47 ファミコン神拳とゲームセンターあらしと松田聖子の埴輪

2016年1月マ日
 ぼくが20代のときにメンバーとして参加していた少年ジャンプの袋綴じ企画に「ファミコン神拳」というものがある。注目ソフトである『ドラゴンクエスト』情報のスクープを連発して、ファミコン大好き少年たちを熱狂させた名物ページだった。
 記事を書いていたのは、ゆう帝、ミヤ王、キム皇、てつ麿、カルロス(とみさわ)、コマル大王の6人。いまでは多くの人が知るところだが、このゆう帝とミヤ王というのが、実は『ドラクエ』を作っている張本人の堀井雄二さんと宮岡寛さんだった。そりゃスクープ連発できるわけよね。
 そんな伝説の企画を振り返って一冊の本にまとめようということで、『週刊少年ジャンプ秘録!! ファミコン神拳!!!』というムック本の企画がスタートした。発行はホーム社
 で、その編集作業を進めるためには、過去に「ファミコン神拳」の袋とじが掲載された「少年ジャンプ」を手に入れなければならない。袋とじをすべてスキャンして再び掲載するためだ。
 もちろん、ホーム社集英社のグループ会社なので、ジャンプ編集部の資料室も自由に利用することができる。担当スタッフが資料室にこもって過去の「少年ジャンプ」のバックナンバーを片っ端からチェックしていき、ほぼすべての掲載号を確認することができた。資料室でも見つからなかった号は、古本屋さんの通販サイトやYahoo!オークションなどを駆使して入手していく。少しくらい高くても必要経費で落ちるから大丈夫。
 ところが、担当スタッフ曰く「最後の1冊がどうしても見つからないんですよ〜」と言う。当時の「少年ジャンプ」は毎週450万部くらい売れていたから、この世のどこかには何冊か確実に残っているはずだ。行くところに行けばあるに決まってる。
 うーむ、ひょっとするとあそこなら……と、そのスタッフを連れて神保町のとあるレトロマンガ専門古書店に連れて行ったら、ズバリ! まさに探していた号の在庫があって、無事に入手が叶った。ぼく自身も、古物商としての面目が立ったのだった。

 

2016年1月ニ日
 世田谷ボロ市を訪ねる。ここでは古本の出物はそれほど期待できないが、中古レコードとかガラクタの類で、マニタ書房に置いたらおもしろそうなものはないだろうかと、会場を端から端まで見て歩く。
 すると、ある出店者の段ボール箱の中から『ゲームセンターあらし』のメンコが出てきたので、5枚まとめて買わせてもらった。ボロ市の名にふさわしく、タダみたいな値段で譲ってくれたので、そのうち店に1枚100円くらいで出そうかと思う。

 

2016年1月タ日
 友人で画家の山内崇嗣さんが店に遊びに来てくれて、「とみさわさん、こういうの好きでしょ?」と、松田聖子の埴輪をくれた。

 さすが、わかってらっしゃるなー! 最高!

 

2016年1月シ日
 マニタ書房の真向かいにある姉川書店さんが、猫本のフェアをやっていた。出版の世界において「猫」というジャンルは根強い人気があるのだろう。本に限らず、レコードの世界でも「猫ジャケ」と呼ばれるジャンルがあって、それらをコレクションした本も出ている。


 うちでも猫本コーナーを作ってみるか! と考えて在庫を調べてみたのだが、可愛い猫ちゃんの本など一冊もなかったし、いちおう設けてある「どうぶつ本」コーナーに並んでいるのもこんな本ばかりだった。



46 店の表札とトニイ45の看板とウルトラクイズ

2015年12月マ日
 マニタ書房は、営業しているときは一階に看板を出している。当然、営業していないときは看板は出していない。ところが、どうしたわけか看板を出していないのに店がある四階まで上がってきてしまうお客さんが、たまにいる。
 神保町の小川図書ビル四階は、マニタ書房の店舗でもあるけれど、ライターとみさわ昭仁の事務所でもある。店はやっていなくても、ドアを閉め切って中で原稿を書いていることもある。ただ、面倒なので施錠はしていない。そこを不意に開けられるので、ギョッとしてしまう。まあ、正確にはいきなり開けられて気づくのではなく、階段を上がってくる足音が聞こえるので「あっ、またお客さん来ちゃったな……」と事前に気づきはするのだけど。
 ともかく、看板も出していないのにお客さんが上がってくるのはなぜなんだろうと、考える。おそらく「営業中は看板を出す」というルールを知らず、一階の郵便受けのところにある「マニタ書房」という表札だけを見て、「おっ、こんなところにも古本屋がある!」と上がってきてしまうのだろう。
 表札の「マニタ書房」という文字をもっと小さくするべきかもしれない。

 

2015年12月ニ日
 ついこの間まで『キャンディクラッシュ』系のスマホゲームに夢中になっていて、ずいぶんいろんな類似ゲームをやり続けていたけど、あれはヤバい。時間泥棒。人をダメにする。さすがにこれはよくないと思って、スマホに入れていたゲームを全部削除して、これまで電車移動のときゲームに費やしていた時間を、読書に切り替えた。
 ぼくは「読書」「映画」「ゲーム」といった趣味への欲望に波があって、ひたすら本が読みたくなる時期と、映画を見たくなる時期、ゲームをやりたくなる時期が交互にやってくる。それが「ゲーム」から「読書」へと切り替わったのだろう。本当は満遍なく様々な娯楽を摂取できればいいのだけど、そこは無理してもしょうがない。なるようにしかならいのだ。
 読書期間に突入したからと言って、たいして高尚な本を読むわけでもないが、それでも活字を目で追っていると、急激に自分の脳が活性化すしていくのがわかる。ゲームに明け暮れていたときとは違って、どんどん思考が動き出すのだ。
 なんてことを言うとゲームをディスってるように受け止められるかもしれないが、そんなつもりはない。ぼくはゲームの味方ですからね。真意はわかってくださいますよね。ともかく、スマホからゲームアプリを全削除した効果てきめんで、積ん読がどんどん消化されていっている。

 

2015年12月タ日
 店の隣のビル解体が済んで、ずっとビルとビルの隙間に隠れていた中古レコード店トニイ45の看板が出てきた。


 まだぼくが、将来ここで古書店を経営するなんて考えもしなかった頃、ちょくちょくレコードを買いに来ていた店だ。
 一瞬「この看板ほしい!」という考えが頭の隅をかすめたが、それ以上深く考えることもなく忘れてしまった。しばらくの間はコンクリがらと共に雨ざらしで放置されていたけれど、その後、誰かが撤去したのか、看板はなくなり綺麗さっぱり更地となった。
 で、そうなってから後悔した。「やっぱり看板もらっておけばよかったなー」と。まあ、写真だけでも残せたのでよかったと思えばいいか。

 

2015年12月シ日
 店番をしていると、月に一回くらいの頻度で飛び込みの営業さんが来る。しかし、当店の店主は「幸福は外からはやってこない」という考え方の持ち主なので、いつも5秒で帰っていただくことになる。説明も聞かないし、パンフも受け取らない。階段を四階まで上がってくるだけ無駄。郵便ポストにチラシを入れてもすべて読まずに捨てています。

 

2015年12月ヨ日
 この世界のどこかには、きっと『ウルトラクイズ』の本を集めている人がいるはず! と信じて、古書市などで見かけるたびにコツコツ仕入れて、わざわざ「クイズ本」の仕切りまで作って店に並べておき、月日が経つこと三年。今日、ついにそういうお客様が現れて、『ウルトラクイズ』本をごっそり買って行かれた。これぞ古本屋の醍醐味である。

 

2015年12月ボ日
 本日は2015年度の最終営業日。今年も一年ありがとうございました。来年の目標は、
  1、DJシステムと自分のレコードを撤去して商品陳列を充実させる。
  2、新入荷コーナーを拡張する。
  3、ライブ、イベントなどのフライヤーを置き場を作る。
 この3点です!

45 映画館マナーとブックダイバーと10分どん兵衛

2015年11月マ日

 神保町某社での打ち合わせを終えて店に帰る途中、原書房さんの店頭ワゴンから7冊をピックアップ。

 原書房は運勢・易学の専門書店なので、こういうコックリさんみたいなゲテモノは店頭ワゴンの100円均一で叩き売られている。でも、マニタ書房にはこういうものこそがストライクなわけで、こうして神保町にいながらセドリが成り立つという好例である。

 

2015年11月ニ日

 映画館でのマナーの話。以前、ちょっと気になる女性を映画に誘ったら、エンドクレジット中にケータイを取り出してメールを確認しはじめたのを見て「ああ、この人と付き合うと映画デートのたびにイライラしそうだな」と一瞬にして気持ちが醒めてしまった。ぼくは映画館でのマナーにはうるさいのだ。

 それ以外の部分では彼女に対して悪い印象を受けたことはないので、いまでも友達関係ではいるが、これから先、一緒に映画を観に行くことはないだろう。
 今年の夏、ある映画を観に行ったら、隣りのご老人が扇子を取り出して、上映中にパタパタと扇ぎ始めた。

 館内には冷房が効いているから、暑いということはない。だから冷房があってもなお暑いというより、単に「夏は扇子」という行為が彼にとって習慣になってしまっているのだろう。

 しかし、その隣で映画に集中したいぼくは、たまったもんじゃない。スクリーンの光を受けて白い扇子がチラチラ動くのが視界に入ってくるし、往復運動をする扇子が彼の着ているシャツに触れる「カサ、カサ、カサ……」という音が耳障りで、とても映画に集中できない。

 そのときは、さすがに「扇子やめてもらっていいですか?」と小声で注意したが、彼は自分がなぜ注意されたのかよくわかってない顔をしていた。そりゃそうだ。わかっていたら最初から上映中に扇子なんか動かさない。

 ぼくみたいに、神経質が過ぎる人間は生きていくのに苦労する。

 たとえば、予告編のとき普通に会話している客がいるが、あれもかなり辛い。「こいつらこのまま本編が始まっても話し続けるんじゃあるまいな……」と疑心暗鬼になって、気が気じゃなくなる。だから、自分も上映前に連れから話しかけられるのは苦手だ。他者からそう見られているのではないかという気がして、どうにも落ち着かないからだ。

 あぁ、自分の神経に紙ヤスリをかけてつるつるにしたい! 神経がつるつるだったら、酒場でももう少しリラックスして飲めるのだろうなあ

 しかし、世の中にはトゲトゲ神経じゃなければ見えてこないこともあるので、とくに何かを変えていこうとも思ってはいないのだが。

 

2015年11月タ日

 店に出勤する前に古書会館での古本市を除いて、アクの強い本を2冊仕入れる。そろそろマニタ書房には「ドラッグ」ってコーナーを作らなければなるまい。

▲「精神衛生文化協会」というすごい協会があるんですね。

2015年11月シ日

 先日、友達と松戸で買い物して、軽く飲んでいこうということになり、ちょっと良さげな居酒屋を初訪問した。そこは北陸料理がウリの店なようで、当たり前にのどぐろの刺身なんかがあったりして、酒も肴もうまく、とても居心地がいい。

 またそのうち再訪しようと思っていて、今日ひまができたので一人で再訪してみた。

 突き出しのお煮しめとマグロ納豆で瓶ビールを一本空けたあと、焼きおにぎりを肴に燗酒を飲む。デキる店だとは思っていたけど、ただの焼きおにぎりだと思っていたものも、かじってみると紫蘇の葉が握り込んであって、とても風味が豊か。

▲添えてある漬物が茄子なのも嬉しい。

 酒の肴としても優秀なので、お銚子もう一本! ……と思ったタイミングで熱々のほうじ茶がでてきたので、酒はここまでにする。この店で末長く飲もうと思うなら、流れには従った方がいい。

 もし、筆一本で食っていけるなら、家賃のかかるマニタ書房なんてとっとと畳んで、自宅で原稿仕事だけをして、日が暮れたらこの店で飲む。そういう老後もいいよなあと思う。

 

2015年11月ヨ日

 神保町の裏通りにて、味のある店内構造と品揃えで密かな人気だった「古本ブック・ダイバー」さんが、2015年11月15日でとうとう店舗での営業を終えられた。オーナーの仙波さん、長いことお疲れ様でした。

 実は、数ヶ月前から閉店することをある人物から知らされていて、その跡地に居抜きでマニタ書房が入ってみたらどう? という提案もあった。

 あそこは玄関先にどわっと本の泉があって、左側の入り口から店内に入るとドカドカと不揃いの本棚があり、各種ジャンルの本が無造作に突っ込まれていて、古本好きにはたまらない雰囲気の店だった。

 そこにマニタ書房を移設できるのは凄くいいなあ、あの仙波さんが座っていた奥の帳場にぼくが座れるのかあ、それは痺れるなあと、かなり心がぐらついた。

 とはいえ、マニタ書房より広く、路面店でもあるから家賃は少し跳ね上がる。それと、店頭にある本の泉部分は隣の物件の入り口も兼ねており、閉店後は泉に展開してある本を片付けて入口として使えるようにしなければならいというルールがあるのだという。金額の折り合いよりも、その面倒臭さに負けて借り受けるのを断念したのだった。

 

2015年11月ボ日
 終日、マニタ書房で書きもの仕事をしながら店番。そういう日はありそうで意外に少ない。お客様が途切れた隙間を狙って、10分どん兵衛で遅い昼ごはんをとる。

 10分どん兵衛とはマキタスポーツ氏が考案した食べ方で、日清のきつねどん兵衛にお湯を入れたら、規定の5分ではなく、あえて10分待ってから食べるという方法。そうすると、これまで以上に麺がもちもちとしてうまいというのだ。以前にも真似してみて、そのうまさは実感している。

 だが、皆さん、ぼくはマグマ舌だというのを思い出してください!

 そうなんスよ、10分どん兵衛にするとつゆが冷めるんスよ。それがぼくには耐え難いんスよ。ぬるいうどんなんて食いたかねーんでスよ。

 そこで考えた。どん兵衛の本来の制作手順は「お揚げとつゆを入れてからお湯を注ぐ」。しかし、それだと10分後にはつゆが冷めてしまう。だから、最初は「お揚げだけを入れてお湯を注ぐ」ことにして、10分経ったらお湯を捨て、「あらためて熱湯を注ぐ」といい。こうすれば「十分なうどん食感でありながら、つゆも熱々の状態などん兵衛」が食えるのだ!

 マニタ書房は今日も平和であります。

44 古本トリオと食べ放題と神田古本まつり

2015年10月マ日
 安田理央柳下毅一郎と組んでいるせんべろ古本トリオで、小田急線ツアーに出かける。新宿ブックオフからスタートし、代々木上原ロス・パペロテス、下北沢古書ビビビ、その他豪徳寺、経堂、向ヶ丘遊園など順繰りにたどっていって、ラストは町田の柿島屋で打ち上げ。今回もいい本がたくさん買えた。

▲秘境ガーナの出産シーンをバックに着衣巨乳について激論する安田&柳下。

2015年10月ニ日
 あまりにも暇なので「何が食べ放題だったらうれしいか?」を考えている。
 好物のケンタッキーフライドチキンは2ピースも食べればそれで十分だし、大好物の永福町大勝軒のラーメンは一人前がすでに食べ放題みたいな量だし、これといっていいのが思いつかない。
 結論、少食人間にとって食べ放題なんてものは全然うれしくないのだった。

 

2015年10月タ日
 毎年恒例、神保町の「神田古本まつり」であります。マニタ書房は古書組合の加盟店ではないので直接まつりに関わることはないのだけど、便乗して期間中は毎日営業しようと思う。

▲雨天に見舞われることの多い古本まつりも、今年は晴天に恵まれました。

 とか言っていたら、今日、店を開けて5分と経たないうちにお客様が来られた。これはやっぱり古本まつり効果なのだろう。
 商品の品出しをしたり、原稿を書いたりしながら一日中店にいると、次から次へとひっきりなしにお客様が来る。しかし、その大半は何も買っていかない、つまり冷やかしさんなわけで、つまりマニタ書房はほぼ固定客で成り立っているんだなあ、というのを痛感する。

43 スカイツリーソングと店内撮影と本屋へ行こう‼︎

2015年9月マ日
 定期的に銀座・山野楽器の演歌売り場や、浅草・ヨーロー堂へ行って新譜チェックをする。これといって演歌が好きなわけでもない自分がなぜそんなところに行くかといえば、こういうCDを買うためだ。

 昔から日本人は新しい何かができたり、大規模な流行があったりすると、いつもそれをレコードにしてきた。東京タワーもオリンピックも、首都高速も新幹線も、パンダもエリマキトカゲも、みんなレコードになっている。それはCDの時代になっても変わらない。
 2012年にスカイツリーが完成した。「こりゃCDが出るな?」と睨んだぼくは、スカイツリーソングを集めるために都内のCDショップを巡回している。そして、そういう曲というのはだいたい演歌か音頭なので、上記したような店に行くと効率良く発見できるというわけだ。

 

2015年9月ニ日
 マニタ書房というか、とみさわ昭仁事務所としては1日あたりだいたいこれくらいの売上げがあれば生きていける……という目標額がある。ここで言う「売上げ」というのはマニタ書房の売上げだけでなく、その日に書いた原稿料との合計で達成できればOKだということ。だから店を休んだり、あるいは店を開けたのに売上げがゼロだったとしても、そのぶん原稿をたくさん書いて1日の売り上げ目標を達成できれば、とみさわ昭仁事務所的には問題ない。
 逆に、店を開けた途端にお客さんが続々来て、いきなりけっこうな額の売上げがあり、午前中に1日の目標額を達成したとすると、そのあとに書く原稿は余剰の儲けをゴンゴン生み出している感じがするので、とても気分は晴れやかだ。
 そう、今日こそまさにそういう日なのだった。

 

2015年9月タ日
 ときどきお客様から「あのぉ、店内の写真撮ってもいいですか?」と恐る恐る聞かれることががある。古書店に限らず、たいがいの店は店内撮影禁止ということが多いので、小声になる気持ちはわかる。
 でも、マニタ書房は店内撮影はまったく問題ナシ!! 気になる本があったら手に取って写真に撮り、「こんな変な本があったよ〜」と、どんどんSNSで拡散してほしい。その際には「神保町のマニタ書房で」と書いておくのもお忘れなく!

 

2015年9月シ日
 気がつけば、いま店内に三組ものお客様がいる。いつも閑古鳥が鳴いているマニタ書房にしては珍しいこともあるもんだ。

 

2015年9月ヨ日
 9月24日発売の『本屋へ行こう‼︎』(洋泉社ムック)に、先日マニタ書房の店内で収録・撮影した吉田豪さんとの対談が掲載されている。表紙は多部未華子さん。いつかマニタ書房にも来てくれないかな。
 豪さんとの対談、自分に都合のいいことをゲラで真っ赤に書き入れて、あとで「とみさわさんはいっぱい修正してましたよ!」と暴露されるのもおいしいのではないかと思ったが、古本屋って楽しいよね〜という話をしているだけなので、ほとんど訂正の赤を入れることはなかった。
 それより、校了したあとで「うちのタレント本コーナーを豪さんに評価してもらう」っていう企画を思いついたが、後の祭り。豪さんに「品揃えが全然ぬるいですよ、ダハハハ!」って言われたら、それはそれでまたおいしいよなあとも思った。

42 床寝りと5年後の味と鹿児島ツアーと

2015年8月マ日
 店に出勤したが、あまりの暑さで仕事をする気力が出ないので、とりあえず店の床で横になる。お客さんが階段を上がってくる足音が聞こえたら飛び起きられるよう、入口ドアの前で寝っ転がってるが、この状態で寝落ちしたら入ってきたお客さんはビックリよね。

▲パンチカーペットは案外寝れる。

 

2015年8月ニ日
 マニタ書房ではなく、ライター業の話。
 自分はいま幸福なことに一次創作の機会を与えられているんだから、周りの声や評判に左右されず、いま自分にできることを全力でやるべきなのだ。評価は後からついてくる。
 それに、発表直後の評価は意味がない。5年後、10年後、あるいは100年後にどう評価されているかが大事。だから自分が生きているうちに酷評されようとも、そんなことは知ったこっちゃないと、口笛を吹いて前へ進もう。
 ぼくは昔から「これは5年後にいい味が出る」とか「10年続けたらおもしろくなる」とか、そういうふうに物事を見てきたので、そんなぼくがいま古本屋(古物商)をやっているというのは、我ながらおもしろい終着点だと思う。そして作家としての自分も、そういう物の見方に耐えられるような活動をしていきたい。

 

2015年8月タ日
 錦織圭選手(の名前)を見ていて、これを「にしきおり」でなく「にしこり」と読むのは、Maneater(マンイーター)を「マニタ」と読ませるのと同じだなあと思った。

 

2015年8月シ日
 8月17日から20日まで娘と一緒に鹿児島ブックオフ仕入れツアーをやってきた。娘と一緒なのは、中学卒業と共に鹿児島へ引っ越してしまった親友に会わせるため、夏休みを利用して同行させたのだ。
 収穫だけを要約すると、回ったブックオフは「鹿児島国分店」「鹿児島加治木店」「鹿児島天文館店」「鹿児島串木野店」「川内店」「鹿児島出水店」「熊本水俣店」「鹿児島大口店」「鹿児島荒田店」「鹿児島唐湊店」「鹿児島ジョイプラザ店」「鹿児島中山バイパス店」「鹿屋寿店」の13軒で、仕入れた本は合計29冊。
 仕入れ旅としては少なすぎる結果だが、まあ今回は娘の思い出作りの側面が大きかったので、これでヨシとしよう。

ブックオフ鹿児島出水店。

 

2015年8月ヨ日
 ツアーの最終日は、鹿児島県薩摩半島の南端にある指宿(いぶすき)に来た。何をしにこんなところへ来たのかというと、それは幻の珍盤『イッシー音頭』を探すためである。
 こういうものは都内の中古番屋にはまず出てこないが、地元(この場合は鹿児島県指宿市)の古道具屋などをこまめに回れば、意外にあっさり出てくるのではないか? そう思って旅行ついでに指宿にも立ち寄ったのだが、あいにく古道具屋巡りまでしている時間はなく、池田湖周辺の土産物屋を回ることくらいしかできなかった。
 しかし、池田湖畔の土産物屋にはどこにでもあるような茶碗だの置物ばかりで、レコードはおろかイッシーグッズすら売ってない! 薩摩黒豚をキャラ化したアーモンドクッキーなんか売る暇あったら、イッシーせんべいとか作ればいいのに……。

▲後にある人物の好意で入手は果たした。

 ちなみに、今回の鹿児島&熊本ツアーで13軒のブックオフを踏破したことにより、総訪問支店数は486となつた。県単位で制覇したのは岩手、群馬、茨城、埼玉、千葉、東京、石川、山梨、宮崎、鹿児島、沖縄の1都9県である。

 

2015年8月ボ日
 江戸川区の松江図書館より講演会の依頼。何を話すかあれこれ考えた挙句、「出張!古本“珍生”相談 ~本の数だけ人生はある~」と題して、ナビブラ神保町で連載中の「古本“珍生”相談」をライブでやることにした。
 もちろん、その現場で相談を投げかけてもらい、それに古本で即答するのは物理的に不可能なので、事前に募集しておいたご相談に適した古本を選出し、その解説をライブで行なうという趣向である。
 結局、30名限定の会場はほぼ満席で、ご来場のお客様方にも楽しんでいただけたようで何よりだった。

 

2015年8月ウ日
 鹿児島ツアーで仕入れ、現地から宅配便で発送しておいた本が到着したので、朝からドバドバと品出しをする。これにともない、レジ下の棚に新入荷の本を置くコーナーを作る。

41 小島ファミ隆とマネジメントと1万円

2015年7月マ日
 青山某所。元『月刊ログイン』編集長、『ファミコン通信』編集長として活躍された小島文隆さんがご逝去され、そのお別れ会に出席してきた。会場にはぼくが『ファミコン通信』で連載していたときお世話になった編集スタッフの方々はもちろん、塚本慶一郎さんや古川亨さんといった日本のPC界のレジェンド級の方々も顔を見せていた。
 お別れ会のタイトルが「いぁ〜んずっとバカンス」というのが、雑誌はなくなっても未だログインニズムは生きているのだなあと感慨深かった。

▲ぼくも一度だけ「いぁ〜んバカンス」には参加したことがある。

2015年7月ニ日
 マネジメント論的なものを読んだ。ぼくは壊滅的にマネジメントができないタイプの人間で、自分のことでさえそうなんだから、ましてや部下をマネジメントするなんて無理に決まってる。
 サラリーマンも下っ端のうちはいいけれど、大きな失敗もせず、それなりに成果を上げているとやがて役職がつき、部下ができていく。すると期待されるのは部下のマネジメントだ。
 ぼくが何度も会社を辞めている理由のかなりの部分は、そんな自分に適していない仕事を望まれることからの脱出だ。会社を辞めて古本屋のおやじとなったいまは、毎日好きなことだけをしていればいいので、とても精神状態が良く、幸せである。
 とはいえ、ろくに店の売り上げ計画を考えていないのは、さすがにマネジメントしなさすぎだと自分でも思う。

2015年7月タ日
 今日は開店からずっとお客さんが途切れず、まだ日も暮れていないのに、すでに売上げが1万円を越えている。
 たったそれだけ? とお思いでしょうが、これでも平日のマニタ書房としては驚異的な売上げなんですよ。もう店閉めて飲みに行きたくなっちゃったなあ。