誰の心にもヤンキーは眠っている

わりと最近出たばっかりの本なので、知ってるひとも多かろう。すでに読んだ、っていうひともいるだろう。おれも読んだので紹介します。

紫の青春 ~恋と喧嘩と特攻服~

紫の青春 ~恋と喧嘩と特攻服~

埼玉県に生まれたごく普通の少女が、ちょっとしたことからグレはじめ、中1にして立派なヤンキーとなり、レディース紫優嬢の四代目総長となり、マスコミに何度も登場して全国区の人気者となり、やがて仲間の事故死、逮捕、鑑別所、出所、裏切り、破門、ヤキ、シャブ、堕胎、出産、離婚、再婚、出産……と、普通のひとの人生200年分くらいをレッドゾーン仏恥義理で駆け抜けていった。本書はそんな伝説のズベ公、中村すえこの自叙伝である。

おれは常々、女ヤンキーの魅力は「鬼」と「姫」の二面性にあると思っていて、レディースの女の子はもちろん写真を撮られるときには思いっきりカメラにガンくれて気合いの入った鬼女の貌(かお)を作って見せるんだけど、その一方で、ふっと力を抜くとフツーの女の子以上にフツーらしい笑顔を垣間見せたりもするんだよね。そこがいいんだ。そのギャップに萌えるんだ。

  
あの、ほら、ボタン押すと顔の部分だけくるっと回ってフツーの顔とコワイ顔が入れ替わる人形あるじゃんか。ああいう感じ。

暴走族とかヤンキーとか、青春時代にそういう経験をしてきてないひとは、みんな自分とは無縁のものだと思ってるのかもしれない。でも、そんなことはないんだ。誰しも心の中にヤンキーは飼っている。普段、そんな素振りを見せないひとだって物事を勝ち負けで判断してしまう瞬間はあるだろ? 会社で同期に出世を先越されたとき、一瞬、カチンとくるだろ? 受信料の集金人に横柄な口のきき方をされて「ナメんなコラ」って思うときがあるだろ? それは心の中で眠ってるヤンキーがチラッと薄目を開けた瞬間なんだ。

もちろん、自分にも確実にそれはある。おれはいつもこのブログの原稿を書き終えて「公開する」ボタンを押す瞬間、心の中で「伝説が生まれる瞬間をオマエラに見せてやる!」と、綾小路翔ばりの脳内ボイスでつぶやきながらマウスをクリックしているんだぜ。蒐集原人ヨロシク。