大正から昭和にかけて、群馬県の寒村を馬にのって診察してまわった無欲の医師、平田源次郎の評伝である。本人は画家になりたかったのだけど、養子に出されたときの取り決めにしたがって夢をあきらめ、医学の道へ進む。晴れて医師になってからは、私欲のためでなく、困っている人の力になることを最優先させ、医療の行き届いていない村々を馬にのって訪ね歩き、お金のない人からは治療費をとらないどころか、ときには母乳の出ない母親のためにミルク代をおいていくことさえあったという。
いやー、まったく立派な人がいたもんだ。こういう本を読むと心が洗われるね。こんな素晴らしいひとを茶化すつもりなんてまったくない。ただただ感動するのみだ。飯田橋のブックオフでみつけて「うおっ! 馬にのったお医者さんの本をロバ通信社が発行してる!」と、そんな理由で買おうと思った自分のクビを絞めてやりたい。