池袋の定食屋で居酒をたのしむ

 昨日は、安田理央さんの「これから飲める人」って呼びかけに反応して、急遽、池袋で飲むことになった。他に友だち二人も合流して4人で飲むことになったんだけど、最初は安田さんと二人で店を探して歩いた。

 池袋といったら西口の「大都会」か「ふくろ」を真っ先に思い浮かべるが、あれらは昼から軽く飲むのに適している店であって、一日の仕事を終えた夜にわざわざ訪ねる感じの店でもない。安いのは嬉しいことだけど、ちょっとせわしないんだな。

 それで、とりあえず東口の美久仁小路なら間違いなかろうと、二人して向かってみた。実際、ここにはいい店が揃っている。しかし、ぶらぶら歩きながら各店を覗くも、どうも決め手に欠ける。なんというかね、店としてちゃんとしすぎているのだ。

 ちゃんとしてることの何が悪いのか! と、世間の皆さんはおっしゃるでしょうけれども、でも、ぼくたちめんどくさいオヤジだからさ、理想とする酒場にも、常人には理解できないこだわりポイントがいろいろあったりするわけよ。

 そんなときに見つけたのが、美久仁小路を東側へ抜けたところにある「お食事処 さつき」だった。ここは正式な業態としては定食屋ということになるのだろうけど、店頭のお品書きや店の雰囲気から“飲める感”がひしひしと伝わってくる。これが重要。

 定食屋だけれど、メニューにはいかにも酒のつまみが並び、酒の種類も豊富だ。酎ハイを頼んだら、絶妙に焼酎の濃いやつが出てきた。酎ハイというのは中の焼酎が濃ければいいってもんではないが、薄いよりは百倍いい。

 つまみは鳥の唐揚げ、刺身の盛り合わせ、塩昆布キャベツ、山芋の千切り、ザーサイなどを注文。男4人の酒宴にしては少なめだったのが申しわけないところだが、店の人はそれを非難するどころか、むしろ頼んでもいないサラダや小鉢をどんどん持ってきてくれて、しまいには味噌汁まで出してくれた。この故郷の母ちゃん的サービス攻撃は都会に疲れたおっさんたちの涙腺を刺激する。

 いい酒場を求めるのは簡単だ。それらしい店名で、それらしい暖簾で、それらしい外観で、それらしい内装の店を選べばいい。そんな店は盛り場に行けばいくらでもある。でも、ぼくらが求めているのはそういうことじゃない。ぼくらは「居酒屋」を探してるのではなくて、日常の中に潜む「居酒」を探しているのだ*1

 この居酒(いざけ)という言葉、今後ぼくにとっての重要なキーワードとなる気がしている。

*1:行きがかり上「ぼくら」と書いてしまったが、安田さんをはじめ同行した友人たちが同じことを考えているかどうかはわからない。