第9湯目「アクア東中野/中野区20番」

この日は銭湯に行くつもりはなかったんだ。いくら極楽を味わえるといっても、銭湯の入場料は450円。これを毎日毎日払ってたらその支出はバカになんない。だいいち、家に帰れば風呂あるし! だから、銭湯に行くためには「夜に飲み会がある」とか、「友人のトークライブを見に行く」とか、なんかしらの後押しが必要なのだ。

しかし、そうした予定が何もないと思っていた日でも、予定というのは唐突に飛び込んでくる。ま、単に自分がその予定を忘れていただけなんだけど。

東中野に「バレンタイン」という暴力バーがある。……おっといけない、言葉を省略しすぎた。別に暴力団が経営しているとか、暴力的に値段が高いとか、そういうことではなく、“暴力的な映画が大好きな人間が集まるバー”という意味だ。そこでは定期的に常連さんが一日店長を務めるというイベントがあるのだが、この日は、友人の安田理央デイなのだった。そのことを当日の夕方になって思い出した。それ行け!

東中野の銭湯は、調べてみたらすぐに見つかった。バレンタインのすぐ近くに「アクア東中野」というのがあるではないか。

名前のハイカラな感じから予想した通りかなりキレイな造りで、昔ながらの銭湯というよりも、スーパー銭湯と呼ぶ方が似合いそうなところだ。それほど広くはないけれど、場内は掃除が行き届いていて、照明も明るく気持ちがいい。

浴場に足を踏み入れた直後は湯気&眼鏡のくもりでよく見えなかったけど、中はかなり広い! なによりビックリしたのは、風呂場に30インチぐらいの大画面テレビがあったこと。新宿あたりのサウナなんかでは珍しくないけど、たかだか450円の銭湯では珍しいよなあ。おれが入ったときはちょうどAKB48が映っていて、チェックのミニスカ見てたら股間がムズムズした。

ここは浴槽の種類も多い。普通の湯、熱い湯、寝風呂、バイブラ風呂、ジェットが二種類、サウナ(料金別)と水風呂、露天の薬湯。そして極め付けはプール! 東中野の住宅地にプールだよ。この無闇なサービス精神が地元民にどの程度受け入れられているのかはわからないけど、高校生ぐらいの男子二人がポコチン振り乱して泳いでいて笑った。

さて、風呂を上がったらバレンタインへ向かう。

あまりにも銭湯から近いので、湯冷めするどころかバーのカウンターに座ってもまだ汗が出てた。そんな状態だからビールがうまいったらないね。一気に飲み干して、あとはいつもの金宮焼酎のソーダ割りを注文。つまみは、本日の一日店長安田理央さん特性のカレーもつ煮込みをいただく。それから、アニオタ修業中の安田さんということで、『謎の彼女X』のラベルのワインが登場。どんなアニメなのかまったくわからないままに、自分も1杯、ご相伴にあずかる。普通にうまかったでっす。