富沢、桐島見たってよ

試写状を2枚もいただいておきながら、宣伝ビジュアルがどうにも趣味に合わず、
結局ブッチしてしまっていた『桐島、部活やめるってよ』。

ところが、公開後に見た人達の評判がやたらといい。
みんな言うんだ「傑作だ!」って。

だからって、ひょいと手のひら返して見に行くのもなー。
邦画の学園ものでしょー?(青春映画は苦手)
不良出てこないんでしょー?(不良映画は大好き!)

とはいえ、映画を見るのを仕事にしている者の端くれとして、
評判がいい映画を意地張って見に行かないというのもよくない。
そんで、たまたま時間があいた昨日、有楽町で見てきた。

富沢、桐島おもしろかったってよ

とてもおもしろく見たし、いい映画だった。
いまの邦画界でよくぞここまで説明を省いた映画を撮れたものだと喝采も送る。
でも、おれはこの映画、あんまり好きじゃない。
なぜなら現実を悲観的なものとして描き過ぎている感じがするからだ。

おれは映画はもっとハッピーなものであってほしいと思っているし、
実際に現実はハッピーだからだ。
ろくでもないことや悲しいことはいっぱいあるけど、
それでもハッピーなことだってたくさんある。
そういうことを描いたものが見たい。

現実には奇跡なんて起こらないけど、
映画の中でぐらいは奇跡が起こる瞬間を見せてほしい。
イケメン組の宏樹にカメラを向けられ、
「将来はアカデミー賞ですか?」と聞かれた映画部の部長、前田涼也が
「アカデミーは……ないよ」と言った瞬間に、
この、あまりにも希望のなさすぎる映画を若い人には見せたくない!と思った。

そういえば、ずいぶん昔「台風クラブ」を見たときにも
同じようなことを思ったっけな。
当時は自分も若かったから共感する部分もあったけど、
いまは若者に見せたくない映画の筆頭だ。
もちろん見ることを止めたりはしないが。

映画を撮る映画、という意味で最高なのは『マイク・ザ・ウィザード』。
絶望を奇跡が覆す瞬間を見せてくれる。
同じような意味で『リトル・ランボーズ』もいいね。
僕らのミライへ逆回転』もよかた。
『スーパー8』はグダグダだったけど最後で救われた。

劇中で撮っていた映画を最後に見せるって重要。
『桐島〜』はそこを目的とはしていないんだろうけど、
前田くんの撮った『生徒会・オブ・ザデッド』は見たかったな。
妄想ではなく、それが現実になるところを。
奇跡が起こる瞬間をね。

もちろん、中森明夫氏侍功夫氏の桐島評も
「なるほどなあ」と感心して読んでいて、とくに異論はない。
おれが言ってるのは単なる好き嫌いだから。

あと、昨日、いろんな人の桐島評を読んでいて、
どなたのブログだったか忘れたけど、いちばん笑ったのは、
前田役の神木くんだって普通なら全然モテ側だ、ってやつ。
そりゃそうだ。
でも前田役にブサメンを配置してたら救いがなさすぎる映画になっただろう。

そういえば、『桐島〜』を見た人のあいだで
「どの娘がよかった?」ってな話にはなってないのかな。
おれはねー、バトミントン部の宮部実果(清水くるみ)がいいー。
桐島の彼女が凹んでるときに「クスリ」と笑うのがたまんなかったなぁ〜。

男はやっぱ宏樹かな(男も選ぶのかよ!)

前田は、東原かすみ(橋下愛)が『鉄男』を見にきていたのを知って
急に意識し始めて好きになっちゃうんだけど、
それはなんかちがう気がした。
いくら自分が『鉄男』とかそういう類いの映画が好きでも、
一人で『鉄男』を見にきてる女子高生って、なんかヤダと思うんだ。

むしろ、前田はかすみの髪型に
ゴーゴー夕張を感じて好きになったんじゃないのか、と!

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