『ダイハード/ラストデイ』を見終えて劇場を出たときには、もう夜も遅くなっていた。ホテルへ帰る前にどこかで飲んでいきたいけど、いい店はないものか。とりあえず牧志駅で下車し、アッチコッチの店を覗きながら美栄橋方面へうろうろ歩いていく。
なかなか「これは!」っていう店がない。
美栄橋の駅も通り過ぎ、川沿いの道を県庁方面へ向かって歩いていく。すると、久茂地のあたりに魚屋というか、魚市場というか、いわゆる“トロ函”系の居酒屋があった。看板の脇に「東京都築地市場」なんて書いてあったりして、沖縄くんだりまで来てなにもチェーン店に入らなくても……とは思うが、こういう店は案外嫌いじゃないし、魚が食べたい気分でもあったので、入ってみる。というか、なによりも店名が気に入ったのだ。
「鰓呼吸」
えらこきゅう……。いいじゃないか!
入店して、カウンターに陣取る。時間が遅いので、お客さんはそんなにいない。したがって店内はいい感じに静か。これは落ち着いて飲めそうだ。おしぼりを持ってきた店員さん曰く、今日のお通しは「マグロの中落ち」だそうだ。上等上等。魚が食べたくてこの店を選んだんだもんな。
まずはホッピーセットに、海ぶどうと人参シリシリを頼む。魚はどうしようかな。お通しのマグロ中落ちがあるとはいえ、それだけじゃ物足りないかもしれない……とメニューを見ながら悩んでいるところに店員さんがお通しを持ってきた。
……って、おい!
なんてサイズだ。醤油皿が“お通しの上”に乗ってるじゃないか!
さすがにこのまんまじゃ食べにくいので、店員さんは皿を一旦下げると、スプーンで身をホジホジして、あらためて盛りつけたものを持ってきてくれた。こうやってお客さんをビックリさせて楽しんでるんだろうな。こういう驚きは大歓迎だ。
いや、しかし、どうせお通しったって料金はとるはずだから、いくらなのかとお勘定のときに忘れずレシートを確認したら、あれでたったの299円だった。なんという良心的な価格だろう。
久茂地の「鰓呼吸」、気に入った!
(その9へ続く)