ほのぼのピストルズ

はじめてパンクロックと呼ばれる音楽を聴いたのは、いくつのときだったろうか。

セックス・ピストルズのデビューは1976年だから、自分は当時15歳だった。中学3年生か。その頃はまだハードロックに夢中だったけれど、頭脳警察のことはもう知っていた。でも、それをまだ誰も“パンク”とは呼んでいなかった。音的にはピストルズよりもラモーンズ頭脳警察の方がずっと過激だと思うが、その時点では単にハードなロックンロールでしかなかった。それを音楽の新ジャンルとして定着させるためには、やはりセックス・ピストルズの短髪+安全ピン+破れたシャツというわかりやすさが必要だったのだ。そういう意味では、パンクという音楽ジャンルを作ったのは“音楽”そのものではなく、ピストルズをプロデュースしたマルコム・マクラーレンという“人間”だったといえる。

パンクの本質とは「アティテュードと魂の問題だ」と言ったのはスティッフ・リトル・フィンガーズのジェイク・バーンズである。それはまったくそのとおりだと思うが、その一方でセックス・ピストルズの例を見ても明らかなように、ファッションや見た目もおろそかにはできない。ピストルズのファーストアルバム『Never Mind the Bollocks』の、文字をちぎってコラージュしたようなジャケットデザイン(脅迫状のイメージだろうか)は、その後のパンクのアイコンとして、幅広く応用されるようになっていく。

Never Mind the Bollocks Here's the Sex Pistols

Never Mind the Bollocks Here's the Sex Pistols

で、長々と能書きをタレてきたが、ぼくはこうした“ピストルズっぽいデザイン”のものを集めているのだ。ただし、パンクに関するものはそういうデザインで当たり前の世界だから、わざわざ集めない。集めていたらきりがない。パンクと関係ないのに、なぜかネバーマインドな感じになっちゃっているものを集めている。

たとえばこれ。


▲『悪態の精神/庄幸司郎』(1990年/影書房

 以前、町田方面ブックオフのツアーに出かけたときに見つけていて、そのときは高いので入手を見送っていたが、しばらく経ってから105円で再度発見したので確保しておいた。何度見てもパンクとは関係なくてうっとりする。

あるいはこれ。

▲『クレイジー キューティー マシンガンズ/川村恵太』(2006年/新風舎

 アウトローな女の子が主人公の小説だから、ややパンキッシュな匂いがしないでもないが、しかし、ピストルズはもちろんパンクとはとくに関係がない。だからいい。

またはこんなのも。


▲詳しくは知らないのだが、ジャケには森田剛三宅健岡田准一の名前が書かれているので、おそらくジャニーズ事務所に所属している3人のユニットなのかもしれない。このジャケ画像はネットからひろってきた。中身の楽曲はパンクだったりするのだろうか。聴いてみたいが、なかなか買う勇気が出ない。

そして、とどめにこんなのはどうだろうか。シンガーソングライター山本コータロー氏の所属事務所レーベン企画のサイトである。

むしろ山本コータローこそが本当の日本のパンクなのではないか、という気がしてきた。

2/20 追記:こんなの↓もありました。ギンティさんはパンクスピリッツのある人だとお見受けするので、著書がこういうデザインになるのもムベなるかな。

衝撃現代百物語 新耳袋勝手にしやがれ

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