババに「そこの本は触んな!」とか怒られる。当然、親たちもその店にはそういうものが置いてあるのを知っているので、常日頃から「あのお店には行っちゃダメよ」と言い聞かせている。でも、子供たちの好奇心はそんなことでは抑えることができないわけで、どうやったらあの一角に手を出せるか、知恵を絞って作戦会議などをする。

 まあ、エロに限らず、親が子供に読ませたくない本というのはたくさんある。だってドリフのコントでさえ「教育に悪い!」と言われた時代だからね。いま「8時だョ!全員集合」のコントを見たって、何が教育に悪いのかわからないくらい健全なことをやっている。ただ、基本的に「全員集合」のコントは、加トちゃんら子供たちが、怖い大人の象徴であるいかりやをギャフンと言わせる構造で出来ているので、大人からすれば子供たちがそれに夢中になられるのは都合が悪かったのだろう。

 で、何が言いたかったかというと、マニタ書房はそういう「ぼくが子供の頃に入りたかった怪しい古本屋」を目指している。ということだ。目指せ、子供の教育に悪いオヤジ。

 

2013年6月ニ日

 仕入れた古本の汚れ落とし用に常備してあるマジックリンのボトルを、作業デスクで倒して大惨事。iMacなのでパソコン本体には被害がなくて幸いだったけれど、キーボードを認識してくれなくなった。おそらくキーの隙間に液体が入ってしまって、内部でショートしてるのだろう。ああ、またキーボードの買い替えか。ぼくはApple原理主義なので仕方ないのだが、Apple純正の周辺機器はいちいち値段が高いので困る。ホンのちょっとしたミスで約15,000円くらいのお金が吹っ飛んでしまった。

 

2013年6月タ日

 昨年の12月、ダウンジャケットの胸元にブックオフの値札シールをつけたまま外出していたという話を書いたが、昨日もまた、同じ失敗をやらかした。石原壮一郎さんの事務所へ遊びに行ったら、やはりそこへ来ていた米光一成さんに「とみさわさん、シャツの背中にブックオフの値札シールが付いてるよ」と笑われてしまった。

▲作業デスクがこんな状態では貼り付くのも無理はない。

2013年6月シ日

 神保町の情報サイト「ナビブラ神保町」で「古本珍生相談」という連載を始めることになった。読者から寄せられたお悩み相談に、ぼくが店内にある本から適当な珍書を選び、そこに書かれている言葉を引用して回答するという、なかなか頭脳のアクロバットを要求される連載である。

 で、本日はそのサイトで使用する素材のため、店の外で人物撮影をする。ぼくが古本屋の象徴であるハタキを持って、いろんな関西ポーズで写真を撮られるのだ。

 というわけで撮影の小道具にハタキが必要なんだけど、いまどきそんなもんどこで買えるのやら……と悩んでたら、普通に家にあった。しかも2本も。

 

2013年6月ヨ日

 最近、マニタ書房の看板の仕組みを変えてはどうだろうか、と考えている。看板の仕組みというか、営業中でも看板を出すのをやめてみようかと思っているのだ。

 開業からはや8ヶ月が経過してだいたいわかってきたのだけれど、うちみたいな店は看板を見てやってきた通りすがりのお客さんは、まず何も買わない。いや、べつに買わずに帰っていただいても全然かまわない。それはお客さんの自由。でも、買う買わない以前に、うちの店の主旨がわからなくて首をひねっているお客さんが案外と多いのだ。

 ご存知のように、マニタ書房はライターとみさわ昭仁の仕事場も兼ねているから、そんな通りすがりのお客さんを誘い込んでまで営業しなくてもいいのではないか? というのが正直な気持ちでもある。そこで、看板を出さずに営業してはどうか、と考えたわけだ。

 看板を出していなければ、まずはマニタ書房を知らない通りすがりの人物の来店は排除できる。では、マニタ書房を知っていて、来店したいお客さんはどうすればいいのか? 看板がないと、いま営業中かどうかは階段で上がっていかないとわからない? それはめんどくさい!

 いや大丈夫。営業中のときは、1階の郵便ポストの上の表札のところに「営業中」のサインを出しておくのだ。そういうシステムに変えたことを、店のアカウントをフォローしてくれている人にだけ教えておけばいいわけだ。

 つまり、ある種の会員制古書店ということになるわけだけど、だからといって一見さんを拒否したいわけじゃない。雑誌やネットの記事なんかでマニタ書房のことを知って、興味を持ってくれた人ならいつでもウェルカムなのだ。

 マニタ書房も、開店当初は神保町の街角で道ゆく人にチラシを配ろうか、などと考えたこともある。さすがにそれはしなかったけれど、ロフトグループにチラシを置かせてもらったり、「TRASH-UP」に広告を出したりもした。

 こうした宣伝活動と、店の看板を出さないことは矛盾しているようだけど、それは“わかっている人達”にだけ認知してもらうためなので、自分の中では矛盾していない。客商売としてはとても傲慢な考え方だとは思うけど、はっきり言って趣味の延長ではじめた店だから、まあ、好きなようにやらせてくださいな。

 ※結局このシステムは採用しませんでした。

 

2013年6月ボ日

 お客様からメールにて「一度、訪問したいのですが平日は18:00頃で終了ですか?」との問い合わせあり。

 これに対して店主は、

「ありがとうございます。だいたいそれぐらいで飲みに行っちゃうんですが、とくに予定が入ってない限り、なるべくご希望の時間まで店を開けておくようにしますよ!」

 と返信。「土日祝日は営業していますか?」との問いにも、

「土曜はなるべく店を開けるようにしています。日曜祝日は娘と遊ぶようにしてるので基本はお休みですが、気まぐれで開けることもあります。いずれにしろ、早めに「○○日の△△時頃に来店希望」と言っていただければ、可能な限り合わせるようにしますよ」と返信。

 営業日、営業時間がいい加減ということは、逆に言えばどうとでも対応できるということだ。もちろん、すでに予定(取材・出張・打合せ・行楽・飲酒など)が入っているときは無理だけど、それ以外ならお客様の希望に柔軟に合わせられるのがマニタ書房のいいところなのだ。

15 裸で覚える竹熊さんとビッグダディ

2013年5月マ日

 朝から雨降り。こんな日にわざわざ古本屋巡りをする人も少ないだろうから、店は開けずに家でおとなしく原稿でも書いていればいい。だが、池袋の西口公園では今日から古本まつりが始まっている。うちの店にも客は来ないけど、古本まつりの客足も少ないだろう。ということは、売る側ではなくて、買う側の立場になってみると、それはつまり「ライバルが少ない」ということだ。

 現場に着いてみると、古本を満載したワゴンはすべて大型テントとビニールのカーテンで覆われており、商品の本が濡れるようなことはない。でも、やっぱり雨せいで客足が少なく、古本まつりとしての盛り上がりには欠ける。

 このテンションの上がらなさが、背表紙をチェックするぼくのセドリビーム(ハンター視線)に悪影響を与えているのか、どのワゴンを覗いても、いまいち「欲しい!」と思える本が見つからない。せっかく来たんだから何か買って帰らなきゃ、なんて考えが頭の隅をよぎったりもするが、そうやって無理して本を買ってもロクなことにならないのは経験上わかってる。

 いっそ、スッパリ諦めて何も買わずに引き揚げるのもプロの古本屋としては懸命な判断かもしれない。そう考え始めたそのとき。一冊の本のタイトルが目に飛び込んできた。

▲『裸で覚えるゴルフ入門』(1973/土屋書店/弘文エディター編)

 かつて大槻ケンヂが紹介したこともある、ヘンなもの好き界隈では有名な本で、ぼくは初めて現物に遭遇した。

 タイトルからわかるようにゴルフの教則本で、中身も普通にゴルフの入門解説で構成されている。第1章「知識編」から第2章「基本編」、第3章「実技編」、第4章「応用編」と続いていく。それぞれの見出しも、「自分にあうグリップはどれか」とか、「両足とボールの距離」とか、「芝目の性質」とか、「ラフが深い場合」とか、「ぬれたグリーンは曲がらない」とか、いやらしさを感じさせる要素はまったくない。ただし、それぞれの文章に添えられている写真が、いちいち全裸なのだ。 カバーの見返しには、まえがきの抜粋として以下のようなことが書いてある。

 ゴルフのむずかしさは、自分の技術と判断だけが頼りである、という点から出発している。止まっているボールを打つのが、どうしてむずかしいのか、というかもしれないが、実際にやってみるとそれがよくわかるものだ。
 この本は、あくまでも初心者に焦点をあて、とくにヌードを使って形をわかりやすく表現してみた。画期的な試みであるが、ゴルフ入門の一助にしていただきたいと思う。

 

 なるほど、たしかにショットを打つときの筋肉の動きなんかは、裸の方がよりわかりやすい。編集する側にとっても、読者の側にとっても、十分に必然性のある理由だ。ゴルフのためならあたしがひと肌脱ぐわ、である。いやあ、久々にいい本が手に入った。

 

2013年5月ニ日

 竹熊健太郎さんご来店。彼と初めて会ったのは、いまから30年ほど前。ぼくがまだゲームフリークで出版部をやっていた頃のことだ。相原コージさん作のスーパーファミコン用ソフト『イデアの日』の攻略本を作ることになって、前半の攻略記事を我々出版部が、後半の読み物を竹熊さんが執筆することになった。それ以来のご縁である。

 竹熊さんからはちょっとした相談を受け、こちらも前向きに対応することに。その後、要件もそこそこに店内の本棚を興味深そうに眺めておられる。帰りしな、ご自身のデビュー作である『色単』をお買い上げいただいた。

▲いつもながらのいい笑顔。

2013年5月タ日

 乙武洋匡氏が銀座のレストランに「車椅子だから」という理由で入店拒否されたというニュースが流れ、ネットでは賛否が巻き起こっている。ハンディキャップのせいで人間の自由な行動が制限されるのはとても悲しいことだけれど、店が対応できることにも限界はあるわけで、なかなか難しい問題である。

 ぼくの友人や知人にも足腰が不自由な人がおり、マニタ書房に来たがってくれているのだけど、エレベーターのないビルの4階なので、ご来店いただくのが困難であることを心苦しく思っている。

 

2013年5月シ日

 最近、自分の古本打率が素晴らしい。出掛けるたびに“いい本”を掘り出している。これは別に運がいいというわけではなく、ただ単にすごい数の古本を見ているからだ。普通の人が月に1回か、多くても週に1回くらいしか古本屋に行かないところを、ぼくはほぼ毎日行って、しかも何軒もハシゴする。そんだけ打席に立ってればヒットもたくさん打てるわな。

 今日は、自分と相性のいい「新橋駅前古本まつり」に行ってきた。そう、古本市には相性の善し悪しがある。こうした古本市は複数の古本屋が共同で出店しているので、その中に自分の蒐集傾向に合う本を多く扱う店が入っているかどうかで相性が変わってくる。新橋駅前「古本まつり」は相性がいい。新宿サブナードの「古本浪漫洲」はどうも合わない。同じ新宿でも西口地下の「新宿古本まつり」はいい。高田馬場BIG BOXの「古書感謝市」も規模は小さいながら相性がいい。逆に池袋西武リブロの「古本まつり」は規模はデカいのにどうも相性が悪い。難しいものだ。

 というわけで、本日訪問の「新橋駅前古本まつり」は、さすがの相性のよさで今回も収穫はそれなりにあったが、とくに嬉しかったのがこれ。

ビッグダディが盛岡で開業した接骨院のチラシ!

 店を宣伝したくてバラ撒いているチラシの住所にモザイクかける必要があるのか疑問だが、地元で配るのと、インターネット上に公開するのとは意味が違うだろうから、いちおうモザイクかけておいた。

 しかし、古本屋というのは売れそうなものなら何でも売るねえ。ま、これにわざわざお金を払って買うぼくもどうかしてるんだけれど。

 画像だとわかりにくいかもしれないが、このチラシ、おそらくビッグダディが手描き&ワープロ打ちして切り貼りした版下を、白黒コピーで複製したものだ。ということは、これが本物かどうかを問うことには意味がない。そもそもがコピーなんだから。

 もっと言えば、ぼくがこれをさらにコピーして、大量の複製を作って無限に売り続けることもできるわけ。もちろん、そんなことはしないし、原本(といってもコピーだけど)をマニタ書房で売り物にすることもない。あくまでも自分のコレクションである。

 ところで、このチラシを見るとビッグダディがけっこう真面目に長時間働いていることに気づく。盛岡屋、マニタ書房よりよっぽど営業してるな!

 

2013年5月ヨ日

 本の価値をちゃんと勉強して、しっかり値付けをしてる店が、客にとっていい古本屋かというと、そういうわけでもないところが悩ましい。だって、客からすればレアな本が無造作に100円で売られていたりするのが最高の古本屋なわけで。

 いい本を仕入れることができたら、しっかり値付けして利益を出したいという気持ちと、いい本を安く発見して喜んで欲しいという気持ちのせめぎ合い。古本マニアから古本屋になったぼくは、日々そんなことを考えている。