名古屋市内ブックオフ支店全制覇ツアー その6

今回、名古屋に来たのはもちろん市内のブックオフを制覇することだけど、それ以外にも秘密のミッションをふたつ抱えてきた。そのひとつが、名古屋の大衆酒場の中でも老舗中の老舗といわれる「大甚本店」を訪問することだ。創業が明治40年というから、今年で106周年を迎える。そんな名店には、やはり一度は足を踏み入れておかなければならない。

……が、店の前に来てみたら、すでに暖簾を引っ込めてしまっていた。ラストオーダーにはまだ少し早い時間だったが、早仕舞いしたのだろうか。だが、大甚にはすぐ近くにもう一軒「大甚中店」というのがある。こちらはまだ暖簾が出ていて、すんなり入れてもらえた。

実は「本店」は中を覗いたときにまだお客さんが何人か残っていて、そのー、なんと言うか、客と客の距離が近い感じがあったのね。常連さん同士でわいわいやっている感じというか。それって、おれはちょっと苦手なんだ。

ところが、「中店」はほとんどお客さんがいなくて、しかも本店より広いもんだから、ガッラーンとしている。照明も薄暗いし、テレビの音声も小ちゃい。

これが人によっては“本店に比べて寂れているのでつまらない”と感じるらしい。その気持ちはわからないでもないけど、おれは断然こっちのほうがいいな。酒を飲むのにニギやかさなんていらないんだよ。音楽だっていらない。店の店員さんが立ち働く音と、客がグラスに酒を注ぐ音だけ聴こえれば十分だ。

大甚の酒は、瓶ビールか徳利酒のどちらかしかない、というのも潔い。カシスサワーとかそういう小洒落たものはないんだ。つまみも、煮穴子やポテトサラダなど、作り置きしてある数品が皿に盛られていて、好きなものをセルフでとってくるシステム。この放ったらかされ感も心地よいね。完全に大人仕様のソリッドな酒場。

あまりの居心地のよさに、このままずっとここで106年間ぐらいダラダラ飲んでいたい誘惑にかられるが、すぐに閉店時間がきてしまったので外へ出る。まだまだ飲み足りないし、腹も減ってるが、もうひとつのミッションが待っているのでこれでいいのだ。

で、その“もうひとつのミッション”へ向かう前にブックオフへ寄り道する。

15軒目「名古屋東別院店」は夜11時までやってるので、飲んでからでも来れるのがありがたい。ここでは9冊購入。そして、いよいよ名古屋へやってきた最大の目的地へと向かう──。

その7へ続く)