第16湯目「大盛湯/荒川区18番」

京成線の新三河島駅から西日暮里方面へ少し歩いたところに「大盛湯」はある。

それを目指して来なかったら、うっかり通り過ぎてしまいそうな外観だ。

とりあえず裸になって浴場の戸を開ける。メガネが湯気でモワッと曇る。毎度のことだが困ったもんだぜ。メガネを外し、裸眼で桶と椅子をとろうとして入り口脇に積んである桶を見たら、ここのは木桶だった。最近はどこもプラスチックで、木の桶なんて珍しいね。……でも、積んであるのは桶ばかりで椅子がない。どうなってんのかなあと先客をさりげなく観察してみたところ、なるほど、ここでは桶を2つとって、ひとつはひっくり返して椅子にするのがルールなのだった。合理的ではあるけれど、桶の底に尻を当てるのって、なんかキモチワルイな。とりあえずカランの湯で桶の底をゴシゴシ洗った。

壁画はペンキ絵ではなくてタイル画だった。ドット絵みたいでこれはこれで悪くない。湯船は三分割されていて、真ん中が低周波電気風呂、右側が泡風呂、左側はジェット風呂。いずれにせよどれもゴボゴボだ。

毎度の工程を済ませ、ひとしきりあったまってから銭湯を出る。服を着て、スタンプを捺してもらい、濡れた頭をタオルで拭きながら、さらに西日暮里に向かって歩く。5分くらい歩いたかね。西日暮里駅の少し手前に、もつ焼き屋の「菊一」ってのがある。西日暮里のもつ焼き屋では、もう少し駅寄りの「喜多八」がおれのお気に入りだが、友達からその近くの「菊一もいいよ〜」と教えてもらった。それで今回は新三河島の銭湯から西日暮里というルートを設定したのだった。

駅から少し離れているためか、あるいはそろそろ終わりの時間に近いためか、店内は先客が二組だけで、かなり静か。静かなのは大歓迎だ。ひとりカウンターに座り、酎ハイを頼む。すると、お通しには塩豆が出てきた。これはうれしい。ヘナヘナの切り干し大根とか、冷たいおしたしが出てくるよりも、いっそこういう乾き物のほうがありがたい。注文したもつ焼きがくるまで、ポリポリと豆をかじって待つ。

さらにメニューを見ると、名物として「ガツ刺しのピリ辛」なんてのがある。できればガツ刺しはゴマ油+塩か、ニンニク醤油でいきたいところだけど、せっかくだからそれもいってみる。

もつ焼きはあらたまって写真を上げるほどの特徴はなかったので、かわりに「ガツ刺しのピリ辛」の写真を。

酎ハイはちょっと酸味の利いた梅シロップ入りで、あんましおれの好みではなかったな。次来たときはホッピーでも飲むか。