先週の日曜日、土砂降りのなか、ふと思い立って都内の数カ所を巡ってきた。己の過去を辿る旅だ。
○まずは都営新宿線「曙橋」駅から徒歩5分ほどの「スカイコート市ヶ谷」へ。
1987年9月。『よい子の歌謡曲』というミニコミ誌をやっていた仲間のうち、とくに仲のよかった宝泉薫、高倉文紀との3人でここに共同の事務所を借りた。事務所名は深い意味もなく「スタジオパレット」と付けた。これが自分のフリーライターとしての出発点ということになる。家は千葉県に実家があった(いまもある)のだけど、友達との共同生活が楽しくて、ほとんど家には帰らず、ずーっと泊まり込んでいたっけな。マンションの家賃はたしか9万円ぐらいだったはず。3人がそれぞれ5万円ずつ出し合って15万円を確保し、そこから家賃+雑費などをやりくりしていた。
この当時、自分がおもに仕事をしていたのは、青山一丁目に編集部のある『月刊スコラ』と、神保町の『少年ジャンプ』(集英社)だった。この二誌でけっこうなギャラを稼いでいたので、他はあんまり仕事をしなかった。怠け者だったんだね。ヒマな時間はゲームをしてるか、あとは自転車で新宿へ行って映画ばっかり観ていた。
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○つぎに小田急線「下北沢」駅から徒歩7分ほどの「代沢ファイヴコート」へ。
1989年9月。先の3人がそれぞれひとりでも食えるようになってきたので、スタジオパレットを解散して、自分ひとりの住居兼事務所を借りることにした。ちょうどその頃、ゲームライターとして活躍していた田尻智と一緒に仕事をすることが増えていたので、彼の事務所(ゲームフリーク)がある下北沢に自分も行くことにした。家賃は8万円+管理費3千円。六畳ひと間でこの値段は正直高いなーと思ったけど、下北沢じゃ仕方ない。事務所の名前はラモーンズの曲から「ピンヘッドスタジオ」にした。
この時期は、『ファミコン通信』(アスキー)→『ファミコン必勝本』(宝島社)→『ファミリーコンピュータマガジン』(徳間書店)と、各ゲーム雑誌を渡り歩いてゲームの紹介記事や攻略記事を片っ端から書いていた頃だ。また、ジャンプで知り合った宮岡寛さんや、あるいはゲームフリークにも参加するなどして、ゲーム制作の仕事に本格的に取り組むようになった時期でもある。
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1995年7月。契約社員から正社員もあわせて約4年ほどゲームフリークに勤めていたが、この年に退職して一旦は千葉の実家に帰った。多忙を極めるゲーム制作の仕事からは手を引いて、実家でのんびり小説でも書いてみようと思っていたからだ。ところが、会社をやめた途端に某社から大口のゲーム制作仕事が入ってきて、その仕事のためだけに取引先の近くへ事務所を借りることになった。それがこの「マンション第一明大前」だ。甲州街道沿いの3LDKで家賃は15万円。さらにアシスタントも一人雇った。事務所の名前は、シンプルに「とみさわ昭仁事務所」とした。ゲーム制作のためならもっとそれっぽい名前があったと思うのだが、心の隅に“作家でありたい”という気持ちがあったんだろうな。
結局、執筆仕事に専念するために独立したはずが、なし崩し的にゲーム制作の仕事ばっかりやるようになってしまった。まあ、金に目がくらんだんだね(ゲームの仕事はギャラがいい)。この時期はおもにソニーとアスキーで仕事をしていた。それから、辞めたはずのゲームフリークからも外注でシナリオの仕事などをもらっていた。ありがたいことだ。
○こんどは中央線「立川」駅から徒歩1分の「タウンコート立川」へ。
1997年1月。事務所を立川へ移転させた。家賃は同額の15万円だけど、都心から少し離れたぶん広くなった。なんでいきなり立川へ移ったかというと、この時期に知り合った女性(いまの女房)が昭島市に住んでいて、結婚したらその家に同居することになっていたから。おれの都合に合わせて引っ越しさせられたアシスタントくんは災難だったろうねえ。
この時期は、仕事もそれなりにやっていたけれど、ジッポーライターのコレクターから野球カードのコレクターに移行していた頃で、やたらと趣味に時間と金を使っていた。仕事はアシスタントに任せて、自分はカードショップに入り浸っていたりしたのだから、我ながらヒドいもんだと思う。野球カードのコレクションをネタにして本を一冊出せたのが、せめてもの救いだろうか。
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で、なぜ今回こんな自分の過去を巡って写真を撮ってくるようなことをしてきたのかは……また後日。あらためて日記に書くと思う。